プレゼンテーションスキルはどこでも役に立つ
ビジネスシーンでは交渉の連続です。提案をし、そこ可否を相手に決めてもらうことでプロジェクトは進行します。それゆえに、提案内容を手短に、そしてわかりやすく相手に提示するスキルは不可欠だと言えます。
そこで重要になるのがプレゼンテーションスキルです。パワーポイントなどを使ったプレゼンテーションのトレーニングは高校や大学でも積極的に取り入れられており、社会人になると場数もたくさん踏むことになるのですが、日立ソリューションズの調査によると、プレゼンテーションの発表が得意だと答えた人なんと22.3%です。裏を返せば、7割以上のビジネスパーソンがプレゼンテーションスキルになんらかの不安を抱えているということになります。
出典元『日立ソリューションズ』プレゼンテーション発表に関する意識調査
プレゼンテーションスキルは、相手に「伝える」「理解してもらう」「行動してもらう」の3つで構成されたスキルです。同時に双方的なコミュニケーションが不可欠ということでもありますので、ビジネスシーンを離れた日常でも有効なことが多くあります。
今回はプレゼンテーションスキルとはなにか、プレゼンテーションスキルを活用する方法について紹介します。
プレゼンテーションスキルとは何か「細分化」して考える
プレゼンテーションのプロセスは以下の3つのフェーズに分解できます。
- 相手に伝える
- 相手に理解してもらう
- 相手に行動してもらう
まず必要になるのが、プレゼンテーション全体の構成を設計するための概念化スキルや、俯瞰し客観的に捉えるスキル、そして各フェーズでの課題を見出す分析スキルです。
これを踏まえて、プレゼンテーションスキルを細分化し、どのようなスキルがどう活かせるかを見てみましょう。
「相手に伝える」共感スキルとは
「相手に伝える」というフェーズでは、相手に共感してもらい、提示する事柄を身近に感じてもらうための準備が必要です。
プレゼンテーションの冒頭では提案の背景を示すイントロダクションが挿入されますが「聴衆に参加意識を持ってもらうこと」と「聴衆との信頼関係の構築」が大きな目的となっています。
ここで使えるスキルが「ペーシング」というものです。ペーシングは、コミュニケーションをする相手の表情や口調、言葉を「真似る」ことで安心感と親近感を与えるコミュニケーションスキルです。
プレゼンテーションに活かすには、冒頭で質問をしてみるのが良いでしょう。たとえば求人広告の出稿を考えている聴衆に対するプレゼンテーションでは、「世界最古の求人広告はいつごろのどんな募集だと思いますか?」という質問をしてみるとします。聴衆から回答を引き出し、彼らの声のトーンやスピードに近づけて回答を復唱していくと、「一緒に考えている」という雰囲気を作ることができます。
ちなみに世界最古の求人広告は、「1900年にロンドンで新聞に掲載された南極大陸探検スタッフの募集」です。
「相手に理解してもらう」説明スキルとは
問題を共有できた時点で「相手に理解してもらう」フェーズに入ります。ロジカルに説明するスピーチスキルや、適切なデータを収集して提示するスキルが重要です。
事前に聴衆がなにを知りたいかを知っておくことがとても大切です。プレゼンテーションで伝えるものは大きく分けて以下の4つです。
- WHAT(具体的な情報を伝える)
- WHY(因果関係を伝える)
- HOW(実行する手順を伝える)
- IF(実行するとなにが期待できるかを伝える)
資料を用意するとき、必ず4つを盛り込むことがポイントです。聴衆にはどんなタイプが多いのか、どんなリアクションを返してくるのかをチェックしながら、どの内容をしっかり話し、どの内容を軽くするのかを臨機応変に対応するのがミソとなります。
「相手に行動してもらう」クロージングスキルとは
最後の「相手に行動してもらう」ことを達成するためには必要なのがクロージングスキルです。
クロージングで一番大切なのは、相手に期待することをはっきりと伝えることです。婉曲的に長々と話してしまうとそれが「自信のなさ」と捉えられる恐れがありますので、端的かつ明快にまとめることを心がけましょう。
迷いは相手に不安を与えてしまうので、クロージングでは「迷いを断ち切ること」を意識しましょう。
プレゼンテーションで注意すること
プレゼンテーションでもっとも注意すべきことは「一方的にならないこと」です。プレゼンテーションスキルは双方的なコミュニケーションでもあります。聴衆の関心とは無関係なことを長々と喋ったり、緊張で早口になってしまったりすると、プレゼンテーション自体が目的になってしまいます。そうではなく、あくまでも「相手にこちらの提案を理解してもらい、行動してもらうこと」がゴールであることを忘れないようにしましょう。
質疑応答では「知らないこと・わからないこと」を尋ねられることも少なくありません。そうしたときは、必ず正直に「わからない」と答えましょう。嘘や知ったかぶりは信頼を壊すことになりかねません。
もちろん「わからない」だけで済ますと相手は納得してくれません。ですので「どうしたらわかるか」「今後どうするか」をきちんと述べて回答するようにしましょう。
スキルを細分化し、1つずつ身につけるのが育成の鍵
プレゼンテーションは重要性が知られながらも、実に7割以上のビジネスパーソンが苦手意識を持っています。プレゼンテーションスキルを高めるためには、まずプレゼンテーションで必要なスキルを細分化し、一つ一つのスキルを高めていくことが大切です。
プレゼンテーションのみならず、「スキル」という抽象概念はきちんと具体的にどのようなものかを細分化し、丁寧に検討していくことが育成の鍵となります。どのようなスキルがあるのかを理解し、自社従業員においてどのようなスキルが足りないのか、噛み砕いて理解していくことで、教育研修の効果をより高めることができるのです。