面接マニュアルの作成は、採用業務効率化を図る鍵になる
面接マニュアルとは、採用面接の手順、心構えや注意事項、質問項目や評価基準などを、面接官向けにまとめたものです。面接マニュアルの作成は、初心者面接官を教育するのに大いに役立ちます。
採用関係者同士で選考基準の目線を合わせる拠り所にもなるため、選考合否の決断を円滑にできるようになります。面接マニュアルの作成は、採用業務の効率化を図るための鍵となるのです。
大手企業ほど、面接担当者の教育・訓練に課題感
「就職白書2019」によると面接の実施率は99%にのぼり、面接はほとんどの企業で実施される採用手法です。
一方で、3割以上の企業が、採用関係者への採用選考基準の統一化や、面接担当者の教育・訓練に課題感があると回答しています。
なかでも「社内関係部署の協力体制(61.7%)」と「面接担当者の教育(46.1%)」に、最も課題を感じているのは、従業員数5,000人以上の大手企業であることは注目です。「採用関係者への採用選考基準の統一化(49.1%)」に、最も課題を感じているのは、従業員数1,000〜4,999人の企業でした。
組織が大きくなり、採用選考関係者の数が増えるほど、一枚岩となった採用活動が難しくなることが伺えます。今回は、採用選考基準の統一化や教育・訓練に用いることができる面接マニュアルについて説明します。
採用面接の目的を再確認しよう
そもそも面接は、何のために行うのでしょうか?採用面接の目的は、応募者との対話を通じて、自社の採用要件に合う人材を見極め、入社後早期にまた長く活躍できる人材を採用するためです。
同時に、応募者が知りたい自社情報を適切に提供し、企業理解を深めて志望の動機付けを行うことも求められています。
面接官の心構えについて
面接官は、自社の採用要件に合う人材を見極めるだけではなく、自社と応募者とをマッチングする役割を担うともいえます。面接官の対応が求職者の志望意欲を左右する、ということを肝に銘じ、「面接官とは会社の顔である」「応募者にはリラックスしてもらってこそ、本音を引き出せる」という心構えで面接に臨みましょう。
人材の見極めを行うためであったとしても、圧迫面接を行ったり、面接現場で法的に質問が禁じられている項目を話題に上げたりすることのないよう、細心の注意を払う必要もあります。選考・内定の辞退や、自社に対するネガティブな情報をSNSで拡散されるなどのリスクは、採用活動はもちろんのこと事業継続の脅威にもなり兼ねないためです。
構造化面接の導入も話題に
構造化面接という面接手法をご存知でしょうか? 構造化面接とは、「あらかじめ質問項目と評価基準を決めておき、マニュアル通りに面接を実施していく」面接手法で、Googleの採用面接にも導入されて注目を集めるようになった面接手法です。
構造化面接の効果は「面接担当者が誰であっても、一定の基準で応募者を評価できるようになる」ことです。複数人の面接官による評価のばらつきを抑えるために、面接マニュアルの作成を検討している人事担当者の方は、構造化面接の導入も合わせて検討されてはいかがでしょうか。
面接マニュアルを作るメリットについて
採用面接の手順、心構えや注意事項、質問項目や評価基準などを総合的にまとめた「面接マニュアル」の作成も、面接官の教育・訓練や、評価のばらつきを抑えるのに役立ちます。新米面接官が多い場合や、採用関係者が増えて目線合わせに工数がかかっている場合には、特に有用です。
面接マニュアルを作成する、企業側のメリットには下記が挙げられます。
- 面接官のスキルや経験に左右されず面接を実施できる
- 応募者をリラックスさせ、本音を引き出せる
- 応募者の企業理解や自己理解を深化させ、採用のアンマッチを防止できる
- 応募者に不快感を与えず、自社イメージダウンを回避できる
- 遠隔でも面接の結果を共有し評価しやすくなる
面接マニュアルを作るデメリット
一方、面接マニュアルにはデメリットも存在します。せっかく面接マニュアルを作成しても、現場で運用されなければ意味がないということです。
面接マニュアルを作成した後、いかに周知を徹底するか、予め検討しておくことが重要です。面接マニュアルを面接担当者の意識にしっかりと浸透させるためには、教育研修などを行う工数がかかることも要注意です。
面接マニュアルは、採用課題に合わせアップデートせよ
面接マニュアルは、新米の面接官でも安心して面接を実施できるようになるほか、複数の面接官や採用関係者の間で一貫した選考と評価を行うのにも役立ちます。しかし市場環境の変化などに伴って、自社の採用課題が変わった場合には、適宜マニュアル内容もアップデートしていかなければなりません。
面接マニュアルを作成する場合は、「作る」ことを目的にするのではなく、自社の採用課題に即した人材を採用するための「手段として活用する」ことが最も重要なのです。