新人フォローを実施しないデメリットとは?企業・従業員視点で考える

不透明な時代だからこそ重要な「新人」の存在

ITがいくら発達しても、企業にとっての「人材育成」の重要性は不変なものです。人を育てることは時間と労力はかかりますが、長期的にはかかった分以上の大きな利益となって組織に還元され、より大きな発展につながっていきます。経営層や人事担当者は、目先の利益や経費だけではなく、一歩先の未来を視野に入れた全体最適の投資=人材育成を活用していくことが肝要です。

育てていくべき新社会人の側はというと、新しい環境にさまざまな不安を感じています。マイナビが実施した『新入社員の意識に関する調査』によると、新社会人が社会人生活で抱えている不安の1位が「仕事をうまくこなせるか」、2位が「上司・先輩・同僚との人間関係」と、新社会人の過半数が、仕事や人間関係に大きな不安を抱えていることがわかります。

社会人生活でどのようなことに不安を感じていますか
出典元『マイナビ』2018 年マイナビ新入社員意識調査

こうした不安が重なっていくことは、多くの企業で問題になっている「早期退職」につながるリスクもあります。新卒入社1年以内の離職者が、中学校・高校生卒業者と比較した際に離職率が低い大学卒であっても、長らく10%以上であることからも、これは小さくない問題なのです。

学歴別就職後3年以内離職率の推移
出典元『厚生労働省』新規学卒者の離職状況

新人社員とはいえ、早期退職されることは企業にとって大きな損失です。求人広告費だけでなく、採用活動に関わった人事や現場社員、役員の人件費だけでなく、入社・退社手続きにかかった時間や教育研修費、早期退職した社員の人件費などがコストとして積み重なり、少なくても100万円、多い場合は1,000万円を超える損失となります。

今回は早期離職を防ぎ、人材を育成するために必要な新人フォローを実施しないデメリットについて説明します。

新人フォローをしない場合のデメリットを考える

新人フォローを実施する目的として、大きく5つの目的が挙げられます。

  1. ビジネスマナーや基本行動などの社会人スキルの習得
  2. 早期離職の防止
  3. 企業や事業内容への理解を深める
  4. 横の人間関係づくり
  5. 新人の早期戦力化と社会人としての自覚の醸成

新人フォローを実施しない場合、5つの目的が果たせないことを理解する必要があります。

新人フォローを実施しない企業へのデメリットとは

採用・教育に常にコストがかかる

新人教育をしないことは、離職率にも影響します。人材育成はある程度の投資が必要という考えがない職場だと、定着率も低く、採用コストが結局増えてしまいがちです。

マイナビが実施した調査によると、一人あたりにかかる費用の平均は、広告費やセミナー運営費などの直接的な費用だけで53.4万円にものぼります。

入社予定者1人あたりの採用費平均
出典元『マイナビ』2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査

もちろん、選考や面接に時間と社内の人材を割り当てるなど、単純にその時間を時給換算するだけでも膨大なコストになることは明白です。特に、中小規模の企業では、新人採用だけで業務や予算を圧迫する割合は大きく、その意味でも的確なフォローは、不可欠な投資といえるのです。

企業の生産性の低下

人材は、業務に慣れるにしたがって時間あたりの労働生産性は向上するものです。経験が増すほど、業務の流れを正確に把握し効率的に動くことができるようになりますが、新人フォローなどに積極的でない企業は結果、定着率も低く、組織にベテランが育ちません。ベテランは、一定数組織にいることで社内のコミュニケーションと育成の場を円滑にでき、より効率のいい業務フォローの実現につながる存在です。

新人の時代からきちんとフォローアップ体制を整えるなど、良い人材が育つ土壌を用意することは企業としてはマストの課題なのです。

風評被害のリスク

3年以内の離職率は、求職者が会社のことを判断し特定のイメージを持つ一つの指標になると言われています。

最近では企業のイメージは簡単に個人がネットに書き込める時代です。離職率が高い企業は、それだけで「社員を使い捨てる」や「激務」などのマイナスイメージに直結するのです。

新人フォローを実施しない場合の社員へのデメリット

社員のモラル・モチベーションの低下

離職率が高い企業は、採用・教育をする側も、新人社員も、「何かあったらすぐに辞めるし」と教育やマネジメントをするモチベーションがもともと低い傾向があります。丁寧なフォローがない職場で教育を受けた新人は、後任にも同じようなやり方でしか教育できないですし、教えられる側も、どん欲に成長しようという気持ちを持ちにくいものです。

こういったオフィス環境では、良好な人間関係を構築しにくく、誰もが、職場を大切にしない雰囲気が蔓延してしまいます。一方で、定着率の高い職場では、良好な職場環境を醸成しやすく、社員のモチベーションも高くなります。社員のやる気は、組織の生産性や顧客満足度にも大きな影響を与えます。

「教える側」になる機会を失う

OJTでは、『分からない人にいかに分かりやすく教えるか』ということも重要な要素です。上司や先輩など、OJTの担当者は、「新人がどうすれば理解してくれるのか」を考えながら研修を実施することになります。

過程を通して、教える側の業務への理解度や部下への指導力も向上するものですが、新人フォローを実施しない企業は、既存の社員が育つ機会も奪うのです。新人だけでなく、既存の社員のスキルアップにも大きな影響があります。

新人フォローの必要性を理解しよう

新人フォローは離職率改善・定着率向上に非常に有効な方法です。新社会人として、会社に馴染めるのか、仕事をうまくこなせるかといった漠然とした悩みを抱え、具体的な行動ができず離職してしまう新人には、具体的に解消できる何かを提案することが必要です。

業務内容や時期によって変わっていく個人の悩みに対して、いかに適切なタイミングでフォローしていくことができるか、その重要性は今一度考えてみることが求められているのです。

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