女性の活躍推進における状況や課題について
優秀な人材の確保は多くの企業にとって重要な問題となっています。売り手市場化が進む中、新卒・中途人材問わず優秀な人材の採用は難しくなっており、現在政府の推進する働き方改革では、これまで労働力としての価値を見出されていなかった、外国人や女性、シニア世代を活用することでろ労働力不足を補っていくという指針が示されています。
厚生労働省の調査では、2013年以降は労働力人口は減少する見込みであり、人材の採用はこの先更に困難になっていくと予想されます。
多種多様な人材を活用する働き方改革が進められ、外国人人材の採用や女性の活躍推進の法律改正や助成金など、様々な制度化を行いながら前へ進めています。女性の活躍推進を阻害する要因として「育児環境の不整備」や「職場男性による女性の不理解」などが上位に挙げられており、自社の環境や制度を整備することが必要不可欠となっています。
出典元『政治山』女性活躍の阻害要因は「育児環境の不整備」と「職場男性の不理解」、「議員の不理解」も―大塚製薬合同調査より
今回は女性の活躍推進を阻害する原因でもあるキャリアロスについて説明します。
キャリアロスとは?3つのロスを理解しよう
キャリアロスとは、労働者が休職することで仕事のスキルややりがい、モチベーションが低下して今後のキャリアに支障が出ることをいいます。キャリアロス自体は男女関係なしに使われる言葉ですが、女性が出産を機に仕事から離れて復帰し、仕事と育児の両立をすすめていく際にキャリアロスが多く発生しています。
キャリアロスの中では、3つのロスが生じています。育児休業期間中、休業前の所得より時短勤務によって減ってしまう「所得ロス」。育児休業から復帰した後、査定や昇進に悪影響が出るという「キャリアロス」。業務知識が進化していく中で取り残されてしまう「業務知識ロス」です。
キャリアロスが企業にもたらす問題点や影響について
キャリアロスが企業に与える影響は、優秀な社員が仕事に全力で邁進できないことです。
育児との両立で時短勤務を選択する女性社員は多いですが、そうなると所得ロス、キャリアロスがより大きくなってしまいモチベーション低下に繋がってしまいます。キャリアは仕事の難易度や初めての経験によって形成されるものですが、子育てとの両立のために補助的な仕事しか与えられないとスキルアップに繋がらず、キャリアにマイナスの影響が生じてしまいます。
本人の仕事へのモチベーションややりがいが失われてしまうと、本来の能力が発揮できないだけでなく退職も考えてしまう可能性があります。本人がいくら優秀で意欲的でも、会社としては仕事と子育ての両立への配慮から、短時間勤務を使って復帰した女性社員にチャレンジングな仕事は任せにくいといったケースも発生しています。そうなると余計にキャリアロスが広がり、企業にも社員にとってもマイナスになってしまうでしょう。
キャリアロスが従業員にもたらす問題点や影響について
社員側におけるキャリアロスの影響は、育児と仕事の両立が難しい印象が他の社員に伝わることで、長く働くことができないと感じ退社を促してしまう可能性があることです。子育てと仕事の両立が難しいと感じることで従業員側から管理職を辞退したり、降格を望んだりするケースも発生するでしょう。せっかく本人のキャリアやスキルアップが止まってしまう恐れがあります。
会社側が意志や状況を理解できない場合、モチベーションが下がって退職を考えてしまう恐れもあります。子どもがいては仕事をすることができないと諦め、自分自身でキャリアをストップさせてしまうケースも多く、女性活躍推進を行う上でキャリアロスが与える影響は大きいです。
キャリアロスを防ぐための施策例について
コミュニケーションをきちんととる
職場に復帰する社員ときちんと対話することが大切です。一番有効なのはコミュニケーションをきちんととることです。会社や上司は良かれと思って、復帰後の仕事の量を減らしたり、時短勤務にするケースも多く、それがキャリアロスを導いていることを従業員側も直接伝えることが重要となります。状況を開示することで、他の従業員の理解や協力を得られる可能性が高まります。
会社や上司のコミュニケーションでは、社員1人1人に向き合っていく必要があります。定期的な面談などで「現在の仕事の状況」「家庭や子育て環境の状況」をヒアリングした後、「今何が仕事の障壁になっているか」「今後どのようなキャリアを築いていきたいか」を聞くようにしましょう。密なコミュニケーションを取ることで、仕事と家庭に対してどうしていきたいかその人の価値観を知りその上で仕事を任せることができるのです。
リモートワークや在宅勤務の導入
リモートワークや在宅勤務の導入など家庭と仕事の両立をサポートするツールや制度を拡充しましょう。子どもがいると熱を出したり、保育園や学校の都合で予定外の休みを取らなければならないことが多くあります。リモートワークや在宅勤務がしやすくなるよう環境を整うことができれば、子どもの予定で休まなければいけない、迷惑をかけてしまうという心理的負担を軽減することができます。早く帰宅し、その後は在宅で作業するなどのことができれば時短勤務であっても責任ある仕事を任せることもでき、仕事と子育ての両立も可能になるでしょう。
リモートワークや在宅勤務の導入は、育児だけでなく介護なども含めて従業員のプライベートの事情に合わせた働き方が可能になり柔軟な働き方に繋がります。会社全体として無駄な会議や長時間労働をなくす風土ができれば、子育てに限らない時短勤務者が早く帰宅することに肩身の狭い思いをすることもなくなるでしょう。多様な働き方を認めることが大切になってきます。
評価制度、キャリアアップの考え方の刷新
最後に評価制度、キャリアアップの考え方の刷新です。時短勤務になると昇進できないといった暗黙のルールや慣習は撤廃しましょう。滅私奉公の精神はまだ会社に根強く残っており、長時間労働=評価に繋がっている状況です。
長時間労働できる女性のみ、キャリア組のレールにのれ、そうでない人キャリアロスとなる。長時間労働が評価の対象になっている現状は変えていかないといけないでしょう。
どういう働き方をしたいのか1人1人の希望を確認することが大切
キャリアロスとは、労働者が育児休暇や休職などで職場を離れることで、復帰後のキャリアに支障が出る現象のことであり、女性の活躍推進が進まない理由の一つだと考えられています。
キャリアロスを防ぐためには、仕事と家庭の両立を支援することが必要不可欠であるだけでなく、復帰後でもキャリアアップをしたい人、昇進せずに育児を中心にしながら働きたいなど、従業員が望む働き方やキャリアプランを会社が用意することも必要でしょう。