マネジメントだけをする人材は減少している
多くの企業で「採用が難しい」と叫ばれる昨今では、自社の成長プランに合わせた人事戦略の設計がいっそう重要となっています。人材マネジメントは、理想の人材を採用するだけでなく、戦力として長期的に機能するように計らう必要があります。しかし早期離職なども頻発し、なかなか長期的に在籍して将来的に経営層として活躍してくれる人材を確保・育成できない人事課題が普遍性を帯びています。
リクルートマネジメントソリューションズは「人事・組織戦略上の課題」についてのアンケート調査を行いました。ここでは「自分の後任を担える人材・次世代リーダーが育っていない」と回答した企業が最も多く、特に経営層が抱える課題であることが報告されています。
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』成長企業における人材・組織マネジメントに関する実態調査
産業能率大学の上場企業の課長を対象にした調査によると、業務量が増加していると回答した割合が過半数を超え続けています。業績の向上、激変する市場変化への対応、人手不足など、業務量が増加している要因については様々考えられます。
一方で、プレイヤーとしての業務がある課長は99.2%とほぼ全員がマネージャー業務とプレイヤー業務を兼務していることがわかります。マネジメントに専念できるのは希少であり、ほとんどの人がマネージャー業務とプレイヤー業務両面に気を配らなければなりません。
リクルートの調査においても、プレイング業務に割いている時間が半数以上であると回答した管理職が約3割程度存在し、業務の多さと部下の力量不足によって、業務過多な状態が引きおこっているのです。
出典元『リクルートワークス研究所』プレイングマネージャーの時代
今回はプレイヤーとマネージャーを兼務するプレイングマネージャーについて説明します。
プレイングマネージャーとは?なぜ増加しているのか
プレイングマネージャーとは、プレイヤーとしての業務と管理職としてのマネジメント業務の双方を担うポジションをいいます。売上に貢献する現場の仕事を行いつつ、部下の育成・指導や部署の管理などを行うマネジメント業務どちらの業務も担う立場となります。
昨今人手不足の影響で、優秀なプレイヤーにマネージャーとしての役割を与えることが増えてきました。営業職におけるプレイングマネージャーに関わらず、SEなどのエンジニア職でもプレイングマネージャーというポジションが増えており、職種・業界問わず注目されているポジションといえます。
プレイングマネージャーに求められる役割について
プレイングマネージャーは、プレイヤーとしての個人目標や売上達成目標など個人の能力発揮とマネージャーとしてのチームの目標達成と同時に求められます。
プレイヤーとしては自分に課せられている目標達成に向けて自己研鑽し、努力を重ねること。マネージャーとしては、メンバーの指導やメンタルフォロー、組織の生産性を高めながら組織目標達成を行います。
プレイングマネージャーはプレイヤーとマネージャーのどちらの役割も期待されているのです。
プレイングマネージャーと通常のマネージャーとの違いについて
プレイングマネージャーと一般のマネージャーとの違いは、組織だけでなく現場の感覚や現場の状況を実際に体感し、目標達成に直接貢献できる点です。
プレイングマネージャーは個人の目標とチームの目標の両方に責任を持っていますが、通常のマネージャーは部署やチームの組織管理や組織目標のみに注力します。プレイングマネージャーは自身がチームの一員でもあるため、現場の状況を理解し、何が課題なのかを把握することができます。そのためメンバー間の理解が強まり、結束力を増すこともできるでしょう。
しかしプレイヤーに求められるスキルとマネージャーに求められるスキルは違います。プレイヤーとマネジメントの両立を図るためには、コミュニケーションスキル、マネジメント能力、時間管理能力など新たなスキルを向上させる必要があります。
管理職をプレイングマネージャーにすることの企業にとってのメリットについて
企業のメリットとして、現場の把握や理解が進むことによって、組織力が高まることが期待できます。プレイングマネージャーも現場で仕事を行うため、現状や課題、悩みなどを同じ目線で考えることができます。組織の一体感が醸成され、同じベクトルを見て業務をすることが可能となります。その結果、組織の業績アップや生産性向上につなげられるでしょう。
組織へのロイヤリティが高まる傾向があります。ロイヤリティは組織一丸となって目標に向かう際に欠かせない重要な要素です。管理職も共に現場の課題に向けて動いている姿がメンバーからの信頼を高めます。プレイングマネージャーは現場で働くため、より一層メンバーの立場に寄り添い、現場の考えを理解するため、信頼関係を構築しやすいのです。
管理職をプレイングマネージャーにすることの企業にとってのデメリットについて
大きな課題はプレイングマネージャーの業務過多です。求められる役割が多すぎるが故に長時間労働になっているケースが多くなっています。この状態を放置すると、優秀な社員の退職を招いてしまうかもしれません。
プレイングマネージャーの評価の難しさも挙げられます。個人目標は達成したが、組織目標は未達だった場合など、評価基準が曖昧になりがちです。プレイングマネージャーとしてどちらに比重を置くのかきちんと評価項目を設定しないと、プレイングマネージャーのモチベーション低下を招いてしまうでしょう。
優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーになれるかといったらそうではないことです。それぞれ必要なスキルは様々ですので、安直に個人業績が良い人をマネージャーにすることは正しいことではありません。
プレイングマネージャーの適性をきちんと見極めましょう
プレイングマネージャーとは、組織の成果や利益を出すプレイヤーとして活躍しながら部下の育成や評価などのマネジメントを行うポジションです。優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーになるとは限りませんが、人手不足によるプレイヤー不足やマネージャー不足に伴ってプレイングマネージャーになるケースも多々発生しています。
専門職としてプレイヤーに専念するほうが良いのか、マネージャーに専念するほうが良いのか、プレイングマネージャーが適しているのかは、従業員の適性や希望などを元に決定すべきでしょう。