厚生労働省が設定するブラック企業とは?実例から自社を見つめ直す

ブラック企業の定義は様々ある

さまざまなところで問題になっているブラック企業。厚生労働省はブラック企業について定義はしていませんが、労働基準関連法令に違反した企業を公開しており、公開された企業は世間からブラック企業としてみなされる傾向が強いとされています。

日本労働組合総連合会の労働者を対象にした調査では「勤務先がブラック企業だと思う」と回答した労働者は26.9%、世代別では若年層ほど「勤務先がブラック企業だと思う」割合が多くなり、20代では32.7%もの労働者が自社がブラック企業だと感じる傾向があります。

勤務先はブラック企業だと思うか
出典元『日本労働組合総連合会』ブラック企業に関する調査

人材サービス企業ディスコの調査では、「ブラック企業」を気にした就職活動性は9割にもなり、採用ブランディングにも直結する問題になっています。

企業選びの際の意識
出典元『株式会社DISCO』就活生に聞いた「ブラック企業/ホワイト企業」への考え

今回は、厚生労働省が公開しているリストから、どのような企業がブラック企業とみなされてしまうのかについて説明します。

厚生労働省が注視している「ブラック企業」と設定基準

社会全体としてブラック企業に対する認知が高まり、存在が問題視されています。厚生労働省は2017年5月以降、労働基準関係法令違反の疑いで送検された企業リストの一覧をホームページ上で公表しています。企業リストは企業名と共に違反内容などを都道府県別に掲載されており、毎月更新しかつ公表から1年間掲載されています。

参考URL『厚生労働省』労働基準関係法令違反に係る公表事案

厚労省が企業名を公表し始めた背景は、それまでは対象企業に刑事罰(罰金等)を課していたのですが、具体的に一般公開し、より懲罰性を高めることを目的にしたことが挙げられます。

リストで企業名を公開されると、労働基準関係法令が遵守できていない企業と認知されます。つまり「労働者の労働関係法益を守らないブラック企業だ」と認知されます。一度こういった認知がされてしまうと採用活動はもちろん、離職率が高まる、企業の競争力やブランディングの低下につながります。その結果、企業が成長していくことが困難となります。

こういったネガティブな要素があることを広く認知させることで、抑止力の一つとなることが期待されているのです。

労働基準関連法案違反に係る公表事案に掲載される条件や内容について

労働基準関連法案違反に係る公表事案に掲載される条件として、以下2つの事案について、厚生労働省および都道府県労働局のホームページに掲載されます。

  1. 労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案
  2. 平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」に基づき、都道府県労働局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案

掲載期間については、公表日から概ね1年間とされています。公表日から1年が経過し最初に到来する月末にホームページから削除されます。ただし、公表日から概ね1年以内であっても、以下の場合は、速やかにホームページから削除されます。

  1. 送検事案は、ホームページに掲載を続ける必要性がなくなったと認められる場合
  2. 局長指導事案は、是正および改善が確認された場合

労働基準関係法令違反が認められた場合、まずは労働基準監督官によって是正勧告や指導票の交付が実行されます。それでも企業の是正が見られない場合に、送検されるという流れが多いと言われています。

※被害者等が告訴・告発した場合や重大な事案であったり、いわゆる労災隠しなど違反の悪質さが認められる事案の場合は、是正するかどうかは不問で労働基準監督官による送検がなされることもあります。

厚生労働省実施の「労働基準関係」の法令に学ぶ働き方の健全性

ブラック企業には様々な定義がありますが、厚生労働省が公開する「労働基準関連法案違反に係る公表事案」は明らかに違法である企業を対象としたリストアップが行われており、あまり発生しないであろう深刻な問題から、上司などの労働者の知識がなかったなどの不注意、会社の仕組みとして常態化してしまっているものなど、様々な内容で確認されています。

特に不注意や軽微なもの、常態化して当たり前だと思っていることに対しては、適宜自社が違反していないか、見直すことが大切です。

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