経営人材の育成に成功した企業の事例とは?具体的な育成方法について

経営人材の育成は多くの企業で課題となっている

経営人材の育成は、人事の重要課題として上位に挙がるテーマのひとつです。

経済産業省の調査によると、将来の経営人材の確保・育成について「順調」と答えた企業は7.2%しかなく「どちらかというと順調」を含めても37.6%となっており、過半数の企業が経営人材を確保・育成できていない現状が明らかとなっています。

貴社では、将来の「経営人材」の確保・育成の状況はいかがですか
出典元『経済産業省』「経営人材育成」に関する調査結果報告書

経営人材の育成を成功させるためには、自社の抱える課題に応じた求める人物像を明確にする必要があります。しかし、求める人物像を特定していく要件や取り組みにはさまざまな手法があり、企業によって理想とする経営人材像は異なります。

今回の記事では、経営人材の育成に成功した企業の事例について、具体的な課題や育成方法とあわせてご紹介します。

経営人材の育成に成功した企業の事例とは?

経営人材の育成に成功した企業の事例を4つご紹介します。

  1. カゴメ株式会社の事例
  2. 日本オラクル株式会社の事例
  3. 株式会社日立製作所の事例
  4. 帝人株式会社の事例

1.カゴメ株式会社の事例

カゴメ株式会社とは、調味食品や飲料、その他の食品製造・販売などの事業を営む、従業員数2,504名(連結、2018年12月期現在)の企業です。

経営人材の育成における課題

カゴメ株式会社では、同社のさらなるグローバルブランドへの飛躍を目標に、グローバル人事施策の導入が課題となっていました。

経営人材の育成方法

グローバル人事施策の第1ステージとして、2013年からジョブ・グレードや評価基準の統一、コア人材のサクセッションプランの策定、グローバル教育体制の構築など、グローバル化を推進するための基盤づくりを推進しました。

2016年からはグローバル人事施策の第2ステージとして「どのような質の人材が、いつまでに、どの地域に、どれだけ必要なのか」についての見極めを進めました。分野ごとの戦略分析をより詳細に行うために、グローバル人材の見える化やグローバルベースのスキルマップ作成に取り組み、必要なときに必要な人材を供給できる仕組みを確立しました。

2.日本オラクル株式会社の事例

日本オラクル株式会社とは、米国企業オラクルコーポレーションが日本に設立した法人で、クラウド・アプリケーションやクラウド・プラットフォームのサービスを中心とした事業を営む、従業員数2,622名(2019年5月31日現在)のグローバル企業です。

経営人材の育成における課題

グローバルに事業を展開するオラクルにとって、組織・人材のマネジメントは事業の根幹であり、ビジネスの成功に必要不可欠でした。

経営人材の育成方法

オラクル本社のCEOであるマーク・ハード氏は、戦略的タレントマネジメントはCEOにとって最重要課題であると述べ、より最適な適材適所を実現するための行動プランを実行しました。

適材適所を実現するために現状の配置についてのレビューを行い、会社の成長戦略の柱であるクラウド事業や成長著しい地域のビジネスをけん引できる人材がいるか、価値創造の要となるポジションに最適な人材が配置されているかなど、トップと事業部長の強いオーナーシップとコミットメントによってタレントレビューを行いました。

同社では、人材を「エグゼクティブ層」「ミドルマネジャー(マネジャーのマネジャー)」「マネジャー」「一般社員」と分類してレビューを行い、キャリアレベルごとにタレント人材の分布や後継者の内部充足率などの現状を把握して、目指すべき姿とのギャップから求める人材の採用や育成に取り組みました。

3.株式会社日立製作所の事例

株式会社日立製作所とは、日立グループの中核企業で世界有数の総合電機メーカーである、従業員数295,941名(連結、2019年3月末日現在)の企業です。

経営人材の育成における課題

日立製作所では、イノベーション事業を展開するグローバル企業として、従来のグループ各社・各国ごとに個別で行っていた人事制度を、全体最適の人材配置実現のために統一する必要がありました。

経営人材の育成方法

日立製作所では、成長戦略を具現化するために必要な経営人材をグループ・グローバルワイドで確保・育成し、事業運営上重要となるキーポジションに年齢・性別・国籍・学歴を問わず配置できる状態を目指して、以下の5ステップで経営人材の育成に取り組みました。

  1. 各社・各部門の戦略上、重要な経営リーダーのポジションをキーポジションとして選定
  2. 各社・各部門の戦略を踏まえ、重要ポジションに求められる役割や人材要件を明確化
  3. 社内人材についてはグローバルタレントとして候補者を選抜し、外部人財は外部サーチファームと連携して発掘
  4. コンピテンシー・パフォーマンス・ビジネスリテラシーを用いて、人材の育成度合いを確認
  5. アセスメントによって明らかになった本人の強み・弱みを踏まえ、個々の育成プランを策定

日立製作所は今後の課題として、40代半ばでグループ会社等の経営トップを経験させて、変化・変革をリードできる人材を育てるための素地づくりを挙げています。若いうちから経営トップの経験を積ませるためには、30代前半の若手層からハイポテンシャルな人材を選抜し、より早期に高いポジションに登用する必要があるとしています。

4.帝人株式会社の事例

帝人株式会社とは、アラミド・炭素繊維・樹脂・複合成形材料、繊維・製品、医薬・在宅医療、ITなどの事業をグローバルに展開している、従業員数20,671名(連結、2019年3月31日現在)の企業です。

経営人材の育成における課題

帝人株式会社では、グループの変革・創造・成長をけん引する経営人材の育成を早期かつ計画的に行い、グループ・グローバル経営における人材基盤を強化する必要がありました。

経営人材の育成方法

帝人株式会社では、グループの成長をけん引する人材基盤の強化に向けて、グループコア人材制度を実施しました。

グループコア人材制度とは、優秀な人材への多様な成長機会の付与による早期育成と、グループ全体からの人材発掘によって、組織における変革・創造・成長をけん引する人材の早期計画的育成を行う制度です。

帝人株式会社では経営人材を育成するために、仕事を通じた成長を促すための戦略的人材配置の推進や、定期的なフィードバックを行うための客観的アセスメント評価の導入、実際の自社の課題の解決策を議論するダイアログ重視の研修などの社内施策を充実させた上で、必要に応じて外部研修機関への派遣や外部専門機関によるアセスメントとコーチングも提供しました。

経営人材の育成に取り組む際は、他社の成功事例を参考にしよう!

経営人材の育成は、多くの企業が抱える課題であるため、育成方法には各社様々な工夫がなされています。経営人材の育成方法が各社各様なのは、それぞれの企業によって目的や課題が異なるためです。

自社で経営人材を育成する際には、育成の目的を明確にするだけでなく、求める人物像を具体的かつ明確にすることが大切です。育成方法をすべて自社で考えるのはかなりの時間と労力を要するため、自社に似た課題を持つ企業の事例を参考にして、自社ならではの経営人材の育成に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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