アサーションのタイプ・理想・心構えを理解する
「コミュニケーション能力が高い人を採用したい」特に若手人材の採用ではそう考える企業が多くあります。
経団連の調査をみると、特に新卒採用の現場では2000年以降ずっとコミュニケーション能力は他の項目を大きく離して圧倒的に重視されていることがわかります。
出典元『一般社団法人 日本経済団体連合会』2017年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
企業の採用担当者のみならず、就活生や転職希望者にもよく知られています。面接対策として「コミュニケーションスキルのアピール方法」が話題になることも多いのですが、「ビジネスとプライベートでのコミュニケーションは異なる」というのが本質です。
採用担当や社員の育成担当の立場にある方は、だからこそビジネスで求められるコミュニケーションスキルの見極めや育成を行うことが必要となります。
「コミュニケーション」といっても、その解釈や方法は様々にあります。そこでまずは抽象性の高いこの概念を細分化して具体的なスキルに落とし込んで理解することが大切です。
傾聴・コーチングなどの詳細スキルに並んで重要なのが「アサーション」です。適切な自己主張を行うために大切なアサーションスキルは、ドラえもんのキャラクターになぞらえた3つの分類が理解の鍵となっています。
今回は、ドラえもんのキャラクターへの例えを用いながら、アサーションのタイプや心構えについて紹介します。
アサーションとはどんなスキルか
コミュニケーションは、「相手の意見を聞く」「相手に意見を伝える」「双方の意見を検討したのち具体的なアクションを起こす」という3つのステップが基本です。
3つのステップにおける「相手に意見を伝える」というフェーズで重要になるのが「アサーション」だと考えられます。「傾聴」を前提としながら適切な自己主張ができるスキルのことを指します。
自己主張は大切です。しかし、注意しなければならないのが独りよがりにならないことです。ビジネスにおける議論を進展させるために大切なのは「相手の考えを尊重しながら、新たな発想を見つけ出すこと」です。他者とのコラボレーションを大切にした立ち居振る舞いをすることで、コミュニケーションがあるからこそのアイデアの発見に繋がります。
採用選考では、とにかく「自分の意見」の発言を促すことでチェックできます。他者の意見を考慮した回答ができているか、自分の意見にどれほど自信を持てているか、そうしたところが見極めのポイントになります。
ドラえもんのキャラでわかる!アサーションの3つのタイプ
自己主張の技術とも言えるアサーションには以下の3つのタイプがあります。
アサーションの3つのタイプは、ドラえもんのキャラクターで例えられることが多いですので、それぞれのキャラクターを想像しながら、どんな特徴がありどんな改善点があるかを考えてみましょう。
1.アグレッシブ(攻撃型/ジャイアンタイプ)
思ったことを率直に伝えるスタイルです。わかりやすい言葉で、かつ大きな声などの強い要求として表現する伝え方です。
ドラえもんの「ジャイアン」に例えられることが多く、自分の思ったことをはっきり主張し、他者を力強く牽引するリーダーシップが強みです。一方で、押し付けがましく、他者に抑圧的な態度をとる傾向があります。
気をつけたいのは他者への配慮がおざなりになりやすいことだと言えます。最悪の場合、組織の人間関係をギスギスさせる危険性があります。
2.ノン・アサーティブ(非主張型/のび太タイプ)
アグレッシブとは真逆に「主張しない」というスタイルです。自分の意見の優先順位を下げ、他者の意見を受け入れることで物事を前に進めます。しかし、相手任せになりすぎる傾向があります。
ドラえもんの「のび太」に当たるのがノン・アサーティブタイプです。言い訳が多く、他責思考であり、人の前に立てるような人材ではありません。しかし、弱い立場の人のことを理解したり、共感することができる穏やかさを持ち合わせています。
3.アサーティブ(中立型/しずかちゃんタイプ)
アグレッシブとノン・アサーティブのバランス型のスタイルです。いつ主張し、いつ自分を抑えて他者を優先するかという判断を状況に応じて行います。
嫌われる要素が実質存在しないため、ドラえもんの「しずかちゃん」に該当するようなタイプです。主張するところと引くところを理解し、かつ場を俯瞰的にみながら振る舞いを調整でき、アサーションにおける理想型だと言えるでしょう。
アサーションで大切な4つの心構え
アサーションを「単なる自己主張」と捉えると、いわゆる「ジャイアンタイプ」に陥ってしまうため、アサーションを向上させるためには字面からイメージされること以上に、どのような考え方を柱に成り立つものかを理解する必要があります。
アサーションの理想は、3つのタイプでは「しずかちゃん」に該当するものです。自分と相手、そして場全体の動きを読みながら、全員にとっての利害を考慮した結論に達することを目的としています。それを踏まえ、アサーションには以下の4つの柱があると考えられています。
- 率直に意見や気持ちを伝える
- 誠実さと感謝の気持ちを忘れない
- 場にいる全員が対等であると考える
- 相手への要求だけでなく、自分も責任を負う
自分だけでなく相手も尊重しながらゴールを目指すスタイルがアサーションには不可欠であるのです。
アサーションで大切なのは「バランス」と「自己分析」
コミュニケーションスキルの1つであるアサーションは、自分も他人も大切にする自己表現のことです。ドラえもんの「しずかちゃん」にあたる「アサーティブ」という状態が最も理想だと考えられていて、主張する時と引く時の見極めが重要です。
日本人の空気を読む傾向から「ノンアサーティブ(非主張的)」である人材が多いと考えられています。もちろん再現性のあるスキルですので、意識して改善することで理想となるアサーティブタイプに教育することも可能であす。
教育研修プログラムに組み込むならば、まずは自社の従業員の現状を知り、アグレッシブ(攻撃的)なのかノンアサーティブ(非主張的)なのかを理解することから初めてみましょう。