ジョブ・クラフティングを実施する方法とは?企業からのサポートも大切

退屈な仕事をやりがいのある仕事へ変える

ジョブ・クラフティングとは、従業員一人ひとりが仕事の捉え方や業務上の行動を主体的なものへと修正することで、退屈な作業ややらされ感のある業務を自らやりがいのあるものへ変容させる手法のことをいいます。

ジョブ・クラフティングは米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン名誉教授が、2001年に提唱したといわれている理論です。ジョブ・クラフティングのクラフト(craft)は、英語で「工芸」を意味します。

従業員が与えられた仕事に対して自分自身の意思で仕事を再定義し、自分の強みや新しい視点を取り込むことで、生き生きとしたやりがいのあるもの、面白いと思えるものに変えていくことを目指しています。

米ギャラップの調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが解ります。この割合は、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスです。このような結果は、日本で働く者として残念に思われる方が多いのではないでしょうか。

参考URL『日本経済新聞』「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査

ベイン・アンド・カンパニーとプレジデント社が共同で調査した結果、「やる気あふれる社員」は「満足している社員」よりも生産力が2倍以上あることがわかりました。また「満足していない社員」と比べると、3倍も生産性が高いことがグラフからもわかります。

意欲の度合いによる社員の生産性
出典元『PRESIDENT Online』”3人に1人”の不満社員を奮起させるには

これらのことから、モチベーションと生産性は密接に関係していることがわかります。

公益財団法人・日本生産性本部によると、2017年の日本の時間当たり労働生産性は、OECD加盟36カ国中20位ということでした。

労働者1人あたりの労働生産性 時間あたりの労働生産性
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

日本の労働生産性は米国の2/3程度の水準であり、時間あたりの労働生産性の改善には、まだまだ余地があると言わざるを得ません。

今回は、従業員のモチベーションを向上させる手法であるジョブ・クラフティングのやり方について、企業側がどのようにサポートしていくのか説明します。

ジョブ・クラフティングを実施する3つの要素とは

ジョブ・クラフティングとは、仕事のやりがいや満足度を高めるために、自分の働き方に工夫を加える手法のことをいいます。

働き方に工夫を加える際、「作業クラフティング(仕事のやり方への工夫)」「人間関係クラフティング(周りの人への工夫)」「認知クラフティング(考え方への工夫)」といった3つの要素に着目することが大切です。

1.作業クラフティング(仕事のやり方への工夫)

作業クラフティングとは、仕事のやり方に対する工夫のことです。作業のやり方や取り組み方を工夫して、仕事の中身を充実させます。

具体的には、目標設定や優先順位をつけたスケジュール管理やタイムマネジメントの工夫、スキル向上などを行います。優先順位が必ずしも高くなく必要性が乏しい仕事について、断ることで自身の仕事の量や範囲を調整することも、作業クラフティングに挙げられます。

≪自分の作業がしやすくなる工夫≫

ToDoリストを整理して、短期と中長期の段階で目標を立てる

期待される効果
  • 仕事に向かいやすくなる
  • 進捗を感じやすい
  • 自信につながる

≪仕事へのやりがいや思い入れが生まれる工夫≫

クリエイティブな仕事をする時間を確保する

期待される効果
  • 自分で考え実践する楽しさが生まれる
  • 前向きな働き方になる

2.人間関係クラフティング(周りの人への工夫)

「人間関係クラフティング」とは、周囲の人への働きかけの工夫のことです。周囲とのかかわり方を工夫し、周りからサポートを得ることで仕事への満足感を高めます。

具体的には、職場の先輩に自らの仕事に関するアドバイスを積極的に求めることが挙げられますす。自身から周囲へのかかわり方を変えることで、サポートや前向きなフィードバックを得やすい環境を整えることが、人間関係クラフティングと言われる工夫です。

≪職場の人からのサポートを集める≫

上司や同僚とフランクな会話をする機会を増やす

期待される効果

仕事の助言をもらいやすくなり、仕事へのやる気・自信がUPする

≪他の職場の同僚と話す機会を増やす≫

他の部署の人とご飯にいくなどし、業務の話を楽にできるようにする

期待される効果
  • 自分の仕事が客観的に見える、気持ちが楽になる
  • 様々な仕事の情報が集まる

3.認知クラフティング(考え方への工夫)

認知クラフティングとは、仕事の捉え方や考え方に関する工夫のことです。仕事の意義を整理し、業務の目的や貢献を捉えなおすことで、自身の業務に対しやりがいを感じやすくします。

具体的には、現在従事している自分の仕事が、自分の将来に与える意義を考えてみる工夫があ挙げられます。仕事の目的や意味を捉え直し、自分の興味や関心と結びつけて考えることで、前向きに仕事に取り組めるようになります。

