再雇用制度を導入する方法とは?企業側に必要な準備や注意点について

再雇用制度が注目されている社会的な背景とは?

再雇用とは、定年退職者を再び雇用することを意味する言葉です。再雇用制度が今注目されているのは、少子高齢化による日本の労働力人口の年齢別推移の変化が背景として挙げられます。

日本では古くは55歳を定年とされていましたが、1986年の高年齢者雇用安定法の施行によって60歳までの定年延長が努力義務となり、1990年の改正で65歳までの再雇用が努力義務となりました。現在では、希望する65歳までの正社員全員に対して就労の機会を与えることが、企業に対して義務付けられています。

再雇用では今まで働いていた人を引き続き雇用できるため、新しい人材を採用したり一から教育するためにかかる、人的・金銭的コストを削減できます。また、定年に達した社員が長い時間をかけて培った経験や能力を、定年後も自社で活用し続けてもらえるというメリットもあります。

今回の記事では、再雇用制度を導入するために必要な準備や注意点についてご紹介します。

再雇用制度を導入する方法とは?企業側に必要な準備や注意点について

再雇用制度を導入する際には、導入する雇用制度の内容を考えなければなりません。導入を目指す雇用制度を、自社の実情や将来の見通し、現在の雇用に関する社内規程などを確認した上で、下記3つの中から検討します。

  • 定年の定めを廃止する
  • 定年年齢を70歳以上とする制度とする
  • 定年後、70歳以上まで継続して雇用する制度とする

導入する雇用制度が決まったら、今後の労務構成のあり方を検討します。

今後の労務厚生のあり方を検討する際には、現在の従業員の年齢・性別・職種別の人員構成ががどうなっているか、社内の実態を把握する必要があります。社内の実態のデータをもとに今後の労務構成を予想し、事業展開の見通しを含めた労務構成のあり方を検討します。

今後の労務厚生のあり方が決まったら、再雇用者に担ってもらう仕事内容や職務環境を検討します。

再雇用者には現在の担当業務を引き続き担ってもらうケースが多いかと思いますが、再雇用制度を導入する際には会社全体の職場・職務の見直しを行い、高年齢社員向けの業務内容を整理することが大切です。また、問題なく就業できる環境であるか、勤務時間や勤務日数、非正規・正規の勤務形態や労働時間の短縮など、具体的な職場環境の確認・整備も行いましょう。

再雇用者の仕事内容や職場環境の確認ができたら、人事処遇制度の内容を検討します。

再雇用制度を導入するにあたって、65歳以上の継続雇用者の雇用形態(正社員や契約社員、嘱託社員やパート社員など)をどうするか検討します。また、時短勤務や非常勤などの勤務形態や、月給制や時給制などの賃金形態についても、本人の希望を加味して判断する必要があります。65歳以上の再雇用対象者は、在職老齢年金の仕組みで年金額の調整がありますので、どのように働きたいのかを本人と相談して決めるようにしましょう。

再雇用者の人事処遇制度が決まったら、最後に人事考課や能力開発について検討します。

定年後の円滑な継続勤務のためには、事前に従業員に対して継続雇用に向けての心構えや健康管理、定年後も生かせる知識・技術の習得などの研修機会を与え、やりがいを持って働けるようにしておくことが大切です。給与や勤務時間などの目に見える数字だけでなく、社員のモチベーションアップやライフスタイルとの両立などにも気を配りましょう。

再雇用制度を導入するために必要な準備や注意点とは?

再雇用制度の設計の際に注意する必要があるのが、労働契約法の「5年ルール」です。

5年ルールとは、1年契約の有期雇用の契約を締結していても、通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、社員から希望があれば雇用契約を期間限定なしの無期雇用契約に転換しなければならないというルールです。

高齢者雇用安定法により、65歳までは就労の機会を与えることが義務付けられているため、60歳定年の企業では通常5年間の有期雇用契約での再雇用をすることになります。しかし60歳で定年後に65歳まで1年契約での有期雇用を繰り返すと、5年ルールによって再雇用社員から希望があれば期間限定なしの雇用となり、さらに雇用を継続しなければならなくなります。

ただし、定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、無期転換ルールの特例の適用を都道府県労働局長から受けた場合に限り、同じ事業主に定年後引き続いて雇用される期間は無期転換申込権が発生しません。5年ルールによる再雇用社員の無期転換を望まない場合には、特例の届け出を出すようにしましょう。

定年後に正社員から嘱託社員に転換した際には、責任の有無などから、賃金を引き下げが発生する場合がほとんどです。定年前と同じ業務を任せる場合であっても、正社員の時よりある程度給与を下げることは合法とみなされています。

ただし、同一賃金同一労働の考え方からすると、正当な理由なく給与を引き下げることは違法となります。過去の裁判事例では、通勤手当や皆勤手当などの諸手当については、正社員と公平に扱う対象となるという判決が出ています。一方で、職務給・住宅手当・家族手当・賞与などの手当の引き下げについては、不合理ではないとの判決事例も出ています。

再雇用制度を導入する際には、再雇用対象者の業務内容や給与の扱いに関して、項目別に精査する必要があります。また退職金に関しては、各企業の就業規則の定めに則った上で、嘱託社員の期間は加味せず定年退職時に清算する形が一般的です。任せる業務内容に関しては、定年前と異なる職務を任せることは合法ですが、全く異なる業種に就労させることは原則として認められていないため、注意が必要です。

再雇用制度を運用するために自社制度を整備しよう!

再雇用制度とは、定年後の雇用継続を望む65歳までの労働者に対して就労の機会を与える義務を、雇用主である企業に課す制度です。

再雇用制度を導入するためには、就業規則の見直しや賃金、任せる業務内容の設定や定年の年齢設定など、自社制度の整備が必要になります。

高年齢者雇用を促進する上では、国からの助成金制度が設けられています。再雇用制度の導入に当たって費用面がネックになるのであれば、再雇用関係の助成金活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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