ポジティブ心理学とは?組織の生産性向上のために必要なこととは

やる気があれば成果も伴う組織のマネジメント

労働生産性はエンゲージメントやモチベーションと密接な関係があります。労働に限らずあらゆる物事に当てはまり、誰しも実体験のあることです。

例えばモチベーション高く優勝を目指す陸上チームの方が、練習に真剣に取り組み、試合での好成績を期待できます。絶対に100点を取りたい一心でテスト勉強したら、はかどります。同様に労働についても、社員はエンゲージメント及びモチベーションが高い方が労働生産性の向上が期待できます。

日本の労働生産性は、2010年頃から徐々に向上していると報告されています。しかし海外比較をするとその伸び率は良いとは言えず、日本の労働生産性の年々の伸び率はアメリカの2/3程度の水準です。

労働者1人あたりの労働生産性 時間あたりの労働生産性
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

アメリカのギャラップの2016年の調査報告では、日本の社員のうち「熱意のある社員」はわずか6%であるとされ、日本経済新聞(2017年)では、これは世界的に最下位水準であることが指摘されています。このような結果は、日本で働く者として残念に思われる方が多いのではないでしょうか。

参考URL『HR Examiner』Employee Engagement Isn’t an HR Issue

ベインとプレジデントの2017年の共同調査では、やる気あふれる社員の生産性は、そうでない社員の2倍超であることが報告されています。つまり、従業員のエンゲージメントとモチベーションを高めることが、生産性の向上に直結してくると言えます。

意欲の度合いによる社員の生産性
出典元『PRESIDENT』”3人に1人”の不満社員を奮起させるには

この記事で、エンゲージメント・モチベーションの向上、ひいては生産性の向上を叶えるべく、いま注目の【ポジティブ心理学】を知り、あなたの会社にも取り入れてみませんか。

ポジティブ心理学とは?モチベーションにも大きく関わる

ポジティブ心理学とは、2000年を迎える少し前に、アメリカで研究が進み提唱されたものです。まだやや若い学問ではありますが、心理学の長い歴史ではネガティブなことに注目しがちであった点と異なり、人の持つポジティブな側面に焦点を当てたことで生まれた新しい捉え方です。

ポジティブ心理学の定義は「私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい報告に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域である」とされています。

ポジティブ心理学の目的は、科学的な根拠を持って人の幸福を持続させることにあります。人の持つポジティブな側面に科学的根拠を持ってアプローチし、科学的枠組みで応用しています。

ポジティブ心理学の柱“PERMA”とは

科学的など少し難しい話になってしまいましたが、ポジティブ心理学を理解していくために、PERMA”という5つの柱を紹介します。

幸福を構成するウェルビーイング(wellbeing:より良い状態)の柱は、次の5つであると考えられています。

Positive Emotion:ポジティブ感がある・前向きな気持ちである

いかなる苦境においても対処力・回復力があり、思考や行動の選択肢が広がり、自分にも周囲にも良い変化をもたらすことのできる、肯定的な感情があることは、幸福につながります。(肯定的な感情とは、愛、笑顔、安心、嬉しい、誇り、希望etc…です)

仕事が楽しい、自分の仕事に誇りを持って挑んでいるという場合は前向きな努力が続くことでしょう。

Engagement:夢中になれる・没頭できる

何かに夢中になれる環境があること、没頭できる事柄に巡り会えたことは幸福につながります。

仕事に集中できる、時間を忘れるほど好きな仕事であるという場合は作業効率も良く成果が出ることでしょう。

Relationship:豊かな人間関係・人間関係が良好である

人は社会的な生き物です。他者とつながりがあること、信頼関係を築き感謝や尊敬のし合える仲間がいることは幸福につながります。

仕事において励まし合える仲間がいる、貢献したいと思える組織で働いているという場合は労働の質の向上も期待できるでしょう。

Meaning:自分の人生に意義を感じられる

自分が人生において何を大切にしたいか、何を優先したいかは人それぞれ違います。自分の信念に気づき、その意味を見出せたり、それに基づいた行動が増やせることは幸福につながります。

自分が組織で果たす役割の価値や意義を見出せる、自分の強みを仕事で活かせているという場合は仕事が好きで長く続くことでしょう。

Accomplishment(Achievement)達成感が得られる・完遂した喜びがある

何事においても、やり遂げてこそ得られる喜び、新たな高い目標の芽生えなどを経験できることは長期的な幸福につながります。

仲間と共にプロジェクトを完遂し充実感が得られる、新たな技術を修得したことを認めてもらえる、という場合は労働意欲が向上することでしょう。

組織にも人員にもメリット豊富

ポジティブ心理学ではPERMAをメインに具体的に取り組んでいきます。この5つの柱は、どれも個人差のあるものですが、その違いを認め合えることも幸福につながります。

会社・組織においてポジティブ心理学が応用されると、「各々の幸福感を尊重し、違いを認め合いながらより良い環境ができる」「社内の人間関係が良くなり、発想力・思考力の向上が期待できる」「良い循環が生まれることで、労働生産性が常に高い状態が維持できる」などのメリットがあります。

社員・従業員にとっては、ポジティブ心理学が導入されることで「楽しく働ける、仕事で充実感が得られるなど日常的に幸せが手に入る」「壁にぶつかった際も回復する力があるため、前向きに次へ活かせる」「組織への貢献意欲が適切に還元され、自分の存在意義が感じられる」などのメリットがあります。

まずは出来ることから導入を検討する

ポジティブ心理学では、幸福を構成するものは何であるかに注目し、それらを長く維持することが人生そのものの幸福につながると考えられています。科学的な研究も経ているため、安心して、組織開発や社員のエンゲージメント・モチベーション向上に応用することが可能です。

ポジティブ心理学は、心理学の歴史で見ればまだ日の浅いものですが、世界中から研究報告や実践報告がなされています。ポジティブ心理学を知り、まずはその一部のみでもできそうなことを見つけ実践してみてはいかがでしょうか。

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