キャリア理論の1つである意思決定理論
人事担当者や経営者が適材適所を考える上で、知っておきたいのがキャリア理論です。キャリア理論は、約100年ほど前に職業指導の父と呼ばれたパーソンズによる特性因子理論が始まりです。
当時産業革命の波がアメリカにも押し寄せ、人々の仕事や生活環境が大きく変わり、失業者が増大し、社会問題となっていました。問題解決のため、パーソンズは、個人の特性(性格や価値観)と仕事内容や求められるスキルなどの因子をマッチングさせることが重要であると考え、特性因子理論を提唱しました。
次いで登場するパーソナリティ理論は、特性因子理論を発展させる形で提唱された理論です。パーソナリティ理論では、個人個人は異なる存在であり、持ち合わせている特性も1つではなく、複数組み合わせて考える必要があると考えられました。人は置かれた環境によっても、取りうる行動が異なるとも考えられました。
今回はご紹介する意思決定理論は、人生は意思決定の連続であり、人がキャリア選択をしていく「プロセス」そのものが大切であるという考え方から発展した理論です。本記事では、意思決定理論の概要や、企業・社員それぞれが本理論を知っておくメリットについてご説明します。
意思決定理論とは?今後のキャリアを考えるために
意思決定理論は、特性因子理論のように個人の特性や職業での必要要件にフォーカスした考え方ではなく、キャリアを選択していく意思決定そのものに焦点を当てた考え方です。
我々は進学や就職、結婚、異動など様々な場面で選択をしている訳ですが、意思決定のプロセスや意思決定スタイルは様々です。キャリアにおける意思決定理論は「意思決定プロセス」と「意思決定スタイル」の大きく二つに分類されています。意思決定プロセスにおいては、さらに合理的な意思決定論と実際的な意思決定論に分けて考えられています。
合理的な意思決定論は、論理的・合理的に最適な意思決定を行うための方法について述べているものです。もう1つの実際的な意思決定論は、人が実際にどのように意思決定を行うのかについて説明した理論です。
意思決定スタイルは、本人の自己理解の程度や自分が置かれている環境への理解がどの程度かなどにより、数タイプに分類したものです。
意思決定理論の目的や活用するメリットとは?
意思決定理論では「人は利益を最大にし、 損失を最小限にするよう行動するもの」だと考えられています。(※ここでいう利益や損失は、経済的なものではなく、個人の価値観や希望により異なります。)意思決定理論を活用する目的は「人がより良い結果を得るため」であると言えます。
企業にとっては、いかに優秀な人材を採用・定着させ、活躍してもらうかは極めて重要な問題です。意思決定理論をキャリア面談や人事考課を行う際に活用することができます。社員がキャリアに関してどのような希望や期待を抱いており、これまでどのような意思決定を行ってきたかを把握することで、今後の人事異動の参考とすることができるでしょう。
終身雇用制が崩壊した今、社員はこれまで以上にキャリアについて考える機会が増えたことでしょう。働き方も多様化し、キャリアは会社が与えてくれるものではなく、自らが考え、創っていくものであるという認識が広まりつつあるのではないでしょうか。そういった時代において、どのようなプロセスを経た意思決定が望ましいのか、あるいは自身の意思決定のスタイルを把握しておくことは、納得のいく良い結果を得ることに繋がるでしょう。
意思決定理論でミスマッチを防ごう
意思決定論を上手く活用することで、社員を定着させ、長期的な活躍も期待できます。
人事担当者が社員の将来のキャリアプランを予測するだけでなく、これまでのキャリアにおける意思決定のスタイルがどのようなものだったのか、あるいはどのようなプロセスを経て、現在のポジションに就いているのかを理解することは、企業施策によるミスマッチを回避することにも繋がるでしょう。