採用フローの確立は、人材獲得難を打破する鍵
採用フローは「企業が新規雇用を行う際に実施する一連の流れ」のことを意味します。説明会の実施、エントリー受付、テストや面接などの選考から内定出し、内定者フォローから入社まで。自社独自の採用フローを確立することは、採用活動を戦略的に行い人材獲得難を打破するための鍵となります。
企業の正社員不足は深刻な問題となっている
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」によると、正社員が不足している企業は50.1%で、過半数以上の企業が正社員不足に陥っています。非正社員についても、約3割の企業が従業員不足と回答しています。人材獲得の難易度は、企業規模や業種に関わらず、上昇傾向です。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 10 月)
人材獲得難および社員の離職によって、人手不足倒産に追い込まれるケースも年々増加しています。人口減少を背景とした売り手市場が続くいま、今後も採用の難易度は、上がりこそすれ下がることはありません。採用フローを見直しと確立は急務なのです。
採用フローの意味と重要性について
採用フローは「企業が新規雇用を行う際に実施する一連の流れ」のことを意味しています。採用フローは大きく3つの段階に分かれます。第1に「募集・広報」、第2に「選考」、第3に「内定から入社」です。
採用フローの各段階において、何をすべきかを図式化したものを「採用フローチャート」と呼びます。
採用フローに沿って採用活動を振り返ることで、採用の一連の流れにおける問題点やボトルネックが明らかになります。人材獲得難に陥る原因を探り、採用活動を改善することこそ、採用フローを見直し確立する重要性だといえます。
一般的な採用フロー図とは?
採用フローは、新卒・中途、職種などによって、さまざまなパターンがあります。自社独自の採用フローを確立し、常に改善することが求められるため、普遍的な正解はありません。
ここでは、一般的なフロー図を新卒採用・中途採用それぞれ紹介します。
新卒採用における採用フローについて
新卒採用における採用フローを分解すると、大きく分けて8つのプロセスに分解できます。
- 採用計画・準備
- 企業情報・募集情報の公開
- 企業説明会の実施
- エントリー受付
- 選考試験の実施
- 面接の実施
- 内定
- 入社
1.採用計画・準備
自社の求める人物像、採用人数や時期などの採用計画を立案します。
利用するツールの選定や予算、採用面接官の人選や教育など、採用活動の準備を行いましょう。
2.企業情報・募集情報の公開
就職情報サイトやハローワークへ、募集情報を公開する。自社ホームページはもちろん、大学へ積極的に情報を提供する企業もあります。この段階でプレエントリーを受付、学生の個人情報や志望動機などの情報を収集して、リクルーターが学生と積極的に接触する企業もあります。
3.企業説明会の実施
自社独自の会社説明会や、合同説明会や就活セミナーへの出展を行います。学生からの質問を受付、自社への理解促進および志望動機形成を図ります。
説明会と同時に、筆記試験やグループディスカッションを実施するなどして、一次選考を兼ねる場合もあります。
4.エントリー受付
学生からの応募を受け付けます。エントリーシートや履歴書、成績証明書など、書類の提出を求めます。
オンライン上での提出や印刷物の提出などが増えてきていますが、手書きでの提出を求める場合もあります。
5.選考試験の実施
書類選考を実施します。一般常識、時事問題などの筆記試験、適性検査、学生に自己PRや志望動機などを話した動画を提出させるツールを活用する場合もあります。
6.面接の実施
書類選考や各種テストの合格者から、順次面接を実施します。
1対1での面接や、グループ面接やグループディスカッションをなどの種類があります。一般的には2〜3回の面接試験が実施されています。
7.内定
面接の合格者に内定を出す。内定から入社まで、内定者研修や内定者ランチなどのフォローを実施しましょう。
