仕事にストレスを感じている人は6割もいる
厚生労働省の調査によると、脳・心臓疾患の労災請求件数や精神障害の労災請求件数は年々増加傾向にあり、仕事が原因で労働者の健康に様々な害を及ぼしていることが分かります。
2015年12月から義務化が始まったストレスチェック制度などでも、企業が労働者の健康を考慮することが求められているだけでなく、厚生労働省による時間外労働等改善助成金や産業保健関係助成金など、様々な助成金を設けることで企業の職場環境改善への取り組みを支援しています。
労働安全衛生調査では、仕事で強いストレスがあると考えている人は6割弱存在し、仕事の量や質、対人関係など職場環境に起因するストレスも多く挙げられているようです。
出典元『厚生労働省』平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況
職場環境を改善するためには、具体的にどんな要素が職場環境に影響しているのかを知り、自社の現状を把握する必要があるため、今回は職場環境の整備を行う上で、どんな要素が改善項目として挙げられるのかについて説明します。
職場環境の構成要素とは?
職場環境といっても、温度や湿度などの環境や、人間関係などの環境など、様々な要素があります。自社の職場環境における課題を見つけるためには、職場環境の要素を細分化し、一つ一つ分析していくことが大切です。
- 物理化学的環境
- 人間工学的側面
- 人間関係
- 仕事の負荷
- 仕事の責任
1.物理化学的環境における職場環境の構成要素について
温熱環境
作業をする上で快適な空調設備が整っていることです。
エアコンなどの空調は入っているか、温度設定は適切であるかなどが挙げられます。
音環境
作業の集中を妨害するような、騒音に対する防音対応できていることです。
工場を持つ会社であれば、事務所は防音で快適に作業できるかなどが挙げられます。
有害物質対応
有害物質を使う工場であれば、健康を障害するおそれのある,粉じん, 化学物質など,人体への有害環境源を隔離することです。
適切な防護対策を取れていることが挙げられます。
受動喫煙の防止
喫煙者と非喫煙者が分離されているか、喫煙スペースが分離されているかになります。
職場を完全に禁煙化し、喫煙者には喫煙ルームを用意するなどが挙げられます。
衛生設備
快適で衛生的なトイレや更衣室などを確保することです。
休養設備
ゆっくりとくつろげる休憩場所や自動販売機などの飲料設備があるかになります。
食事場所や福利厚生施設を備えることが挙げられます。
緊急時における対応
災害発生時や火災などの緊急時に適切に対応できるかが挙げられます。
緊急用出口の確保や周知、防災設備の改善や避難用通路の確保を行うことが挙げられます。
2.人間工学的側面における職場環境の構成要素について
物品と資材の取り扱い方法を改善する
物品と資材、書類などの保管、運搬方法を工夫して負担を軽減することです。
取り出しやすい保管場所、台車の利用、不要物の除去や整理整頓などが挙げられます。
個人ごとの作業
仕事しやすい場所を確保することです。
各自の作業場のレイアウト、姿勢や操作方法を改善することや、作業台の配置、肘の高さでの作業、パソコン操作方法の改善などが挙げられます。
作業の指示や表示内容をわかりやすくする
作業のための指示内容や情報が、作業中にいつでも容易に入手できて確認できるようにすることです。
見やすい指示書、表示・ラベルの色分け、標識の活用などが挙げられます。
反復・過密・単調作業を改善する
心身に大きな負担となる反復作業や過密作業、単調作業がないかを点検して、適正な負担となるよう改善することが挙げられます。
作業ミス防止策を多面に講じる
作業者が安心して作業ができるように、作業ミスや事故を防ぎ、もし起こしても重大な結果に至らないように対策をすることです。
作業手順の標準化、マニュアルの作成、チェック方法の見直し、安全装置、警報などが挙げられます。作業に時間がかかるのであれば、どのような作業方法をしているか明確化し、分担したり、作業方法を変えるなど対処が必要になります。
3.人間関係における職場環境の構成要素について
