集団面接と個人面接の「役割」を区別しよう
就職白書2019によると、面接は99%の企業が実施している採用選考プロセスです。採用スピードを一定に保ち、かつ合否判定の妥当性を統一できれば、激しさを増す人材獲得競争において一歩リードできることは間違いありません。
採用活動の質向上を図るうえで、集団面接と個人面接を比較し「役割を明確に区別する」ことは非常に重要です。その理由は、集団面接と個人面接の役割が曖昧だとそれぞれの面接で見極めるべき項目に重複や不足が生じてしまうためです。
その結果、面接の評価にばらつきが生じて合否判定に時間がかかったり、本当に採用したい人材を獲得できないなどの問題も発生します。まずは集団面接と個人面接の「役割」を区別し、採用活動のスピードと質向上を図りましょう。
集団面接と個人面接を5つのポイントで比較して、面接の目的、見極めるべき項目、企業側・候補者側それぞれのメリット・デメリット、そして面接実施にあたり必要となる準備について、それぞれの違いを解説します。
集団面接と個人面接の目的の違いについて
集団面接と個人面接の違いを理解する1つ目のポイントは、「面接の目的」です。
- 集団面接の目的:必要最低限な採用要件の見極め
- 個人面接の目的:候補者の掘り下げと口説き
集団面接とは、選考の初期段階で行うグループ面接のことです。選考スピードを上げるために候補者4〜5人程度のグループで面接を行い、1人または複数人の面接官が対応します。集団面接の目的は採用要件を必要最低限満たしているかどうかを的確に見極め、採用選考プロセス全体の効率化を図ることです。
個人面接とは、候補者1人に対して面接官1人または複数人で行う面接のことです。面接を複数回行う場合には二次面接や最終面接などで用いられます。個人面接の目的は多面的に質問を投げかけることで候補者の人間性をより深く理解することと、候補者の企業理解を助けて必要に応じて候補者を口説くことです。
集団面接と個人面接の見極めるべき項目の違いについて
集団面接と個人面接の違いを理解する2つ目のポイントは、「面接で見極めるべき項目」です。
- 集団面接で見極めるべき項目:必要最低限の「MUST要件」
- 個人面接で見極めるべき項目:入社への熱意・価値観・人柄と「WANT要件」
集団面接では、必要最低限の採用要件を満たしているかどうか「MUST」要件について見極めます。集団面接では、一人につき10分程度しか時間をかけられないことがほとんどなので、いわゆる足切りの役割を的確に遂行することが重要です。
入社への熱意、候補者の価値観や人柄といった対話を通じて掘り下げていかなければならない項目は個人面接で見極めるべきです。こういう人物だったらプラス評価したいという「WANT要件」を満たしているかどうかを探ることも大切です。
集団面接と個人面接の企業側のメリット・デメリットについて
集団面接と個人面接の違いを理解する3つ目のポイントは、「企業側の視点」からそれぞれのメリット・デメリットを整理することです。
- 集団面接を実施する企業側のメリット:候補者のマイナス点(減点対象)を見つけやすい
- 集団面接を実施する企業側のデメリット:面接官の主観による相対評価に陥りやすい
- 個人面接を実施する企業側のメリット:候補者の人物像を深く把握できる
- 個人面接を実施する企業側のデメリット:面接官と候補者の相性により評価のばらつきが生じやすい
集団面接を実施する企業側のメリットは、複数の候補者と同時に会えるため、候補者のマイナス点を見つけやすくなる点が挙げられます。逆にデメリットとしては、複数の候補者を比べられるがゆえに必要以上に相対評価に陥りやすいという点です。評価基準を明確にして「自社の採用要件を最低限満たしているかどうか」で合否判定するよう、注意が必要です。
個人面接を実施する企業側のメリットは、候補者とじっくり対話でき、候補者の人柄や価値観などの人物像を深く把握できることです。デメリットとしては、会話ベースで面接が進行するため、面接官との相性がよければ話が弾み、評価項目から逸れた話題が広がったり、好印象から高評価に繋がるなど、面接官による評価のばらつきが生じやすい点です。面接官が共通認識を持って、面接に臨むことが重要です。
集団面接と個人面接の候補者側のメリット・デメリットについて
集団面接と個人面接の違いを理解する4つ目のポイントは、「候補者側の視点」からそれぞれのメリット・デメリットを整理することです。
- 集団面接を実施する候補側のメリット:他の候補者に差をつけやすい
- 集団面接を実施する候補側のデメリット:他の候補者に引きずられて本来の良さを出せなくなる
- 個人面接を実施する候補側のメリット:自分をしっかりアピールできる
- 個人面接を実施する候補側のデメリット:全ての質問に即時対応しなければならない
集団面接を実施する候補者側のメリットは、同席している他の候補者の様子や会話を参考にして上手く自己PRを差別化できる点です。しかし候補者自身が十分に自己理解していなければ、そのような余裕を持つことはできないでしょう。デメリットとしては他の候補者の発言内容に引きずられて、自信を失ったり不安に駆られて、本来の自分の良さを出せなくなってしまうことです。
個人面接を実施する候補者側のメリットは、他の候補者の発言内容に囚われず、また自分のためだけに時間をたっぷり使ってしっかりと自己PRできることです。一方でどんな質問を投げかけられてもすぐに対応しなければならないので、緊張感がかなり高くなります。場合によってはプレッシャーに負けてしまうデメリットもあるでしょう。
集団面接と個人面接の必要な準備の違いについて
集団面接と個人面接の違いを理解する5つ目のポイントは「面接前に準備しておくべきこと」です。
集団面接・個人面接ともに、見極めるべき項目を予め明確にして、評価基準を具体的にしたうえで面接官全員での共通認識にすることが必要です。しかし集団面接と個人面接とでは「役割」が異なりますから、準備内容も別々に整理しておくことが重要です。
集団面接においては「自己PRでは、過去の体験から自身の強みを言語化できており、志望動機との一貫性がある内容を、2分以内に話すことができる」などのように、自己PRの内容そのものを掘り下げて評価するよりも、質問の意図に沿った回答を時間内にできるかどうかという「受け応え力」を判定します。
個人面接においては、集団面接での受け応え内容を踏まえて「候補者本人が強みだと認識していることが、周囲からどのように評価されているかを把握し、自己理解力の程度を評価する」など、予め掘り下げるべき項目を具体的に設定しておくことで、意図を持った質問を投げかけることが可能になります。
評価基準についても、3段階評価にして各段階の具体的な回答例を示しておくなど、面接官の主観による合否判定を防ぐことができるよう工夫して準備をすることが大切です。例えば、「3点:時間内に必要な情報を話し終えた」「2点:時間をややオーバーしたが、気がついて調整できた」「1点:時間をすぎても話つづけたり、他の候補者の発言に乗っかって(発言を許可していないのに)発言した」などのように具体的に基準を示すことで、評価のばらつきを抑えることができます。
集団面接と個人面接の理想的なすみ分けを
個人面接と集団面接は候補者の人数が違うだけでなく、候補者一人あたりに使える時間が大幅に異なります。それぞれの面接の役割を採用担当者に共有することはもちろんですが、面接官が意図を持った質問をできるよう、また客観的に候補者を評価できるよう事前準備を促すことも重要です。
自社の採用課題に応じて、個人面接と集団面接を使い分けることが、採用活動のスピードと質向上の近道となるのです。