ジョブレスリカバリーとは?一時的な景気回復がより深刻な不景気の原因となる

人材採用と景気は大いに関係している

景気は私たちの生活に密接に関係していますが、何気ない生活の中では特別意識することは少ないかもしれません。ただ経営者・人事担当者の皆さんにとっては、世の中の景気の自社への影響は計り知れないものがあることでしょう。景気は企業における人材採用にも影響を及ぼしています。

一般的には不景気になるほど人材採用数を減らし、景気がよくなるほど人材採用数を増やす傾向にあります。不景気ということは業績が悪化しやすい状態であり、人材なども含めた投資ができないからです。景況不安に陥った新型コロナウイルスの感染拡大フェーズでは、新卒採用数を減らす決断を行った企業も多く存在します。

大企業は一社が経済に及ぼす影響が非常に大きく、社会全体の景気へも大いに関与してきます。景気の回復に伴い人手不足も解消させると考える企業も多くありますが、実際は、景気・業績の回復の際に「人材採用か、テクノロジーへの投資か」という選択に迫られる場合があります。

今回は、景気・業績の回復に伴うテクノロジーへの投資が進み人材採用が行われないジョブレスリカバリーについて紹介します。

ジョブレスリカバリーとは?景気回復が喜べない原因

ジョブレスリカバリーとは「雇用なき景気回復」のことです。普通に考えると、景気(業績)が良くなるほど人材不足に陥って採用活動も活発化し、景気(業績)が悪くなるほど固定費である人件費の削減や教育研修等にかける将来への投資予算が減り、雇用が減るはずです。ジョブレスリカバリーでは、景気(業績)は良くなったものの、雇用が発生しない現象のことです。

通常は社会の景気回復の約半年〜1年後に雇用の活発化が起きるため、この期間がジョブレスリカバリーに陥る限定的な現象とみなされてきました。しかしIT技術の発展と浸透により、景気が回復しても企業がIT・テクノロジーに投資する額が増えるだけで、人材雇用は生まれない現象が見られるようになりました。これまでの常識であった「景気回復→雇用拡大」が起きず、終わりのないジョブレスリカバリーが起きることが頻発するようになったのです。

儲かったお金で人を雇うのではなく、ロボットやテクノロジーに投資する場合もあれば、雇用の賃金が安く抑えられる海外の人材に頼る場合も確認されています。このような動きは、経営者、人事担当者の皆さんには「そうしたくなる気持ちはよく分かる」「高額で人を雇うよりよほど効率がいい」といった感想を抱かれるのではないでしょうか。

ジョブレスリカバリーは社会全体にとって悪影響を与える

ジョブレスリカバリーは、社会全体にとっては良い影響を及ぼしません。言葉の通り「雇用なき」状態なのです。

一企業としては最先端テクノロジーを取り入れて労働効率が上がり一層利益が出るように思えるかもしれませんが、それは「消費者」が存在しなければ成り立ちません。「雇用なき」状態にある人々は、経済的打撃を受けて「消費」することができないからです。

社会全体の消費が活発化し経済が好調に循環するには、人々に仕事があり、給与を得て、積極的に消費するだけの経済的余裕を持っている必要があるのです。社会全体の景気が低迷すると、当然企業へも影響は及んできます。テクノロジーに投資し好調に進み始めた矢先に、不景気の壁にぶつかってしまう可能性が大いにあります。

判断のポイントは、少し先の連鎖・影響への見通し

ジョブレスリカバリーとは「雇用なき景気回復」のことです。景気が回復した際に、人ではなく技術に、もしくはより安価な海外の人材へと投じてしまうことは、国内の雇用を生まず失業者を増やし、消費は低迷し、社会全体を不景気へと陥らせていくのです。

瞬時に連鎖が起きるのではなく、時間をかけてじわりじわりと浸透し影響を及ぼすものです。ジョブレスリカバリーの影響は長期化し、あなたの会社はもちろん、社会全体が好ましくない影響を受ける現象なのです。何に投資すべきか検討中の方は、少し先を見て、何がどう影響し循環していくか慎重に見極め、バランス感覚も大事に選択していかれることをお勧めします。

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