新卒の採用面接では「非効率解消」が急務
「就職白書2019」の調査によると、面接は99%の企業が実施しており、採用活動プロセスのなかで最も実施率が高いことが分かりました。
新卒採用活動にかける時間は、「増えた」と「昨年と同じ」の合計が約93%、新卒採用活動に係る人数も、「増えた」と「昨年と同じ」の合計が約92%となっています。採用にかかるマンパワーに悩む人事担当者の姿が伺えます。
人事以外の部署から採用担当者を工面したり、新卒採用にかかる費用も増加傾向であることから、いかにいまあるリソースを有効活用して「非効率解消」を目指すか、が急務になっているといえます。
「素直さ」を見極めるのが難しい理由
「就職白書2018」の調査によると、学生が面接等でよく話題にする項目は、1位「アルバイト経験」(44.4%)、2位「人柄」(36.0%)、 3位「所属クラブ・サークル」(32.6%)であることが分かりました。多くの学生は、こうした経験を通じて、人柄や人間性をアピールしたいと考えているようです。
企業が採用基準で重視する項目の1位は「人柄」(92.1%)ですが、性格や価値観などの人物像は見極めることが難しい項目で、「素直さ」もこれに含まれます。
「素直さ」などの人柄を面接で見抜くことが難しい理由は「素直さとは何か」の定義が曖昧であることと、複数の面接官によって採用基準がバラバラであることが挙げられます。本記事では、学生の「素直さ」を見極める方法と質問例を説明します。
素直さの意味と定義について
素直さには「正直であること」や「周囲からの助言や反対意見にも、耳を傾けることができる」などの意味があります。しかし採用要件で応募者に求める「素直さ」の定義とは、1社1社異なります。
採用面接を実施するにあたり、「自社が求める素直さとは何か」を定義する必要があるのです。例えば、下記のように、素直さの意味を具体化していきます。
- 正直である
- 謙虚である
- どんなときでも嘘をつかない
- 助言に耳を傾けることができる
- 反対意見を冷静に聞くことができる
- 自分の失敗を隠さないですぐに報告できる
- ミスや失敗を認めることができる
- 失敗を学びに変えられる
- 頑固になりすぎない
- さまざまな刺激や変化を取り入れることができる
- 環境の変化に対する柔軟性がある
- 相手の状況や立場を想像できる優しさがある
面接で素直さを見極める方法
面接で素直さを見極める方法の1つ目は、「自社が求める素直さ」とは何かをできるだけ具体的な言葉にして、複数の面接官で共通認識を持ちやすくすることです。
次に何を持って素直さなのか、どういう場合に「素直な人物だ」と判定するのか、ガイドラインを明確にして採用基準を設けます。採用合否を判定する際には、共通の採用基準に則って評価することが重要です。
素直さの定義や採用基準を、採用関係者で共通認識にするための研修や教育の機会を設けることも、面接で素直さを見極める方法として有効でしょう。
面接で素直さを見極める質問例
面接で素直さを見極める具体的な質問例を紹介します。ここでは質問の仕方や目的ごとに、4つの質問例を挙げます。
単刀直入に自己評価を質問する
「あなたは素直な人間ですか?」
「素直に行動できた、とご自分で思えたエピソードを教えてください」
自分の素直さについて、自己評価を尋ねる質問です。このパターンでは、エピソードを一緒に尋ねることで、自己理解と事実の一貫性を確認することができます。
他者からの評価を質問する
「あなたは家族や友人から、素直だと言われますか?」
「どういうところが素直だと評価されていますか?」
「あなたは、その評価についてどう思いますか?」
自分が素直な人間であるかどうかについて、他者からの評価を尋ねる質問です。
周りから素直だと言われている人物かどうか、どのようなときに素直だと評されるか、それに対して自分でどう思っているのかなどを深堀することで、人物像を客観的に把握することができます。
傾聴力を尋ねる
「物事がうまく行かないときや失敗したとき、周囲の助言に耳を傾けて上手く行った体験はありますか?」
「自分とは違う、反対意見があるとき、あなたはどのように接しますか?」
素直さの定義として「他者や周囲の意見への傾聴度」を含める場合の質問です。どんな状況のとき、周囲の助言や反対意見をどのように聴き、活用する人物であるかを、過去の体験に基づいて質問することで、入社後の行動予測に役立てます。
柔軟性を尋ねる
「行動の前提条件や、置かれている環境が、大きく変化した際、どのように感じますか?」
「変化を受け入れるために、あなたはどのような工夫をしますか?」
素直さの定義として「変化への柔軟性」を含める場合の質問です。意に介さない変化や前提条件の変更が生じたとき、物事をどのように捉え、どのように反応・行動する人物であるかを、過去の体験に基づいて質問することで、成長のポテンシャルを伺うことができます。
面接で素直さを見極めるメリット
面接で「自社が求める素直さ」を見極めるメリットとして、新入社員が入社後チームに溶け込みやすいという点が挙げられます。
結果として、チームワークを発揮しやすく、早期に現場で馴染み成長する可能性も高まるでしょう。また、顧客とのリレーションを築きやすい、現場の教育負担を軽減することができる、などのメリットも考えられるでしょう。
素直さは「人材の成長」を左右する
素直さとは、新人が入社して早期に活躍できるために必要な素養です。また長い社会人人生において、継続的に成長するためにも、素直さは必要不可欠な要素です。つまり素直さとは「人材の成長」を左右する鍵になるといえるでしょう。
採用において、ポテンシャルを考慮する場合には、素直さを見極めることはとても大切なことなのです。