中小企業での雑談面接は「意図」が重要
雑談面接とは、雑談が中心でざっくばらんな雰囲気の中で行われる面接手法です。面接官が質問を投げかけて、候補者が回答するスタイルは他の面接と同じですが、志望動機や自己PRなどの“お決まり”の質問項目ではなく、候補者と面接官が自然と会話を進めていく中で質問を投げかけて行きます。
雑談面接はフランクな雰囲気になりやすく、企業側、候補者側ともにリラックスして話せるため、候補者の本音や素の姿、真のコミュニケーション能力を見抜くのに役立ちます。しかしおしゃべりに終始してしまうリスクや、面接官の主観や好みで合否が決まるリスクもあるので、「何のための雑談か」という意図を明確にすることが重要になります。
「就職白書2019」によると、面接は99%の企業で実施されており、最も実施率の高い採用選考プロセスだといえます。面接は、人柄・性格」や「身だしなみ・立ち振る舞い」「志望動機」などを見極める場として活用されている一方で、採用したい人材を口説くという役割も担っています。面接の精度向上はどの企業にも重要な課題です。
一方で、「退職理由・交渉のホンネ調査2019」によると、退職理由の第3位は人間関係です。さらに、なんと半数以上の人が「本当の退職理由」を退職時には伝えていないことが明らかになりました。
出典元『d’s JOURNAL』退職を決意した人は、本当の理由を言わない?【退職理由・交渉のホンネ調査2019】
せっかく採用した人材が、社内で本音を話せなかったり、コミュニケーションが上手くいかず、人間関係を理由に退職してしまうのを防ぐためにも、雑談面接で候補者の本音をしっかりと引き出すことは、大企業に比べて採用コストやリソースにおいて不利な中小企業こそ、取り組むべき課題です。
中小企業が雑談面接を行う企業の目的について
雑談面接を行う企業の目的は、候補者の臨機応変の対応力や、真のコミュニケーションを見極めること、それらを通じて候補者の素の姿や本音を探ることです。履歴書からは分からない候補者の情報を引出したり、入社して欲しい候補者の志望度を高められるよう情報提供を行うことなども雑談面接の目的となります。
一般的に中小企業やスタートアップ企業では、面接回数が大企業に比べて少なく、採用活動にかけられるコストやリソースも限られています。雑談面接で企業と候補者がお互いに本音で話し合うことで、お互いの見極めが早く進めば、双方にメリットがあるのです。
中小企業が雑談面接を実施する企業側のメリット・デメリット
中小企業が雑談面接を実施するメリットは、候補者の素の姿から人材を見極められることです。臨機応変の対応力や、真のコミュニケーションを見極められるほか、話し方や受け答え、本当に考えていることを引出しやすく、候補者の疑問解消や情報提供の時間を取りやすいため、相互理解や口説きにもなるのです。合否判定や内定までのスピードも向上でき、採用活動の効率化にもつながります。
中小企業が雑談面接を実施するデメリットは、意図を持った質問をするよう心がけなければ、雑談に終始してしまうことです。単なる雑談では面接官の印象や主観で候補者を評価することになり、見極めるべき項目を的確に見極めることができなくなり、面接の評価にばらつきが生じます。その結果合否判定に時間がかかり、本当に欲しい人材を逃してしまうリスクが上がってしまい、人材のアンマッチにより早期離職にもつながりかねません。
雑談面接を実施する候補者側のメリット・デメリット
中小企業が雑談面接を実施する候補者側のメリットは、カジュアルな面談なので候補者が緊張しないで面接に臨めたり、リラックスして話せるというメリットがあります。マッチ度が高ければ高いほど、候補者側もあらゆる質問を自己PRに紐付けて回答しやすく、入社検討にあたり必要な情報を素で聞きやすくなるというメリットもあります。
中小企業が雑談面接を実施する候補者側のデメリットは、採用の合否の判断基準が不明確になりがちで、雑談が盛り上がった場合は特に結果に不満を持ちやすくなるという点です。なぜ不合格だったのかが分からなければ、次の面接に生かす材料にもなりません。咄嗟の受け答えを見られている緊張感がある中、つい話しすぎたり警戒したりして、素の自分をPRすることを難しく感じてしまうこともあるでしょう。
双方にメリットをうむための対策方法や注意点について
中小企業が雑談面接を実施する際、企業と候補者の双方にメリットがある場作りをするためには、意図と目的を持って雑談をすることが重要です。面接には、見極めと口説き、2つの目的があります。それぞれの場合で、注意点を明確にしておきましょう。
見極め目的で雑談する場合は、見極める項目や基準を終始忘れないことがポイントです。まず見極めるべき項目が必要最低限の「MUST項目」か、あったら嬉しい程度の「WANT項目」かの重みづけをします。どの程度満たしていたら合格とするのか、どうやって見極めるのか、評価基準を具体的にして、面接官同士で共有しておきます。
口説き目的で雑談する場合は、候補者の本音を引出しつつ、必要な情報を適切なタイミングで提供できるよう心がけることが重要になります。残業時間・働き方やワークライフバランスなど、候補者の懸念事項に対しては、嘘偽りない現状を伝えることが大切です、
場合によっては自社の課題感を伝えて、候補者が許容範囲かどうかを判断できるようサポートしつつ、社内環境改善の当事者として共に会社を盛り上げるくれる戦力となることを期待していることなどを伝えることも一手でしょう。
中小企業が雑談面接を上手く活用するために
中小企業における面接は、人事担当者や採用担当者のリソースが限られているだけでなく、複数人の面接官のスキルも統一されていないケースも多いので、雑談面接を実施する場合にはかなり注意が必要です。
構造化面接などを用いて面接の進め方や評価を統一して、見極めの精度を上げるのと並行して、人材を上手く口説くために雑談面接や内定者フォロー施策などの施策を検討してみてはいかがでしょうか。中小企業における母集団形成が難しくなっている中で、見極めと口説きをバランスよく行うことが、長期的に活躍してくれる人材の獲得に繋がるはずです。