フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)とは?自分が正しいと思う理由

何故人と組織のミスマッチが生まれるのか?

生産性の高い組織に共通する特徴はいくつもありますが、組織の風通しがいいことや、社員のコミュニケーションが良好なことなどは多くの企業でみられる特徴となっています。人間関係が良好なことは、社員の定着率や満足度にも大きく影響します。

人材サービスを展開しているUZUZの調査では、早期離職者の重要な退職理由として「社風が合わなかった」「人間関係がよくなかった」が上位に挙げられています。会社のやり方や会社にいる従業員と合わないと、離職に繋がりやすいという結果が明らかになっています。

最も重要な退職理由は何ですか
出典元『UZUZ』【調査リリース】転職希望者は年末年始に急増|20代の「第二新卒」に聞いた転職活動事情|転職が多い職種は「営業」、業種は「建設・不動産」という結果に。

労働政策研究・研修機構の調査では、「入社後に重視されている」項目の1位に「人間関係がいいこと」が挙げられています。入社前では「雇用が安定していること」が重視されているのに対し、入社後になると「人間関係が良いこと」が重視され、入社前の重視具合と大きなギャップがあります。求職者は入社前には「人間関係が良いこと」を重視していない傾向にあるため、会社の実態として「人間関係が悪い」状態であると、自分では変えられない問題であるとして離職につながってしまうことが考えられます。

働く上で重視すること
出典元『労働政策研究・研修機構』従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査

人間関係が悪いと言っても原因はさまざまで、互いに嫌い合っている場合もあれば、一方は良かれと思っていたことがもう一方にとっては迷惑だったというような、性格や価値観のミスマッチが原因の場合もあります。

このミスマッチの原因のひとつに「フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)」があります。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)とは?

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)「False consensus」とは、自分の意見や考え、行動が常に多数派でありかつ正常であると思い込む、認知バイアス(認知の偏り)のことです。周囲が合意してくれていると勝手に思い込む行為から、この名前がついています。フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)効果は、「偽の合意効果」や「総意誤認効果」ともいいます。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)効果は、たとえば学校や職場など、グループで議論したときに頻繁に発生します。特定の集団内で合意すると、さらに一般的でかつ大きな集団、たとえば市民やさらにいうと、日本人全体でも同じだろうと思ってしまう傾向が生まれがちです。わざわざ外部に、議論している内容を調査したり議論する機会がないと、ついそう信じ込んでしまいます。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)の例について

「フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)」という心理効果は、1970年代にスタンフォード大学の社会心理学者リー・ロス氏が、人々の認識の調査結果から提唱したものです。ロス氏は、以下のような実験を実施。その結果からフォールス・コンセンサス効果を提唱しました。

実験とは、学生にサンドウィッチマンの格好をしてキャンパスを歩き回るよう依頼しました。そして、それを承知した学生と断った学生に分けて次の質問をしてみました。「同じことを、別の学生に頼んだら承知してくれると思いますか?」と。

結果は、承知した学生は「承知してくれると思う」が6割、「思わない」が4割、それに対し断った学生は、「思わない」が7割で「思う」が3割となりました。これは自分の考えが標準的だと思う人が多いということを表していることです。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)効果が働く仕組みは複雑で「これが原因」というものを特定しにくいと言われていますが、大きな理由は2つあるとされています。

1つには「自分にとっては、自分の考えが一番わかりやすく納得がいくので、無意識に他人に対してもそういう指向を投影してしまう」ことです。もう1つには「自分は多数派」だと思うと何となく安心する、心理的な働きです。

親しい人ほど、自分と同じように思っているに違いないと考えてしまいがちです。そういった思い込みがもとで、家族や友人と気まずくなった経験はないでしょうか?「良かれと思ってやったことが、相手にとって迷惑だった」というような、相手には有難迷惑だった言動がまさにフォールス・コンセンサス(偽の合意効果)効果です。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)の問題点について

「フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)」が生まれる原因は、大きくは「正常化バイアス」と「帰属バイアス」に分けて考えることができます。ちなみに「バイアス(bias)」とは「認知の偏り」を意味する言葉です。

「正常化バイアス」とは、自分が少数派ではなく多数派に属していて正しいと思い込む認知バイアスです。「自分は他の人と同じ」と考えることで、安心感・正常性を感じやすくなる、という心理的な傾向を言います。「帰属バイアス」とは、「自分の意見・考え・価値観」を他人に投影して帰属させるという認知バイアスのことで、「自分はみんなと同じ」という本来は正しくないかもしれない心理傾向=偽の合意、を強化しています。

以下のような思い込みは、フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)の例として挙げられます。

  • 仕事を欠勤する際はメールで連絡するのは非常識。必ず電話で報告するのが望ましい。
  • 好きな相手に良かれと思って話した言葉が、逆に相手を傷つけてしまう。
  • マーケティングに注力した商品はあまり売れず、PRをほぼしていない商品が売れ行きが良い。
  • 「お客様に喜んでほしい」と考えて実施したサービスが空回り。クレームの原因になった。

こういった傾向は、ビジネスの現場だけでなくプライベートでも起こりがちです。「周りは自分と同じはず」と思って物事を判断してしまうと、思わぬ間違いを起こすことがあります。ビジネスにおいては権限の大きい役職者や指導的立場の人は注意が必要です。部下や生徒も自分と同じ意見だと勝手に思いこみ何かの決定をしてしまうと、反感をかったりチームワークを乱す場合があります。

「フォールス・コンセンサス」の最大の問題は、自分の意見・言動が常に多数派で正しいと思い込む正常化バイアスによって、自分とは異なる他人の意見や言動を受け入れにくくなることです。このバイアスが、商品やサービスの購買意欲やポジティブな受け止めを阻害する要因となっている可能性があります。たとえば「広告は都合の良い情報だけしか出してない」や「安く利用するには条件があるはずだ」といった、広告・宣伝に対する思い込みがあります。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)の対策方法について

フォールス・コンセンサスを防ぐためには、直接相手に真意を確かめたり、統計などの客観的資料を用意することです。それによって、間違った思い込みの大半は防ぐことができます。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)効果が起こってしまうと「誰もがそう思っている。それが当然」と思い込んでしまうので、「客観的指標を提示することで信頼性は高まるから、資料を用意する」といった行動自体を思い付きません。「自分では絶対にいけると思った企画の空振り」といった事態は起こらないのです。

フォールス・コンセンサス(偽の合意効果)効果を予防するには、自分は当たり前と思っていることでも、常に客観的視点に立ち確認する癖を付けることが大切です。

自分の意見が大多数の意見と一致しないことを認識する

人間関係のミスマッチの原因のひとつとして「フォールス・コンセンサス(偽の合意効果))があります。このバイアスは誰もが陥りやすく、自覚することも難しいため、客観的なデータや複数の意見を取り入れるなど「当然こうだろう」と思うことほど慎重に考える必要があります。

フォールス・コンセンサスは「自分が思ったことは、多くの人も合意してくれるだろうから正しい」と思い込む現象です。自分の言動を受け取る側の考え方などを無視してしまうバイアスであるため、自分の思いを一方的に伝えるだけでなく相手にも同じ考え方を強要してしまうことは、人間関係の悪化に繋がります。フォールスコンセンサスから脱却し、良い人間関係を構築するためには、自分の考えを押し付けるのではなく、自分の考えを伝えながら相手の考え方も理解する相互理解の姿勢が必要不可欠です。

人間関係が悪化する原因となるフォールス・コンセンサス(偽の合意効果)への対策に取り組んで、早期離職を防止しましょう。

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