≪仕事の捉え方を工夫してやる気UP≫

  • 今のスキルが将来にどう活用できるかを考える
  • 自分の仕事と関心との関連を考える
期待される効果

やりがい、仕事の意義を再確認できる

≪仕事の全体像をイメージする≫

  • 今の仕事は、誰のためにやっているかを考える
  • 仕事が完成した時を想像する
期待される効果

自分の仕事の面白いところ、良いところに気づくことができる

ジョブ・クラフティングをすすめる4つのステップについて

ジョブ・クラフティングは個人が行なうことですが、企業の取り組みによって促すことは可能です。

1.ジョブ・クラフティングに関する基礎知識や、具体的な事例の紹介

ジョブ・クラフティングが有効な手段であることを知ってもらわなければなりません。ジョブ・クラフティングをすることで、どのような効果が期待されるかを従業員に周知しましょう。

例えば、高いワーク・エンゲージメントや低い心理的ストレス反応と関連があるという報告や、ジョブ・クラフティング研修プログラム前後でワーク・エンゲージメントが向上して心理的ストレス反応が低減したという報告などを用います。

ジョブ・クラフティングの定義に基づいて、ジョブ・クラフティングの3つの要素(「作業クラフティング(仕事のやり方への工夫)」「人間関係クラフティング(周りの人への工夫)」「認知クラフティング(考え方への工夫)」)を紹介し、参加者の理解を深めます。

2.事例を用いたワーク

架空の事例を用いて、仕事に対してやらされ感や行き詰まり感を感じている場合、どのようにジョブ・クラフティングをしたらより前向きになれるのかを考えます。用いる事例に関しては、参加者の特性やニーズに合わせて準備します。

ジョブ・クラフティングの3つの要素に沿って、個人ワークで自由に考えた後、グループワークで意見を共有します。ワークから具体的にどのような場合にジョブ・クラフティングをすると効果的かを学び、他の人のジョブ・クラフティングのアイデアを知ることができます。

ジョブ・クラフティングの事例として、スケジュールの管理を工夫してやりたい仕事をする時間を確保する(作業クラフティング)、後輩に話しかける機会を増やして教育をしやすい環境をつくる(人間関係クラフティング)、自分の仕事の意義を再度考えるようにする(認知クラフティング)といった例が挙がることでしょう。

3.自身の日常業務を振り返り、自分ができるジョブ・クラフティングについて考える

現在自身が行っている業務について、どの業務に対してジョブ・クラフティングを実施するかを考えます。参加者が挙げた業務に対して、どのようなジョブ・クラフティングができるか個人ワークで考え、その後グループワークで意見を共有することで、更にアイデアを増やします。

グループワークのアイデアを踏まえ、約1か月の間に実施するジョブ・クラフティング計画を考えます。ジョブ・クラフティングの3つの要素について1つずつ計画を立て、具体的に「何を・いつ・どこでするか」まで落とし込み、計画カードなどに書き込みます。

この作業により、実行可能性を高めます。

4.計画に基づいて実行したことを振り返り、改善版の計画を作る

約1ケ月後、計画内容、実行した回数、実行して感じた気持ちの変化や実行しやすさ、次に活かす場合のポイントについて、個人ワーク、グループワークを通して振り返ります。計画の振り返りを踏まえ、より実行しやすくかつポジティブな気持ちに繋がるようなジョブ・クラフティングは何かを考えていきます。より具体的で、実行しやすいジョブ・クラフティングのアイデアが出るようになるでしょう。

以上のワークを踏まえて、次の1か月の間に実施する改善版のジョブ・クラフティング計画を考えます。3つの要素について1つずつ計画を立て、具体的に「何を・いつ・どこでするか」まで落とし込み、計画カードなどに書き込みます。

これらの要素を踏まえ、従業員にジョブ・クラフティングを促していきましょう。従業員が日常業務の中で多くのジョブ・クラフティングを実践することができれば、より前向きにイキイキと、やりがいを感じながら働くことができることでしょう。

従業員のモチベーション向上に効果的なジョブ・クラフティング

ジョブ・クラフティングとは、従業員一人ひとりが仕事の捉え方や業務上の行動を主体的なものへと修正することで、退屈な作業や「やらされ感」のある業務を、自らやりがいのあるものへ変容させる手法のことをいいます。モチベーションと生産性は密接に関係しているおり、モチベーションの向上が自社の労働生産性・業績の向上につながります。

働き方改革により、時間あたりの労働生産性の向上が求められている中、従業員のモチベーションが著しく低いと言われる日本企業において、ジョブ・クラフティングは非常に効果的な手法として考えられます。

ジョブ・クラフティングは個人が行うことですが、企業の取り組みによって従業員に促していくことは可能です。ぜひ、活用してみてはいかがでしょうか。

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