面談は、採用活動における母集団形成に有効
採用活動における面談は、企業と応募者の相互理解を深める目的で実施されるものです。カジュアル面談や内定者面談など、いくつか種類がありますが、最も注目すべきは「母集団形成」に役立つという点です。
面談は、面接とは意味や目的が異なります。面接は就転職活動を行なっている方に対して実施しますが、面談は企業に少しでも興味関心がある方を対象に実施するため、数多くの潜在層にリーチできるというメリットがあるのです。
転職潜在層へのアプローチが重要な理由
売り手市場が続く昨今、帝国データバンクの調査によると、2019年10月時点で自社の従業員が不足していると感じている企業は50.1%でした。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 10 月)
2018年10月と比較すると若干の改善が見られますが、未だに過半数の企業が「正社員が不足している」と実感しているのが現状です。
特に中小企業における人手不足は深刻な問題です。
中小企業基盤整備機構の調査によると、人手不足を実感している企業は7割に上り、帝国データバンクの調査よりも割合が多い状態となっています。
出典元『独立行政法人 中小企業基盤整備機構』中小企業アンケート調査報告「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」
その理由として最も多く挙げられている理由が「人材の採用が困難」であることです。採用ができないために人手不足に陥っている現状が、調査結果から裏付けされます。
出典元『独立行政法人 中小企業基盤整備機構』中小企業アンケート調査報告「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」
中小企業庁の調査によると、中小企業から大企業に転職する人材の割合が増加しています。中小企業で働いて転職活動をしたとしても、大企業に人材が流れることで、中小企業間の人材移動数が減少しています。
中小企業から大企業に転職する理由として「雇用の場として安定性があるから(倒産するリスクが少ない)」が挙げられています。しかし近年は、大企業であっても上場廃止や企業買収などが発生しており、一方で中小企業であっても倒産するリスクが低い企業は数多くあります。
大企業に比べ、知名度も採用にかけられる金銭的・人的費用も少ない中小企業は、求職者にどのようにして自社を知ってもらえるかが課題として挙げられます。転職活動を始めたタイミングで、大企業に転職先を絞ってしまえば、そこからアプローチをかけたとしても応募してくれる可能性は低いです。
新卒採用はもちろんですが、転職潜在層に対しても積極的にアプローチして、自社を知ってもらう機会を持つことで、母集団形成につとめることが重要なのです。
面談の意味とは?実施する目的と意図について
採用活動における面談の意味とは、潜在層も含めた求職者と企業とが、直接会って会話する機会を持つことです。
お互いの理解を深めることを目的とし、将来的な入社の可能性を探るという意図を持って実施されます。
面談と面接との比較
面談と面接は混同されがちですが、目的や内容は明確に異なります。
面談の目的は「お互いの理解を深めること」です。採用選考に関係なく、自社がどのような事業を手掛けているのか、どのような業務があるのか、どのような人材が働いているのかなどを広く理解してもらうことが大切です。当然のことながら、面談相手が将来どのような働き方をしたいのか、どのようなキャリアプランを描いているのかを企業側も理解することが大切です。
面談の内容としては「自社の魅力を伝えて、相手の特性を把握すること」です。興味を持ってもらうためには、自社の様々な情報を開示しながらわかりやすく伝えることはもちろんながら、面談相手がどのような情報を求めているのか、情報をすり合わせながらコミュニケーションを取ることが大切です。
面接の目的は「応募者を評価すること」です。面接相手がどのような人材なのかを理解・見極めるだけでなく、自社にとって採用すべき人物なのか、採用しないべき人物なのかを評価項目・評価基準で判断を行います。
面接の内容としては「採用要件を満たすかを見極め、選定すること」です。自社の定めた評価項目・評価基準に従って、必要な能力があるのか、自社業務でうまくコミュニケーションが取れるのかなどを、質問や仕草などから見極めていく内容になります。
面談を実施するメリット・デメリットについて
採用活動における面談を実施するメリットは、下記が挙げられます。
- 就転職活動前の潜在層にリーチできるため、優秀な人材を獲得できる
- 相手が気軽に応じやすく、素に近しい状態を見ることができる
- 自社の魅力を伝え、入社の動機付けを行うことができる
採用活動における面談は、下記のようなデメリットも伴います。
- 相手が自社の採用要件とかけ離れた人材である可能性がある
- すぐに面接へ進まないケースも少なくない
- 短期的には、面談実施の成果を測りにくい
面談の種類・プロセス・注意点とは
採用活動における面談は、主に「母集団形成」に有効ですが、それ以外の目的としても実施されることがあります。
面談には「カジュアル面談」「リクルーター面談」「内定者面談」3つの種類があり、必ずしも1対1である必要はありません。
面談のプロセスは、(1)アイスブレイク(2)自己紹介(3)面談に来た理由(4)双方の質問(5)今後の繋がりを確認、の5段階に分けられます。
面談の目的とはあくまで、相手を深く知り、自社に好意を持ってもらうことです。相手を評価しないよう注意し、相手が知りたいことを、積極的にインプットできるよう心がけましょう。
面談の成果は、長期的に計測しよう
面談は、面接への応募よりもハードルが低く、気軽に応じてもらうことができる手段です。就転職活動を始めたばかりの方や、将来的な転職を検討して情報収集を行なっている潜在層にも、幅広くリーチすることができます。
面談を実施した成果(入社)が得られるまで、一定の時間を要することに留意して、上手に活用しましょう。お互いのことをよく知るために行った面談が功を奏して、社外における良いビジネスパートナーになるなどの、多様な関係に発展する可能性があることを忘れてはいけません。