人員不足によって起こる玉突き人事が問題となる
多くの企業において人員不足は頭の痛い問題です。帝国データバンクの調査によれば、正社員が不足している企業は年々増加しており、過半数の企業が正社員が不足していると感じています。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 10 月)
離職などで人員不足が起こり、従業員が意図していない異動をしなければならないこともあると考えられるものの、意図しない人事異動では従業員のモチベーションを低下させ、離職につながる可能性もあることが指摘されています。今回は、場当たり的な異動として多くの問題につながると言われている「玉突き人事」について説明していきます。
玉突き人事の意味や定義について
玉突き人事とは、主に欠員の補充を目的として行われる人事異動のことを指します。
通常の人事異動や配置転換と異なる点として、一年の決まった時期や特定のタイミングなど、中長期的な計画に基づいて行われるのではなく、突発的な欠員を補うために移動を行います。移動した穴を埋めるために、さらに他の部署から移動させるなど、玉突き(ビリヤード)において玉が連鎖して移動するように、欠員補充以外に意味合いの薄い、場当たり的な人事異動が連続して起こる点が挙げられます。
配置転換やジョブローテーションなどが人材育成や能力開発、あるいは組織の活性化などを目的として行われるのに対して、玉突き人事は目的の無い人員移動になりがちです。
玉突き人事が引き起こす問題とは
玉突き人事は本来重視されるべき異動目的や本人の意思、適性などが考慮されていないため、異動された社員のキャリア形成を阻害するだけでなく、意に介さない上に欠員補充以上の意味合いが薄く納得しづらい異動が行われることで、社員の不満を招き離職の原因になることがあります。
異動された本人はもちろん、移動先となった部署の関係者の間で混乱を招くだけではなく、突発的な異動になる場合が多いです。業務の引き継ぎや、新たに必要となる教育などもなおざりになってしまいます。
新人の受け入れは教育に割く時間やコストがかかり、社員が育つまで受け入れ部署のほかの社員の負担が増えることになります。玉突き人事で混乱や負担による問題が異動に関係した多くの部署で同時多発的に起こることで、社内全体が混乱してしまい、会社全体の雰囲気や、業績にも大きな影響を与えてしまいます。
玉突き人事が発生する理由とは
玉突き人事は、病気やケガなどで会社が事前に予測できないような思わぬ退職者や離職者が出てしまった際にその人手不足を補うために人事異動を行うことから発生する場合が多いです。
人間関係の問題を抱える部署の全面的な再生や、社員間の不正や取引先との癒着の防止のために行われることもあります。
玉突き人事を発生させないための対策方法について
事前に打てる対策として、就業規則や誓約書などで、人事異動の範囲について明記し、あらかじめ社員の同意を得ておくことが重要です。
根本的に人材の配置バランスの調整が最大の目的ではあるものの、スタッフの適性やスキルを最大限考慮し、また、本人の意向になるべく沿った形の移動にすることで、社員の不満やミスマッチを抑えることも考えられるでしょう。
社員の育成計画を事前に立てておき、なるべく計画の中に収まるような、社員のキャリア形成の妨げにならないような移動になるように工夫しましょう。
戦略的な人事異動を実現しよう!
玉突き人事とは、人員不足による戦略や計画性を欠いた人事異動のことであり、目先の問題を解決しようとしてより大きな問題を引き起こしてしまう人事異動です。
人員の補充を目的にしながらも、人材の適材適所を実現し、モチベーションや労働生産性を高めるためには戦略的な配属が必要不可欠です。急な人員不足が発生したとしても、とりあえず配属させるのではなく、あらかじめ立ててあった育成計画に可能な限り則った配置転換にするなど、何故配属させるのかの根拠を明確にして戦略的に実施すべきでしょう。