早期離職の原因となるミスマッチをどのように回避すべきか
7・5・3問題とは、中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が3年以内に離職すると言われる問題です。厚生労働省の調査によると、大卒者の新卒3年以内の早期離職率は、20年以上経っても、30%以上で推移しており、改善されていない状況であることがわかります。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査で、初職が正社員であった離職者の初職を辞めた理由を見ると、「労働条件・休日・休暇の条件がよくなかった」「人間関係が良くなかった」「仕事が自分に合わない」といったミスマッチが多く発生していることがわかります。これらの原因が早期離職に繋がってしまっていることから、適材適所が如何に重要であるかは一目瞭然です。
出典元『労働政策研究・研修機構』第6章 早期離職とその後の就業状況
今回は人材の適材適所を実現するため、100年以上前に提唱された特性因子理論をご紹介します。
特性因子論とは?人と組織のマッチング理論
特定因子論とは、一言で言うと「人と仕事のマッチング理論」です。キャリアカウンセリング理論の中でいう特性因子論は、その人を構成する特性(スキル、能力、性格、価値観等)と、その職業の条件(仕事内容や仕事に必要な要件)を上手くマッチングさせることが重要である、という考え方を言います。
特定因子理論は100年以上前にアメリカで提唱された理論ですが、現代でも活用することができる理論です。
特性因子理論が提唱された背景や目的について
特性因子理論が生まれた背景に産業革命があります。イギリスに端を発した産業革命の波が19世紀後半アメリカにも訪れ、人々の生活や仕事に大きく影響を与えるようになります。
産業革命による工業化が進むことで、新たな仕事が次々と生まれました。一方で仕事を求めて都市部に流入する人々や、ヨーロッパからの移民も増加するなど、社会的に混乱を来していました。移民支援の目的から、1901年にボストン市民サービス館が創設されました。当館で支援にあたっていたフランク・パーソンズは、活動を通じ青少年たちのジョブチェンジの実態を知ります。
彼らは転職を何度も繰り返し、定職に就くまで時間を要していました。当時、その原因は彼らのスキル不足と考えられていましたが、パーソンズは、問題はスキル不足ではなく場当たり的な職探しが失敗の原因だと気づきました。
パーソンズは1909年に『職業の選択』を出版し、特定因子理論を発表しました。
特性因子理論を活用するメリットや得られる効果とは
特性因子理論を活用する企業側のメリットは、適材適所による人員配置の結果、生産性の向上に繋がり、人材の定着が期待できます。会社単位で見るならば、業績の安定や右肩上がりの業績を実現することに繋がると言えるでしょう。
特性因子理論を活用する社員側のメリットは、自身の適性に合った仕事に就くことで、仕事へのモチベーションが上がり、良好なパフォーマンスを出せるようになります。自分が活き活きと働き、パフォーマンスを出していくことで、社内でも良い評価を受けるようになり、給料アップなどにも繋がります。
適材適所を実現する特定因子論を活用してみよう!
特性因子理論とは、人材の適材適所の重要性に言及した理論です。個人の性格・価値観・スキル・趣味などの個人の特性と、仕事内容・仕事に必要な能力などの仕事の因子をマッチさせることが離職を防止に繋がります。「人と仕事のマッチング」は、社員が自分に合った仕事に就くことで、活き活きと働くことのできる社会の実現に繋がるとも言えます。
職業適性検査なども活用しながら、社員や採用候補者の特性と、想定するポジションとの因子を、具体的且つ明確にすることで、人材の適材適所を考えることが重要でしょう。