ワークライフバランスが注目されている現状
求職者から企業のワークライフバランスの実現について注目されています。
株式会社マイナビの調査から、20年卒の新卒学生が「行きたくない会社」として挙げた中で「ノルマのきつそうな会社」「転勤の多い会社」「残業が多い会社」などの比率が増加しています。横ばいの「休日・休暇がとれない(少ない)会社」も考慮すると、新卒学生においてもライフワークバランスが重視されていることがわかります。
第二新卒・既卒の就職活動でもワークライフバランスが重視されています。UZUZの調査によると、再就職する会社に求めるものとして「良好な人間関係」と「ワークライフバランス」がともに1位として挙げられています。
出典元『UZUZ』第二新卒・既卒とも就職活動で重視するは「ワークライフバランス」「良好な人間関係」。会社の「将来性」や「安定性」を求めるのは少数派
ワークライフバランスに対する関心が年々高まっています。多くの企業で人手不足が問題になっている中で、企業間の人材獲得競争を勝ち抜くためには、若い人材が重視しているワークライフバランスの推進が重要でしょう。ワークライフバランスの推進は働き方改革の一環として政府が助成金制度などの支援を行っており、自社制度の設計や運用に役立てられます。
今回の記事では両立支援等助成金の出生時両立支援コースについて詳しくご紹介します。
出生時両立支援コースの概要や目的とは
出生時両立支援コースとは、男性社員が育児休業や育児目的の休暇を取りやすい職場風土作りに取り組み、男性社員に育児休業や育児目的の休暇を取得させた事業主に対して助成金が支給されます。助成金の対象は男性で、男性の育児休業取得推進を目的にしています。
出生時両立支援コースの受給要件
受給要件としてまず男性社員の育休取得については下記となります。
- 男性が育児休業を取得しやすい職場づくりのため、育休奨励や研修など男性社員が育休を取得するための取組を行うこと
- 男性が子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得すること
育児目的休暇の導入・取得の受給要件は下記です。
- 子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために取得できる休暇制度を導入すること
- 男性が育児目的休暇を取得しやすい職場づくりのための取り組みを行うこと
- 新たに導入した育児目的休暇制度を、男性が子の出生前6週間から出生後8週間以内に合計して8日以上(中小企業は5日以上)取得すること
出生時両立支援コースの取り組みの具体例
出生時両立支援コースの取り組みはどのように行うのでしょうか。
男性社員を対象にした育休制度の利用を促進する資料で周知していきましょう。男性社員は育休制度についてあまり詳しい情報を知りません。そもそも取得しても問題ないことや、取得するとどうなるのかきちんと広報します。
管理職や男性社員への育児休業取得の勧奨も行いましょう。管理職が男性の育児休業について否定的であればなかなか取得するのは難しいでしょう。上司も育児休業を認め、推奨していることをきちんと伝えることが大切です。
男性社員の育児休業取得についての管理職向けの研修の実施も行います。正確な情報を理解し、対象の男性社員だけでなく他の社員含め認識を共通化することでトラブルの回避と取得推進に繋がります。
出生時両立支援コースの支給金額について
出生時両立支援コースではいくら支給金額がもらえるのでしょうか。もらえる支給額は事業主の規模や育休期間によって異なります。育児休暇の取得においては下記が支給額です。
事業主は男性社員に対し出生後8週間以内に開始する連続する育児休業5日以上(中小企業以外は14日以上)を取得させることで助成されます。2人目では5日だけではなく、14日以上、1か月以上と育休の期間によって助成される金額も異なります。
育児目的休暇は、下記の金額が助成されます。育児目的休暇は育児目的の休暇制度を導入し、あわせて育児休業を取得しやすい職場風土作りの取り組みを実施した場合にも以下の助成金が支給されます。
休暇の日数は出生後ではなく、子の出生前6週間~出生後8週間の内で合計して5日以上(中小企業以外の場合は8日以上)となります。
また生産性要件を満たすと支給額が増額され<>の金額が助成されます。生産性要件の条件は、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性がその3年前に比べて6%以上伸びていること。またはその3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていることが求められます。
出生時両立支援コースの申請方法について
では申請や手続きについてご紹介します。
助成金の申請期限
休暇の取得日数が合計8日(中小企業は5日)の制度利用の最終日の翌日から2ヶ月以内となります。
助成金の申請書類
提出書類は以下の書類です。
- 「両立支援等助成金(出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業))支給申 請書」(【出】様式第1号①②)の原本及び支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)の原本
- 労働協約または就業規則及び関連する労使協定(写)
- 男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土作りの取組の内容を証明する書類及び取組を行った日付が分かる書類(写)
- 対象育児休業取得者の育児休業申出書(育児休業の期間が変更されている場合は育児休業期間変更申出書)(写)
- 対象育児休業取得者の育児休業前1か月分及び育児休業期間中の就労実績が確認できる書類(写)
- 対象育児休業取得者の雇用契約期間の有無、育児休業期間の所定労働日が確認できる書類(写)
- 対象育児休業取得者に育児休業に係る子がいることを確認できる書類及び当該子の出生日が確認できる書類(写)
- 公表及び周知が義務付けられる前に一般事業主行動計画が策定されている事業主 については、自社のホームページの画面を印刷した書類等一般事業主行動計画の公表及び労働者への周知を行っていることを明らかにする書類
申請書類の提出先
事業所の本社など人事・労務機能を有する事業所の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・金東部(室)宛です。
男性社員の育休を考えているのであれば是非活用を
出生時両立支援コースとはワークライフバランスの推進を目的とした両立支援等助成金のコースのひとつです。両立支援等助成金には、出生時両立支援コース以外にもさまざまなコースがあり、受給要件さえ満たせば、ワークライフバランスを推進するための制度の導入にかかる費用の一部を政府に支給してもらえます。
ワークライフバランスの推進に取り組む上で、費用が課題になっているのであれば、両立支援等助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。