『ハロー効果』は日常的に見られる
「バイアス」は、英語の「bias」をベースにしている日本での名称(カタカナ語)です。もともと「bias」の意味は「傾向・先入観・偏見」などがあり、日本で「バイアス」として用いられる場合も同じく「先入観」「偏見」を意味することが多くあります。
日常生活においては、心理・心情的な意味で使われることが多く、たとえば「上司の意見は常にバイアスがかかっている」と言った場合は、偏見や先入観が混じった意見であるということを指しています。
バイアスはビジネスシーンで用いられることが多い言葉とも言われています。特に心理学からビジネスに応用されることの多い「確証バイアス」や「認知バイアス」は有名でしょう。一般的な用法としては、「彼の意見はバイアスがかかっている」「あのミーティングの結論にはバイアスがあるのでは…」という文脈で用いられます。
参考までに、Googleの採用面接では、“ヒトの直観に頼らない一貫した採用要件”に基づいて採用決定を行う『構造化面接』というプログラムを導入しています。「判断の統一化」が明確に規定されており、この採用方法は、多くの企業で以前から注目されるものでもあります。
ハロー効果は採用面接での人材評価に大きく関わるバイアスであり、採用面接を成功させるためには、面接官がハロー効果から脱却することが必要不可欠です。
今回は、ハロー効果の一種であるポジティブ・ハロー効果について説明します。
ポジティブ・ハロー効果の概要と具体例とは?
ハロー効果とは、人間の心理の1つで、ある対象を評価するときに、対象者の目立った特徴にひっぱられてしまい、その他についての評価にバイアスがかかり歪んでしまう現象のことを言います。「後光効果」や「ハローエラー」とも呼ばれます。心理学者のエドワードソーンダイク氏が1920年に書いた論文の中に「ハロー効果」という言葉が初めて用いられました。
たとえば選挙活動の際に、政治家の選挙演説に好感度の高い俳優が応援演説すると、政治家の主義主張と俳優が全く関係ないにも関わらず、それを聞いた人は「あの〇〇さんが応援しているんだから政策内容も優れているに違いない」と思いがちな傾向にあります。
コマーシャルで好感度の高い芸能人が起用されるのは、こういった「ハロー効果」に則った合理的な宣伝手法だと言えます。
『ハロー効果』のバイアスとは?
ハロー効果は認知バイアスの一種です。一般的には、ポジティブな方向への認知のゆがみを指すことが多いですが、ネガティブな方向へのハロー効果も存在します。ハローとは「後光が差す」という時の後光、聖像の光背や光輪のことで、後光効果、光背効果とも呼ばれています。
よく似た意味の理論に「ピグマリオン効果」というものがあります。ピグマリオン効果とは「人は期待された通りの結果を出す傾向がある」という理論で、ハロー効果もピグマリオン効果も、人の無意識に働きかけるという共通点があります。
ハロー効果は「相手の特徴を知ることで、自分の相手に対する評価が変わる」のに対して、ピグマリオン効果は「相手に期待することによって、相手を変える」という点に違いがあります。
ポジティブ・ハロー効果とは?
ハロー効果には「ポジティブ・ハロー効果」というものがあります。ポジティブ・ハロー効果は、比較的生じやすい一般的な認知のゆがみで、人の目立っている良い点を見て他の点も実際より高く評価することを言います。
たとえば明るく挨拶ができる、身なりが清潔であるなどの基本的な事柄が良くできていれば他の面に関しても優秀な人材であるだろうと判断する場合があります。ポジティブ・ハロー効果はマーケティングや恋愛における心理学テクニックなどで用いられています。
ポジティブ・ハロー効果の具体例について
学歴や肩書を見てしまう
有名大学出身者ということと、ビジネスパーソンとして優れているかどうかは本来関係のないことです。しかし有名大学出身であれば、本人の実際の言動を見ずに、相手を優れたビジネスパーソンであると評価することが挙げられます。
店員に一目ぼれする
一般的に、ショップやカフェの店員というものは「来客者に笑顔で対応してくれる」という部分的な良い特徴があります。それを「笑顔がすてきだ」と人柄に直結させて解釈してしまうケースが挙げられます。
実際に深く話したことはなく、他の側面を評価することはできないにも関わらず、一つの良い点があれば全体的な評価を実際よりも高くしてしまう傾向が人間の深層心理の中にあります。
語学力があるだけで仕事ができると判断してしまう
英語ができることと仕事ができることは本来、関係のないことです。実際に仕事ができる人であるかを確認などをせずに、英語のできる人を優れたビジネスパーソンであると評価することが挙げられます。
ポジティブ・ハロー効果を克服する方法について
面接官の誰もが冷静に適切な評価をすることができれば、採用がよりうまくいく可能性が高まりますし、それによって弾力ある組織を作ることもできます。とはいえ、採用という限られた時間の中で候補者が自社に合うかどうかを判断するのは非常に困難なことです。
陥りやすいバイアスを避けていくことで、より正確な判断に近づくことができます。
評価基準の明確化
人事評価を応募者の背景(学歴など)や自身の好き嫌い、目立つ度合いなどだけで判断しようとすると、ハロー効果に陥りやすくなります。明確な評価基準を設けて公平な評価を行う必要があります。
評価基準を明確化することで、面接者による評価のずれもなくなりますし、評価される側の不満も減少していく可能性があります。
評価は、対象者の具体的な言動を元に考課する
考課者は、被考課者が評価に納得しそれに応じた成長のステップが見えるようにしなければいけません。評価する際は、個人の一つの特徴だけでなく、彼らのこれまでの考え方や行動を知る必要があります。グループ面接を設ける、自分自身に関するレポートを作成してもらうなどの方法をとっている企業もあります。
高いスキルや高学歴などでその人を判断するのではなく、その反対に、日常の行為や行動を評価しなければ、正しい判断はできません。
項目単位で被候補者を変えて考課する
ハロー効果は、ある項目での際立った評価が他の項目に影響してしまうことがあるため、項目単位で変えていくことが勧められています。すべての項目に同じ評価をすることや、他の社員と比較することも避けられます。
項目に応じて踏み込んだ質問をすることで、思考の一貫性や行動力、意志の強さや創造力などの判断材料を増やすことにつながります。
ポジティブハロー効果にまどわされずに常に冷静に判断する
ハロー効果は、目立つ特徴に注目してしまうことで、その特徴に引っ張られた印象を受けてしまうことであり、ポジティブハロー効果は、良い印象を受けると他の項目もよく評価してしまうことです。
採用面接の場では、有名大学出身であるから優秀である、容姿端麗であるから仕事ができるなどのポジティブ・ハロー効果があり、応募者の人柄や能力とは関係がないため、しっかりと応募者の人柄や能力を見極めるための評価基準を明確にしておくことが不可欠なのです。