職場環境の改善には現状の課題をしっかり数値化する仕組みが必要
厚生労働省の調査によると、脳・心臓疾患の労災請求件数や精神障害の労災請求件数は年々増加傾向にあり、仕事が原因で労働者の健康に様々な害を及ぼしていることが分かります。
2015年12月から義務化が始まったストレスチェック制度などでも、企業が労働者の健康を考慮することが求められているだけでなく、厚生労働省による時間外労働等改善助成金や産業保健関係助成金など、様々な助成金を設けることで企業の職場環境改善への取り組みを支援しています。
職場環境には、音や明るさなどの物理的な要素だけでなく、人間関係などの目に見えない抽象的な要素も含まれ、現状の課題を把握するためには、抽象的な定性情報についてもしっかりと数値化できる仕組みづくりが大切です。
今回はアンケートなどで定性情報を定量情報に置き換える方法について説明します。
職場環境に影響を与える要素のうち、定性情報とは
職場環境は広くとらえられており、「物理化学的環境」(例:騒音、照度、温度、湿度)、「人間工学的側面」(例:作業スペース、作業姿勢)、「人間関係」、「仕事の負荷」(質、量)、「仕事の自由度・裁量権」などが含まれます。
自社の課題を明らかにするだけでなく、改善にも使える調査方法が望ましいでしょう。職場環境を改善するにあたり、定量情報になるのは次の5項目などが挙げられます。
- 作業計画へ従業員の参加、情報共有の体制
・作業日程や進め方、作業量について、従業員の声が活かされているか
・情報交換の手順は整っているか - 勤務時間・休暇
・深夜・早朝の不規則勤務による過重負担はないか
・休暇は取りやすいか
・生活スタイルに合わせた勤務が可能か - 作業場環境
・職場はきれいか
・どこに何があるか分かりやすいレイアウトで気持ちよく働くことができるか - 職場内の相互支援
・上司や同僚は相談しやすいか
・相談だけでなく、具体的な支援は受けられるか - 安心できる職場
・何か困ったことがあった時や不調に陥った際、SOSを発せられる職場であるか
・相談窓口はあるか
職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックシート)
職場環境改善のためのヒント集は、職場において、従業員の参加のもとにストレスを減らし、心の健康を増進するための職場環境等の改善方法などの訂正してを提案するために新しく作成されたツールです。
職場環境を改善するためのアイデアが詰まったアンケートであり、”職場のをここを変えたら、働きやすい環境になりましたよ”といった「改善事例」を全国から集め、チェックリストとしてまとめたものになります。
参考URL『厚生労働省』職場環境改善のためのヒント集 メンタルヘルスアクションチェックリスト
メンタルヘルス改善意識調査表(MIRROR)
MIRRORは具体的な改善活動の目標設定と計画策定を促すためのアンケートです。こんな職場だったらよいな、という「職場の望ましい状態」が45項目列記されている。どちらも、このチェック項目が全て満たされていれば、働きやすい職場ということになります。
参考URL『職場のメンタルヘルス対策ガイド』職場環境改善の支援ツール
測定が難しい情報はアンケート調査で分析しよう
職場環境に影響を与える人間関係などの定性情報は、音や光に比べると測定が難しい要素ですが、アンケート調査を行うことで、改善すべき自社の課題を定量情報として取得できます。
回答を誘導する形になったり、分析しづらい形でのアンケートでは、改善に有効活用しづらくなるため、アンケートの質問項目の設計やアンケート依頼の仕方などにも十分に注意する必要があるでしょう。