企業の思いや考えを広く周知させるのに企業遺伝子は効果的なのか
企業遺伝子とは、その企業が持つ独自の魅力、らしさ、信念や行動規範が長きに渡り時代を超えて受け継がれる事を指します。生物における遺伝子情報とは本来、他者と違った点を捉える特徴という特性があるように、企業遺伝子においても、その企業が持つ固有の価値観や行動のあり方など、他の企業にはないその企業だけにある固有の考え方や力を他社と差別化を図るために生まれた言葉とも言えます。
HR総合調査研究所が行ったアンケート調査結果によると、およそ98%の企業が企業理念の浸透の必要性を感じていると回答しています。
出典元『HR Pro』「企業理念浸透に関するアンケート調査」結果報告
一方で、およそ半数以上が思うように企業理念を浸透させることができていないことを実感していると回答しています。
出典元『HR Pro』「企業理念浸透に関するアンケート調査」結果報告
おおよそ6割の企業は、社員へ企業理念を浸透させるための具体策を講じているにも関わらず、思うように進まない背景として、分かりやすい表現で明文化できていないことが挙げられます。
出典元『HR Pro』「企業理念浸透に関するアンケート調査」結果報告
今回は、社内はもちろん社外への自社アピールの手段としても利用できる企業遺伝子の明文化の方法や活用方法について紹介します。
分かりやすい企業遺伝子を作るための方法とは
企業遺伝子とは、この変化の激しい市場経済を生き抜くために、企業がその企業の魅力や自分たちらしさを明確に捉え、強みとして優位性を見出し適応するために作られた言葉です。
企業遺伝子を取り入れて活用することは、環境変化の激しい市場経済において、自社の本当の強みや自分たちらしさを再確認しながら競争社会を生き抜くために行動ができることにあります。
企業遺伝子を作成する上で最も大切なのは、抽象的な価値観や考え方、行動指針などを明確化させ、誰もが分かり安い言葉で明文化することです。そのためにまずは構成要素となるうる遺伝子を抽出し、配列を考えながら整理し、何度も検証を重ねながら、体系化していく必要があります。
遺伝子の抽出においては、主力商品ヒット商品の開発の経緯や、ベテラン社員からその時の経験などをヒアリングし、その中から昔から引き継がれて来ている精神を引き出すことが効果的です。成功例のみならず失敗例を含め、多くの商品や出来事を取り上げその背景についてのエピソードを掘り下げることで、企業遺伝子の候補を見つけ出しましょう。
抽出ができたら、それを似ている内容同士をフレームで捉えながら、体系化していきます。全体像が見えたタイミングで、抽出に抜け漏れがないかの確認もしましょう。
過去の整理ができたら、最後に今後自社をもっと強くしていくために必要な要素を議論し検討しながら加えて行くことが大切です。その後より具体的な構成を行い実務レベルにまで落とし込み、周知と共有を行いながら、検証と改善を行っていきます。
企業遺伝子の有効活用事例とは
企業遺伝子は作成して終わりではありません。広く社内外へと周知し共有することで、初めて効果を得られることができます。企業遺伝子の活用方法の事例をいくつか紹介します。
ボディケア商品を幅広く取り揃えるザ・ボディショップでは、自社の価値観である「一人一人が自分らしさを大切にする生き方が素敵である」という考え方を顧客につたえるため、価値観や社会的メッセージがプリントされたTシャツを店員が着用し販売を行っています。店内には同社の支援活動に共感し、参加しやすくなるようポスターやチラシを通じ訴えかけています。
価値観への共感や思いに賛同することは、商品購入を超えた感動や夢を与え、同業他社とは違った満足感を顧客に提供することができると考えています。これこそがザ・ボディショップならではの魅力であり、企業DNAをしっかりと活用し伝えられている良い例だと言えます。
アウトドア・スポーツウェアのパタゴニアは、企業理念である「ビジネスを通じて危機的状況にある環境問題に解決策を提案」することに基づき、1996年以来様々な取り組みを行っています。その取組の一部としては、自社製品の全てのコットン製品を農薬使用の影響がない100%オーガニックコットンを利用することで環境への負担を減らす取り組みや、売上の一部を自然環境の保護・回復のための活動に寄付をすることなどが挙げられます。
創業当時から創業者の思いである価値観や理念、理想とするビジネスのあり方が、脈々と受け継がれている証拠であり、環境問題への取り組む姿勢が消費者の共感を呼びファン層に定着し長く愛され続けるブランドへと成長させています。
社内外へのアピールとしても企業遺伝子は活用できる!
企業遺伝子と企業理念は深く繋がっており、企業遺伝子を明確にしていく過程において企業理念も自然と明らかにすることができます。
企業遺伝子を有効活用し社員はもちろん社外への理解や賛同を得るためには、より分かりやすい言葉で明文化させることが何よりも重要です。企業遺伝子を明確にし、有効活用することができれば、社員への企業理念の浸透だけではなく、求職者はもちろん、顧客やクライアントにも自社ならではの魅力や思いを伝えることができるでしょう。
企業遺伝子は簡単に作成できるものではありませんが、今後のためにも企業遺伝子の明確化に取り組む価値は十分あると考えられます。