人を成長させるために最も有効な手段は経験
日々の経験から多くを学ぶというのは誰にでも経験のあることだと思います。実際の経験を通じて学びにつなげるという考え方は、人材育成の現場では、経験学習と呼ばれています。
経験から何かを学ぶ上で、より深く学びを得るために大切なプロセスをモデル化した考え方に、組織行動学者であるデービッド・コルブにより提唱された経験学習モデルがあります。
米国で最も注目される、リーダーシップ育成機関である、ロミンガー社が経営幹部であるリーダーシップを上手く発揮できる人へ行った調査によると、役立った情報としての割合は、1割は研修であり、およそ7割が経験だという結果がでています。
出典元『ITmedia ビジネスONLINE』「そんなの意味があるのですか?」と言いたげな新入社員たちへ (1/2)
今回は、研修よりも効果が期待できる人材育成方法と言われる、デービッド・コルブが提唱した経験学習モデルについて紹介します。
経験学習を効率化するサイクル「経験学習モデル」とは
経験学習とは、人が学習する上で経験を有効活用し深く学ぶという考え方で、人材育成においては必要不可欠な考え方と言えます。
人材育成の方法には、研修やトレーニングを始め色々な方法がありますが、本当の意味で能力を高めるための方法の多くは、現場での経験によるものだと言われています。経験学習は、そうした経験に基づく学びのプロセスを理論化し実行すること言えます。
デービッド・コルブが提唱した経験学習モデルでは、人が経験を通じて学ぶためのプロセスとして「経験」「省察」「概念化」「実践」という4つを挙げ学び取るということをモデル化しています。
4つのプロセスを段階的に踏みながら、それをサイクルとして繰り返すことにより、ただ単純に経験を重ねるだけでは得られない学習効果を得て成長していくとされています。各プロセスについて、以下詳しく見ていきましょう。
出典元『ものづくり.com』人的資源マネジメント:経験学習プロセス(その2)
1.経験
経験とはその名の通り具体的な経験を指します。物事を想像や知識だけに頼らず、まずは見て聞いて嗅いで判断することが、経験と言えます。判断で行動し、得た結果を受け入れることで、より多くの「気づき」を得ることができます。
なかでも自分が予測し得ない事態を経験した結果に対する成功や失敗は、今後の大きな成長へと繋がると考えられます。
2.省察
省察では、経験を経た後それを様々な観点から振り返り、考えを巡らせます。
経験から経て知り得たことを、成功や失敗の理由や背景について、より深く掘り下げて内面へと落とし込みます。
3.概念化
概念化では、「経験」「省察」で得た一連の出来事を、他の場面でも応用できるように、概念化します。
自分だけが理解していれば良いということではなく、将来他の人にも伝え教訓として残せるようにすることが概念化と言えます。
4.実践
実践とは、概念化された考え方を、実際に試して見ることです。
概念化の時点では、まだ仮説の状態であり、全ての似たような事象に対応しうるものかどうかというのは分かりません。実践を通じて仮説を検証することで、今後の改善策や次へのステップが見えて来ます。
経験学習サイクルを身に付け日々の経験を成長に繋げよう!
経験学習モデルは、ひとつの経験からより多くのことを深く学ぶために作られたものです。経験学習モデルを取り入れることにより、何気なく経験しているだけでは、気が付かないことにまで、気づき学び取ることができるようになります。経験学習モデルの一つ一つのサイクルの意味や目的をしっかりと理解することが大切です。
項目によっては社員個人個人に得手不得手がある場合もありますので、上手くサイクルが回せていない場合には、自らサイクルを回せるようになるまで上司や先輩からのサポートを入れてあげるといいでしょう。