新人フォローアップ研修で理想と現実のギャップを埋める方法とは?

新人が受ける「リアリティー・ショック」

人材の育成には、常に時間と労力はかかりますが、長期的にはかかった分以上の大きな会社の利益となって還元され、より大きな利益に繋がっていくものです。経営層や人事担当者は、目先の利益や経費だけではなく、一歩先の未来を視野に入れた全体最適の投資=人材育成を活用していくことが重要です。

企業側の配慮如何に関係なく新たに組織に入るメンバーは、多かれ少なかれ入社後に自分の思い描いていた理想と、実際の社会にギャップを感じます。現象の一つが「リアリティー・ショック」です。

「リアリティー・ショック」とは、「理想と現実に衝撃を受けること」であり、自分が頭に描いていたイメージが実際の仕事内容や人間関係など、経験していることとのギャップに、不安感や喪失感、あきらめの気持ちを感じ、ときに早期退職や離職を招く大きな要因となることです。

毎日コミュニケーションズの調査では、実際にリアリティー・ショックを感じた人は62.9%と過半数を超えており、その結果「組織コミットメントの低下」や「組織社会化の阻害」、「離職意思の高まり」が発生します。

リアリティーショックを感じた割合
出典元『マイコミ社会人レポート』 リアリティ・ショックに関するアンケート調査結果を発表

今回は理想と現実のギャップを埋めるための新人フォローアップ研修について説明します。

理想と現実のギャップの内容とは?

新人フォローを実施する目的として、大きく5つの目的が挙げられます。

  1. ビジネスマナーや基本行動などの社会人スキルの習得
  2. 早期離職の防止
  3. 企業や事業内容への理解を深める
  4. 横の人間関係づくり
  5. 新人の早期戦力化と社会人としての自覚の醸成

リアリティー・ショックを感じたこと

毎日コミュニケーションズが実施した「リアリティー・ショックに関するアンケート調査」によると、入社後1ヶ月の感想では「とても楽しい」(14.4%)「どちらかというと楽しい」(59.1%)と、肯定的な回答が7割を超えていますが、その一方でリアリティー・ショックに関しても、「とても感じた」(16.6%)「少し感じた」(46.3%)と6割以上の人が実感しており、会社に満足はしているものの、理想と現実のギャップを感じている新入社員が多いという結果が見て取れます。

リアリティーショックを感じた割合
出典元『マイコミ社会人レポート』 リアリティ・ショックに関するアンケート調査結果を発表

「リアリティー・ショックを感じたことで、どのような影響がありましたか?」という問いに対しては、「焦りを感じる」が36.0%と最も高く、次いで「会社に行きたくないと思うことがある」(35.5%)、「将来が不安で仕方ない」(29.9%)、「仕事をやめたいと思うことがある」(27.9%)という結果となり、入社して1ヶ月で既に焦りや将来に対する不安を抱いている新入社員の姿を垣間見ることができます。

リアリティショックを感じたことにより、どのような影響がありましたか
出典元『マイコミ社会人レポート』 リアリティ・ショックに関するアンケート調査結果を発表

「リアリティー・ショックを感じた」と回答した197人を対象に「リアリティー・ショックを感じたのは、どんなことに対してですか?」と尋ねたところ、「社会人としての自分の能力」「社内の人間関係」と答えた人がともに42.1%と最も高く、次いで「職場の雰囲気」(39.6%)、「学生時代との生活リズムの違い」(37.1%)という結果となっています。

リアリティショックを感じたのは、どんなことに対してですか
出典元『マイコミ社会人レポート』 リアリティ・ショックに関するアンケート調査結果を発表

リアリティー・ショックを解消するためのフォローアップ研修

リアリティー・ショックは、悩んでいる本人にとっては辛いことですが、職場での適切なフォローやサポートによって問題を解決、または悩みを軽減することも十分にできます。

企業は、リアリティー・ショックをネガティブなものとだけ捉えるのではなく、新入社員の成長を促すチャンスであると考え、的確なフォローアップ体制を構築することに力点を置くべきです。

上司や先輩に相談できる環境づくり

新入社員を迎える部署の社員たちは「新入社員はリアリティー・ショックを受ける」現実を知っておきましょう。

新入社員と年齢の近い先輩がいれば、彼らの良き相談相手となり、自身の経験から適切なアドバイスを与えることも可能です。新入社員と部署の構成メンバーとの年齢差がある職場も多くなっていますので、既存社員の研修なども考慮に入れる必要があるでしょう。

新入社員が定着するか否かは、上司や先輩がどの程度フォローアップできるかも、重要な役割を担っているのです。

先輩によるマンツーマンの新入社員教育

新入社員に対しての初期の教育方法として、マンツーマンでの指導も見直されています。先輩による「マンツーマンでのOJT(On-the-Job Training)」で業務に必要なスキルを実践的に教えるのと同時に、新入社員が不安や悩みを話しやすい環境づくりにもなるなど、メンタルケアの効果も期待できるためです。

リアリティー・ショックでの離職率の高い業種(看護職や介護の現場)において、積極的に実践されている手法と言われています。

新人フォロー研修

入社3ヶ月~1年未満の新人を対象にした定期的なフォローアップ研修も、リアリティー・ショック対策として有効です。社会人としての基本的なマナーやスキルを再確認するだけでなく、同僚や先輩が体験したことを情報共有することで自身への気付きとなり、モチベーションの向上につなげることが可能になります。

同僚同士の意見交換もメンタルヘルスの観点では重要です。職歴に共通項がある社員同士が顔を合わせる機会を設けることは有効な対策となるのです。

新人の現実と理想のギャップをいかに埋めるかが重要

新人フォローを行う上で、入社前の理想と入社後の現実のミスマッチを埋める研修内容は、組織コミットメントの向上や離職率の改善に用いることができます。

研修を実施することだけでは、必ずしも理想と現実のミスマッチを埋められるわけではありません。それを踏まえた上で、入社前の段階で、RJP理論などを活用して、採用段階で現実を伝えることにより、事前に理想と現実のギャップを少しでも埋めた上で入社してもらう方法もある、ということを理解しておくことが重要なのです。

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