上司に相談しやすい環境を整備する
従業員が必要なときに上司や責任者に問題点を報告し、また相談しやすいように普段から職場環境を整えておくようにすることです。
上司に相談する機会を確保する、サブリーダーを設置する、相談しやすいよう職場レイアウトを工夫するなどが挙げられます。
同僚で相談でき、コミュニケーションが取りやすい環境を整備する。
同僚間でさまざまな問題点を報告しあい、また相談しあえるようにすることです。
作業グループ単位で定期的な会合を持つ、日報やメーリングリストを活用するなどが挙げられます。
チームワークづくりを進める
グループとしてお互いを理解し支え合い、相互に助け合う雰囲気が生まれるように、メンバーで懇親の場を設けたり、研修の機会をもつなどの工夫をすることが挙げられます。
仕事に対する適切な評価を受け取ることができるようにする
作業者が自分の仕事の出来や能力についての評価を、実績に基づいて、納得できる形で、タイミングよく受け取ることができるようにすることが挙げられます。
職場間の相互支援を推進する
職場や作業グループの間で、それぞれが作業しやすくなるように情報を共有したり、連絡調整を行ったりするなど、相互支援を推進することが挙げられます。
定期的に社員と上司の面談を設けて会社の目標を共有したり、社員同志の懇親会を儲けるなど価値観を共有することが必要です。
4.仕事の負荷における職場環境の構成要素について
労働時間の目標値を定め、残業の恒常化をなくす
1日、1週、1ヶ月単位ごとの労働時間に目標値を設け、ノー残業デーなどを運用することで、長時間労働が当たり前である状態を避けることが挙げられます。
繁忙期やピーク時の作業方法を改善する
繁忙期やピーク時などの特定時期に個人チームに作業が集中せず、作業の負荷や配分を公平に扱えるように、人員の見直しや業務量の調整を行うことが挙げられます。
休日・休暇が十分取れるようにする
定めた休日日数がきちんと取れ、年次有給休暇やリフレッシュ休暇などが計画的に、また必要に応じて取れるようにすることが挙げられます。
勤務時間制、交代制を改善する
勤務時間制を見直し、十分な休養時間が確保でき、深夜・早朝勤務や不規則勤務による過重負担を避けるようにすることが挙げられます。
個人の生活条件に合わせて勤務調整ができるようにする
個人の生活条件やニーズに応じて、チーム編成や勤務条件などが柔軟に調整できるようにすることが挙げられます。
5.仕事の責任における職場環境の構成要素について
作業の日程作成に参加する手順を定める
作業分担や日程についての計画作成に、作業者と管理監督者が参加する機会を設けることが挙げられます。
少人数単位の裁量範囲を増やす
具体的なすすめ方や作業順序について、少人数単位または作業担当者ごとに決定できる範囲を増やしたり、再調整することが挙げられます。
個人あたりの過大な作業量があれば見直す
特定のチーム、または特定の個人あたりの作業量が過大になる場合があるかどうかを点検して、必要な改善を行うことが挙げられます。
各自の分担作業を達成感あるものにする
分担範囲の拡大や多能化などにより、単調な作業ではなく、個人の技量を生かした達成感が得られる作業にすることが挙げられます。
必要な情報が全員に正しく伝わるようにする
朝の短時間ミーティングなどの情報交換の場を設け、作業目標や手順が各人に伝わり、チーム作業が円滑に行えるように、必要な情報が職場の全員に正しく伝わり、共有できるようにすることが挙げられます。
職場に社員が相談できる場所を設けることが必要。
まずは職場環境の具体的な問題点を見つけ、優先順位をつけて改善していきましょう。
職場環境を改善するためには、まずどのような要素が職場環境に影響を与えているのかを理解し、自社において最も改善すべき要素はなにか、優先順位をつけて改善していくことが大切です。
音量や照度など、定量的に数値で計測できることもあれば、上司や同僚との人間関係など、数値で計測しにくいものもありますが、最近ではサーベイなどの様々なサービスがあるため、数値で計測することも可能になっています。まずは現状を把握することからはじめましょう。