目的は、内定辞退防止のほか、内定者同士のコミュニケーション促進、入社後の配属先検討に役立てるなどが挙げられます。
8.入社
入社式、入社の手続き、新人研修を実施します。配属後の教育や評価、異動などを通じて、人材マネジメントを行う必要もあります。
中途採用における採用フローについて
中途採用における採用フローを分解すると、大きく分けて5つのプロセスに分解できます。
- 採用計画・準備
- 企業情報・募集情報の公開
- 選考・面接の実施
- 内定
- 入社
1.採用計画・準備
自社の求める人物像、採用人数や時期などの採用計画を立案します。利用するツールの選定や予算、採用面接官の人選や教育など、採用活動の準備を行いましょう。
中途採用の場合は、退職者の後任、事業拡大のための人員補充など、各部署とのより強い連携や臨機応変な対応が求められます。
2.企業情報・募集情報の公開
転職情報サイトやハローワーク、自社ホームページに募集情報を公開する。転職フェアへの出展や人材紹介会社の活用、SNS広告配信など、募集職種や時期、予算に合わせて、多様な手法から常に最適なものを選ぶことが重要です。
即戦力人材など、持ち合わせるスキルなどが明確なターゲットであれば、該当する人材が効率的に集められる手法を明確にしてすすめることが大切です。
3.選考・面接の実施
応募者に履歴書と職務経歴書の提出を求め、書類選考を実施します。エンジニア採用の場合には、GitHubなどを利用して実際に本人が書いたプログラムコードを確認するなどの方法を用いる場合もあります。
書類選考の合格者対して、ミツカリなどの適性検査を実施することも効果的です。自社とのマッチ度を測り、面接で深堀る内容を絞ることで、採用面接の精度向上を狙えます。
書類選考合格者から、順次、面接を実施します。一般的には2〜3回の面接試験を実施する。仕事の都合などで日程調整が円滑に進まない場合は、ウェブ面接なども柔軟に活用することが望ましいです。
4.内定
面接の合格者に内定を出す。内定から入社まで、内定者研修や内定者ランチなどのフォローを実施しましょう。
目的は、内定辞退防止のほか、内定者同士のコミュニケーション促進、入社後の配属先検討に役立てるなどが挙げられます。
5.入社
入社式、入社の手続きを行い、配属する。評価、教育研修、異動などを通じて、人材マネジメントを行います。
入社にあたり、履歴書や退職理由に誤記がないかなどの第三者確認や身元調査を実施する企業もあります。
採用フローの設計方法について
採用フローを設計するためには、自社の採用要件を明確にすることが重要です。そのうえで、一般的な採用フロー自社の現状とを見比べて、手薄になっているなどの改善点を探します。
選考期間が長引けば、新卒・中途ともに離脱率が高まる傾向もあるので、理想的なスケジュールや実施時期も合わせて検討します。
採用フロー導入の「最大のメリット」
採用フローを確立し活用する最大のメリットは、採用活動の振り返りや改善が促進されることです。採用活動におけるボトルネックを洗い出せるばかりでなく、各段階を振り返る際にも役立ちます。
- 採用マーケティングにおける媒体選定およびPR内容は適切だったか
- 各段階における選考方法や、合否判定基準は適切だったか
- 内定者フォローは十分だったか
採用フローを明確にすることで、各部署のマネジメント層や役員および経営者など、採用活動に関わる各位に協力を仰ぎやすくなります。対外的にも、採用フローが明確に開示されている企業には好感度も高いでしょう。
採用フローは育成戦略に合わせた設計を
採用フローは、採用活動の全体像を把握し、PDCAサイクルを確立するのに役立ちます。どのプロセスでどんな課題があるかをリストアップし、対策する優先順位をつけて改善することが可能になるのです。その結果、自社が獲得したい人材に適したプロセスに注力でき、人材獲得難を打破するきっかけを掴みやすくなるでしょう。
採用は人材マネジメントの一部であることを忘れてはいけません。中長期的に人材獲得を成功させるためには、自社における人材育成戦略に合わせて、採用フローを設計することが重要です。