部下のパフォーマンスをあげるために上司がすべきこと
働き方改革をはじめとする労働に関する価値観・制度の変化を受け、限られた時間内に高いパフォーマンスを発揮できるかがマネジメントの鍵となります。
生産性向上のためには職場の連携が不可欠です。特に軋轢が生じやすい上司と部下のコミュニケーションについて、当事者たちはどのような認識を持っているのでしょうか?
カオナビは「上司と部下の関係性」に関する調査を実施しました。部下は上司から理解されていると仕事のパフォーマンスにいい影響があるとの回答が全体で約61%、なかでも20代は80%にのぼる結果となっており、特に若手のモチベーションや成長は上司の理解が大切であることが伺えます。
出典元『カオナビ』カオナビHRテクノロジー総研が、「上司と部下の関係性」に関する調査結果を公開。約6割の社員が「上司からの理解が不十分」と回答
上司からの理解が不十分と感じている社員は約57%と過半数を超える結果となっています。つまり、上司による部下の理解や承認がマネジメントでプラスに働くのですが、実際にはそれがうまく行えていないというのが実態なのです。
出典元『カオナビ』カオナビHRテクノロジー総研が、「上司と部下の関係性」に関する調査結果を公開。約6割の社員が「上司からの理解が不十分」と回答
first callを運営するMediplatが2019年に実施した「従業員のメンタル不調」に関する調査によると、職場の人間関係をメンタル不調の原因として挙げている人の74%が「上司との人間関係」と回答していています。この結果が示す通り、上司と部下のコミュニケーションは組織の生産性から個人の生活に至るまで、広く影響が生じる大きな問題だと言うことができます。
出典元『PR Times』産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」、1位は長時間労働ではなく「上司との人間関係」
この記事では、1on1ミーティングを導入し、職場環境の改善に成功した事例を3件紹介します。
「上司の教育スキルを育成して1on1の質を高める」ヤフー株式会社の導入事例
大手IT企業、ヤフー株式会社では2012年の経営体制の刷新に伴い、人事制度が改定されました。
四半期に一度のサイクルでMBOを導入し、見かけはうまくいったように思われましたが「評価数値に依存しすぎる」ことが問題となりました。部門の組織目標だけでなく、個人の通常業務まで目標化しすぎてしまい、すべての仕事が「点取りゲーム」の様相を帯びてしまったと同社の本間浩輔氏はHRファーブラ代表取締役の山本紳也氏との対談で述べています。そうなると会社が掲げた「才能と情熱を解き放つ」というスローガンとは方向性がズレてきます。
この課題に対して、上司と部下のコミュニケーション不足を解消するため、ヤフーでは1on1ミーティングを重視するようになりました。当初は上司が部下のために時間を確保できないなどの課題がありましたが、1on1の質を高めるべく、以下の3点についてガイドラインにまとめました。
- コーチング
- ティーチング
- フィードバック
管理職にコーチング研修を必須とすることで、スキルアップを促しています。
「目標管理を人事評価は別物」グリー株式会社の導入事例
2004年設立以降、ゲームを主軸にエンターテイメント事業で活躍するグリー株式会社は、2007年よりMBOによる目標管理を導入しました。グリーでは目標達成基準を5段階の指標で明確化し、2015年からは全社員との1on1面談も実施。個人成長と組織成長の紐付けに成功しました。
グリーの目標管理システムは「MBOをアレンジ・改良したもの」といえます。1on1を重視し、目標設定やフィードバックが人事評価と一致しすぎないよう、緩やかな連動を意識しているのがポイントです。
評価の色が強くなるとどうしても数値化できる項目の重要度が高くなりすぎてしまいますが、人事評価との繋がりを緩くすることで、どんな行動を起こすかという定性的な面もしっかりとフォローできるようになります。実際、社内アンケートでも「1on1に満足している」と回答した社員は全体の7割と、高い満足度を得られました。
「2段階の1on1で従業員を配慮」株式会社ユー・エム・アイの導入事例
株式会社ユー・エム・アイは1971年に創業以来、プラスチック製品やアルミ・チタン製品を主に取り扱う製造業を営んでいます。職場環境の改善を図る改革の1つとして、目標管理制度を導入しました。
導入のきっかけは「人材育成環境の整備」です。現場で活躍していた人材はキャリアとともに管理職になる一方、現場で優れていた人材が必ずしもマネジメント能力に優れているわけではないことに課題がありました。部下側も目標管理制度の導入をきっかけに「目標意識を持って業務に取り組んでもらいたい」という狙いがありました。
運用したのは半年に1回のサイクルでの目標設定とフィードバックです。フィードバックは直属上司と二次考課者それぞれによる2回の1on1で、評価項目は「成果評価」と「能力評価」の2つに分類されます。フィードバック面談を2回に分けている理由は「直属上司には言いにくいこと」を取りこぼさないための配慮です。
この制度への従業員の納得度は高く、従業員の働く意欲向上に大きな効果が見られたと報告されています。
1on1ミーティングは部下だけでなく上司も育成し、強い組織を作る
1on1とは上司と部下が一対一で面談を行うことです。主に部下の理解促進やコミュニケーションの活性化などを目的として、多くの企業で導入されているミーティングです。
普段なかなか相談しにくいことを打ち明けたり、目の前の目標から中長期的なビジョンまで仕事やキャリアについて幅広く情報を共有できるため、若手のモチベーションマネジメントや成長促進に効果的です。しかし、それなりの時間がかかる制度でもあるので、計画性を持った実施が不可欠です。
ま1on1ミーティングは、部下の理解や悩みを解決することによる部下の労働生産性やモチベーションの向上だけでなく、上司のマネジメント力の強化にもつがります。導入事例を見ると、ヤフー株式会社では上司のコーチングスキルの強化にコミットしており、質の高い1on1ミーティングを実施する上で、「良い上司の育成」が鍵となることが示唆されます。
1on1を通して上司は現場の課題を詳細に把握することもできますので、チームワーク力の強化などの組織力を強化したい場合には、導入を検討してみてはいかがでしょうか?