コンフリクトを改善や成長の一歩に繋げるコンフリクトマネジメント!
年齢や性別はもちろん、勤務形態や雇用形態などの働き方が多様化する中、企業におけるビジネス課題の解決においても、高度化・複雑化している現状があります。会社全体として生産性を高めて最高のパフォーマンスを出すためには、企業内におけるチームや部門間の連携が不可欠です。
HRprが行った「社内コミュニケーションに関する調査」によると、「社内のコミュニケーションに課題があると思う」と答えた企業が74%およそ8割に達しており、問題がないと思っているのは、およそ10%であることが分かります。
出典元『HR Pro』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
中でも部門間・事業間のコミュニケーションに課題を感じている企業が多く、現実問題として多くの企業が頭を悩ませている課題と言えます。
出典元『HR Pro』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
部門間や事業所間のコミュニケーションがうまく行かない理由として最初に考えられるのは「物理的な距離」が考えられます。以前よりメールなどの電子的なコミュニケーション手段は存在し、近年は新型コロナウイルスの影響でテレワーク導入も促進され、様々なオンラインコミュニケーションの手段が提供されています。物理的な制約がなくなればコミュニケーションが円滑になるかと言われても、そうではないと考える人のほうが多いと思います。
富士ゼロックス総合教育研究所が調査した人材開発白書では、組織が抱える壁の要因として「相互の方針のズレ」や「心理的なわだかまり」が挙げられています。円滑なコミュニケーションを行うためには、オンラインなどのコミュニケーション手段を提供するだけでなく、相手の立場や考え方を理解したコミュニケーションを実施することが求められます。
日本では、組織やチームにおいてコンフリクトは起こさないことが何よりも大切だと今まで考えられて来ていましたが、近年こうした対立を避ける組織においては成長が停滞しがちと言われるようになりました。コンフリクト=悪ではなく、コンフリクトをきっかけに相互理解を深め、日々思い合っていることを出すことが、組織においてはとても重要だという考えにシフトしてきています。
コンフリクトは起こすだけでは意味がありません、しっかりとマネジメントを行い、協調的な解決へと繋げることが重要です。そこで注目されている手法としてコンフリクトマネジメントが挙げられます。
コンフリクトマネジメントとは、組織やチーム間における衝突や意見の相違などを解決し円滑なコミュニケーションを実現し、企業の成長に役立つ取り組みの事を指します。ここではコンフリクトマネジメントを実際に活用した事例について紹介します。
今すぐ使えるコンフリクトマネジメント事例を紹介
コンフリクトマネジメントを活用してみたいと思っても、どんなコンフリクトに対して、どのように活用したら良いのか分からない方も多いと思います。コンフリクトマネジメントを実際に活用した事例について紹介します。自社の問題と比較しながら導入の参考にしてみてください。
システム開発会社でのコンフリクト・マネジメント事例
社内で開発から運用までを手掛けるシステム会社の事例を紹介します。
A社では開発部門で完成したシステムをマニュアル作成し、運用部門へとバトンタッチされます。運用部門ではそれを円滑に滞りなく実行するというミッションがあります。運用部門である時から運用上でのオペーレーション障害が多発し始め、営業部や開発部からクレームが起こります。
コンフリクトの内容としては、開発部門は「マニュアル通りに運用してほしい」という意見に対し、運用部門では「次から次へと新たなシステムが引き継がれオペレーション過多で対応できない」という対立です。このままコンフリクトマネジメントを行わず、クレームを受けた運用部門が例えば「服従」的な対応をした場合、運用管理部門の対応としては「人員の増員」「残業対応」がありますが、結果として運用管理部門でのコストがかかり、評価が下がってしまいどちらかが損をするという結果になってしまいます。お互いがWin-Winの結果になるためには、コンフリクトマネジメントを行う必要があります。
具体的には、双方の意見の洗い出しを行うことで「オペレーション内容の確認」「マニュアルの老朽化」「自動化可能なオペレーションを手動で行っている」という原因が表面化しました。結果根本的な原因の解決へ向けて「協調」的な話し合いのもと、お互いが納得の行く形で解決をすることができました。
エクソンモービルでのコンフリクト・マネジメント事例
エクソンモービルは世界最大の石油・ガス会社です。エクソンモービルが抱えるコンフリクトには、大規模な多国籍企業による意思疎通の難しさや末端社員にまで組織の思いが行き届かない事による誤解などによるものが挙げられています。
エクソンモービルではコンフリクトの質について着目し、相互理解や信頼のない非生産的なコンフリクトは起こさないことに力を入れて取り組みました。具体的には、高いパフォーマンスを生み出す条件として、4つの観点をまとめて、社員一人ひとりに理解をさせました。組織やチーム内の一人ひとりの個性を尊重しながら、どうしたら全員のパフォーマンスを挙げられるのかを、個々人が考え取り組むことにより全体のモチベーションアップにつながりました。
コンフリクトを根本的に捉えて、全体で意識し改善に取り組むマネジメントをする。これも一つのコンフリクトマネジメントを個々人が良く理解した上での活用事例だと言えます。
交渉論「レモネード・エピソード」の事例
最悪の結果を最善の結果へと変化させる交渉論の事例を紹介します。
「レモンが10個欲しい私はお店に買いに出かけたところ、お店にはちょうど10個しかレモンがありませんでした。そこへもう1人レモンが10個欲しい人が現れ、レモンの取り合いが始まりました。2人は傷だらけになり、レモンはぐちゃぐちゃに割れ、結局2人ともレモンは手にはいりませんでした。」この状態はコンフリクトマネジメントで言えば最悪の結果といえます。
コンフリクトマネジメントで論点を整理しコンフリクトの原因を探った場合、お互いの本質的な問題がでてきます。ひとりは「しぼりたてのレモンジュースが飲みたい」もうひとりは「手作りマーマレードを無添加で作りたい」です。お互いの問題点を理解した上で問題の再焦点化を行うことで、協調的な話し合いに結びつけることができます。
この場合の問題の再焦点化としては「どうしたらそれぞれが新鮮なジュースとマーマレードを作るるためにレモンを確保するにはどうしたらよいか?」です。結果、レモンの中身はジュースを作る人へ、皮はマーマレードを作る人へ分けるということが協調的な解決となります。
日本企業におけるコンフリクト・マネジメント活用事例
日本のメーカーにおける活用事例を紹介します。
B社では上司や部下、同僚間におけるコミュニケーション不足や相互理解の不足により今後起こり得るコンフリクトに備えて、管理職に対して、コンフリクトマネジメント研修を行いました。コンフリクトマネジメントという認識が無いままに管理職になってしまえば、組織やチーム内で起きるコンフリクトに対処することができずに、関係性は悪化し生産性やモチベーションも下がってしまうことが懸念されます。
研修を通じて、価値観や立場が違う人の考え方を理解し、強調して解決するための方法やマインド、スキルを身につけることで、事前のコンフリクトマネジメントを行うことが可能です。
日本企業はコンフリクトを好まない傾向がありますが、こうした研修を積極的に取り入れることにより、コンフリクトに対する意識もポジティブに変えて行くことができる良い事例です。
コンフリクトを起こすことが成長へと繋がるような体制作りが重要
コンフリクト、対立や衝突は多くの問題を生じさせるが、コンフリクトマネジメントを活用することで、組織やチームが成長するきっかけにもなり得ます。
コンフリクトが生まれることは、組織やチームが成長することと捉え、避けるのではなくむしろ積極的に向き合い、協調的に解決することが大切です。そのためにも事前の知識やスキルを持ちコンフリクトが起きる前に上手くマネジメントすることが重要でだと言えます。