再雇用制度が注目されている背景とは?
再雇用とは、定年退職者を再び雇用することを意味する言葉です。再雇用制度が今注目されているのは、少子高齢化による日本の労働力人口の年齢別推移の変化が背景として挙げられます。
日本では古くは55歳を定年とされていましたが、1986年の高年齢者雇用安定法の施行によって60歳までの定年延長が努力義務となり、1990年の改正で65歳までの再雇用が努力義務となりました。現在では、希望する65歳までの正社員全員に対して就労の機会を与えることが、企業に対して義務付けられています。
今回の記事では、再雇用時の契約書に記載すべき内容の具体例や、契約書のひな形についてご紹介します。
再雇用契約書に記載すべき内容や注意点とは?具体例やひな形をご紹介!
再度雇用契約書を結ぶ際には「無期労働契約転換制度の無期転換ルールに該当しない」という旨を表記しておく必要があります。
無期労働契約転換制度とは、有期労働契約が反復更新されて契約期間が通算5年を超えたときには、労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換しなくてはならないという制度です。
無期労働契約転換制度には「定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については無期転換申込権が発生しない」という特例があります。特例を受けるためには、特例の対象となる従業員に対して、特例の内容を書面で明示することが法律上義務付けられています。
無期労働契約転換制度の特例について労働条件通知書や個別の書面で明示する際は「有期雇用特別措置法により、定年後引き続き雇用される期間については、無期転換権が発生しません」という内容を記載します。また、雇用契約書で明示する際は「有期雇用特別措置法により、定年後引き続き雇用される期間については、無期転換権が発生しない」と入れておきましょう。
再雇用制度を導入する際には、再雇用対象者の業務内容や給与の扱いに関して、項目別に精査する必要があります。また退職金に関しては、各企業の就業規則の定めに則った上で、嘱託社員の期間は加味せず定年退職時に清算する形が一般的です。任せる業務内容に関しては、定年前と異なる職務を任せることは合法ですが、全く異なる業種に就労させることは原則として認められていないため、注意が必要です。
再雇用契約書の具体例やひな形とは?
再雇用契約書や嘱託社員の雇用契約書に記載すべき内容の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 労働契約の期間
- 就業の場所
- 従事する業務の内容
- 始業時刻・終業時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間
- 休日
- 休暇
- 賃金の決定・計算方法
- 賃金の支払方法
- 賃金の締切り・支払の時期に関する事項
- 退職に関する事項 ※解雇事由を含む
- 昇給に関する事項
- 契約更新の有無、及び、契約更新ありの場合は更新するか否かの判断基準
各種社内制度を設けている場合に明示すべき内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 交替制勤務をさせる場合は交替期日、交替順序等に関する事項
- 退職金の定めが適用される労働者の範囲、退職金の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項
- 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
- 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
- 安全・衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰、懲戒処分に関する事項
- 休職に関する事項
再雇用社員の1週間の所定労働時間が正社員より短い場合に明示すべき内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 昇給の有無
- 賞与支給の有無
- 退職金支給の有無
- 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
就業規則の労働条件を下回ってはならない
定年後再雇用社員の就業規則には「従業員の昇給がある」と記載されているのに、定年後再雇用契約書で「昇給はない」と定めることはできません。
正社員と比較して不合理な労働条件になってはならない
再雇用に当たって賃金が下がることに関して、きちんと説明できるようにしておく必要があります。定年後再雇用社員の仕事内容や責任の程度について、正社員と異なることが雇用契約書で分かるように明記しておきましょう。
再雇用契約書のひな型については「契約書の書き方」などのサイトで無料公開されているものがありますので、参考にご覧ください。
再雇用契約書の内容に不備が無いか十分に注意しよう!
再雇用制度とは、定年後の雇用継続を望む65歳までの労働者に対して就労の機会を与える義務を、雇用主である企業に課す制度です。
労働者を再雇用する場合には、雇用契約書で新規に契約を交わすことになるため、業務の実態や法令に則った内容の契約書を作成する必要があります。
どのような項目を記載しなければならないのか、違法性はないかなど、再雇用時における契約書の内容に不備が無いかをきちんと確認しておきましょう。