RPAの人事業務への活用方法は?人事も大幅な改善が見込める!

高い効果と満足度の「RPA」

人材不足、高騰する人件費など、先進国を中心に“労働”にまつわる課題は枚挙にいとまがありません。こと日本は、高齢化率が21%を超える超高齢社会に突入しています。労働人口の減少とともに、労働生産性は低空飛行しており、企業では積年の課題になっています。

手不足解消を背景に、生産性を向上させるサービスが次々に登場するなか、RPA(Robotic Process Automation)が欧米を中心に注目を集めています。

RPAは日本でも導入している企業は増加傾向にあり、国内全体で5,000社以上が導入しています。市場規模も増加傾向にあり、RPA事業者売上では2017年度は178億なのに対し、2022年度は802億と成長傾向でもあります。

RPA市場規模推移予測
出典元『矢野経済研究所』2018年度のRPA市場は前年度比134.8%増の418億円と予測​

RPA市場が拡大している背景には、危機的な人材不足があります。帝国データバンクの調査では、過半数の企業が人手不足である一方で、働き方改革の推進による長時間労働の是正のために、労働生産性の向上が求められており、企業の多くはより効率的かつ生産的な現場作りを求められているのが現状です。

従業員が不足している企業の割合
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 10 月)

デロイトトーマツの報告で、人事業務の8割はオペレーション業務であり、業務効率化が図られている領域であるもののまだ業務負担は大きい現状がある、ということも指摘されています。

人事業務のオペレーション業務割合
出典元『デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社』人事業務におけるRPA活用

今回は、RPAが人事業務にどのような影響を与えるのか、どのような業務をRPAによって自動化できるのかについてご説明します。

RPAでできることと組織人事との関係性

工場などでは、産業用ロボットが作業を行い、ブルーカラーである人材は産業用ロボットのメンテナンスやロボットではできない難しい作業を行う構造となっていました。

オフィスでは、作業を行うのはホワイトカラーである人材が中心です。ロボットは基幹業務システムを扱うのが難しいため、基幹業務システムのアップデートや作業者のアウトソーシングで対応するのが今までの働き方でした。

RPAが登場したことで、基幹業務システムをロボットが作業することが可能になりました。ホワイトカラーの業務も、ブルーカラーの対産業用ロボットと同様に、RPAのメンテナンスやRPAでさえできない細かい業務をする方向に変わってきています。

RPAは、業務の粒度や優先順位、コストがROI(投資収益率)に見合わないなどの観点からシステム化が見送られてきた手作業の業務プロセスを、品質を落とさず、低コストかつ短期間で導入できるという特徴があります。

具体的な適用業務としては、帳簿入力や伝票作成、DMなどの発送業務、顧客データの管理、営業支援システムへのデータ入力など、主に事務職の人たちが携わる定型業務があげられます。現在では、人事などのバックオフィス、金融、保険、政府関連、顧客情報を処理する通信やヘルスケア、小売など、幅広い領域で活用が進んでいます。

人事業務における「RPA」活用領域と活用方法とは

人事業務は他の業務と比較しても効率化できる部分が多い分野だと言われています。以下がRPAを活用できる可能性がある主な人事業務です。

採用/契約更新

  • 新入/中途社員が入社前後に提出する、個人情報の申請内容の確認
  • 契約更新を迎える派遣社員の対象者チェックと本人への通知

勤怠管理/給与計算

  • 規定以上に長時間労働している社員検索と、結果の本人・上司へのメール送信
  • 月次給与計算のための複数事業所からの社員勤怠データの収集
  • 収集した勤怠データに齟齬がある場合のメールでの差し戻し
  • 収集した勤怠データの間違え訂正と給与計算システムへのCSVアップロード

人事関連申請

  • 家族情報申請フォーマットの入力内容の確認
  • 交通費申請(定期区間申請が適正な経路で申請されているか)の確認
  • 年末調整のExcelフォーマットの記入漏れの確認
  • 各種申請内容が人事給与システムの情報と齟齬がないかの確認

活用例1.派遣社員の登録更新業務

A企業の人事部門は、年間2,000人の派遣社員と契約中で、毎月末にその社員との契約更新業務が発生していました。利用している人事システムには契約更新機能が備わっていないため、人事担当者が契約更新する派遣社員の情報を一つひとつ手作業で入力しており、更新作業は月末の繁忙期と重なることも多く、人事部門に多大な負担となっていました。

A企業は人事システムを刷新するのではなくRPAを導入しました。前回契約と今回契約の情報際はRPAが確認し、差異がある場合のみ担当者に通知します。それ以外は自動的に契約更新業務を行い、結果80%以上の作業量を削減しました。RPAで入力ミスも無くなり、作業時間短縮に大きく寄与しています。

活用例2.業務委託社員の人事情報登録業務

業務委託社員の受け入れの際には入館カード発行などが必須でした。発行するために業務委託社員の基礎情報の人事システムへの登録が必要で、月に1回40時間の業務量が発生していました。

RPAを導入したことで「業務委託社員の各種情報が記載されたExcelを開く」「対象者の情報を人事システムに入力」作業が自動化。業務量は13時間まで減少し、68%の工数削減効果を得ました。

RPAは作業時間削減を定型業務全体に適用できるため、大幅な労働生産性向上を実現することが可能になります。時間短縮や転記ミスの軽減など、速さと正確さを同時に実現でき、人事部の担当者は単純な手続き作業から解放されて、自社の人材を活かすための施策の検討など、本来の業務に専念することを実現できます。

人事業務を「RPA」で加速させる

働き方改革の推進による法改正対応や社内制度の整備などによって人事業務の負担が増える一方で、給与情報や個人情報などのセンシティブな情報も取り扱うために外注できない人事業務の一部をRPAによって自動化することができます。

純作業の業務負担が軽減されて、人材配置やマネジメントなどの本来の業務に割ける時間が増えることで、長時間労働を是正できるだけでなく、人事担当者としてのキャリアアップを実現することも可能なのです。

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