1dayインターンシップは有効なのか?
日本の経済が堅調な状態が続いているのに比例して、売り手市場も進んでいる昨今の新卒採用市場。優秀な人材をいかに集め就職に結びつけるか。人材との早いタイミングでの接触、また、自社で働くメリットを多方面からアピールできる場として企業・学生双方から注目を集めているのが『インターンシップ制度(プログラム)』です。
近年では多くの企業がインターンシップを実施し、多くの求職者がインターンシップに参加しています。ディスコの調査によると、学生のインターシップの参加率は86.2%にもなり、ほとんどの学生が参加していること、企業の実施率も74.9%と、4社に3社はインターシップを実施してます。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』インターンシップに関する調査
2019年度の学生調査では、インターンシップ参加者に入社する予定の割合が大幅に増加している一方で、「半日」「一日」開催のものの満足度は低いというのが実態です。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』インターンシップに関する調査
今回は1dayインターンシップの企業事例について説明します。
1dayインターンシップの各社事例について
シンプレクス株式会社の事例
シンプレクス株式会社は、コンサルからシステム設計などの金融ソリューションサービスを提供しています。
1dayインターンシップを実施している目的として、企業や業界に関する説明にプラスして、企業理解を深めるために、実際の業務に近い体験のできるワークを積極的に取り入れることが挙げられます。
インターンシップの内容として、午前中はコンサル業務のグループワーク、午後はプログラミング体験という、ワークショップと実務体験を融合させたプログラムにしています。一日だけのインターンシップの中で実務体験を重視した構成にした点がポイントです。実務を体験する機会を作るだけでなく、コンサルとITの2つのプログラムで多様な内容を学べます。
インターシップを実施した効果として、企業理解をより深めてもらうことができました。同時に、参加者の適性判断にも役立ったとのことです。結果として、入社後のミスマッチ軽減に繋がりました。
マブチモーター株式会社の事例
マブチモーター株式会社は、小型直流モーターの製作・販売を行っています。
1dayインターンシップを実施している目的として、多くの選考辞退が発生してしてしまったことが挙げられます。インターンシップと説明会集客によって母集団形成を実施した新卒採用では、推薦で決まった企業への就職を決めた学生が次々と選考を辞退してしまいました。研究室に所属している理系学生は推薦で就職先を決めてしまうことが多く、それまで選考を順調に進んできた学生が「実は推薦を受けていました」と選考を辞退するケースが発生していました。
インターンシップの内容として、母集団が尽き始めた6月に、自らアクションを起こせるサービスを利用した採用活動をスタートしました。ターゲットレベル以上の大学で、その学生がやりたい職種が自社にあると思うか、を判断軸としてオファーを送付しています。募集職は「製品開発」「生産技術」「品質保証」でしたが、理系の学生でも、物理系、情報系、化学系などは少し分野が異なるため、まずは専攻と学んできたことが自社内でどのように活用できるかを考え、次に本人が希望している職種や業界を判断材料に、丁寧にアプローチを実施しています。
インターンシップを実施した効果として29件のオファーから1名の内定を出しました。志望する業界・職種・勤務地などがマッチした学生の採用に成功しています。学生へのレスポンスを速くすることを意識しつつ、ログイン回数の多い学生に積極的に返信し、できるだけ期間をあけずに来社してもらう機会を作っていたことが功を奏しています。
現場社員と話してもらう座談会も実施しています。職種のイメージをつかみ、不一致がないかを本人にも確認し、それから選考に進んでもらうようにしたことも有効でした。
某大手コンサルティングファームの事例
インターンシップを実施している目的として、効果的な会社紹介と採用につながる一手を打ちたいことが挙げられます。
インターンシップの内容として、家電量販店の業務課題を改善するための模擬コンサルティングで「会社の事業内容ついての紹介」「チームをつくり、家電量販店の業務改善案をプレゼン
・プレゼンのフィードバック」「社員も交えての座談会」を実施しました。実践的なグループワークで経営コンサルタントの面白みややりがいを紹介しています。
インターンシップを実施した効果としてグループワークは実際にあった事例を用いて行われるので、リアルな仕事を体感できると好評でした。学生としても、実際に使われる分析手法を教えてくれるなどの点が評判もよく、もともと志望していなかったが業務内容を身近に体感できて志望意欲がわいた、丁寧な指導のおかげでしっかりと業務内容を理解でき、有意義だったなどの感想があったそうです。
グループワークの最後に設けた発表時間に、先輩社員が丁寧に講評するプロセスも設けたが、それも評価の高いポイントでした。ワークショップの内容が実際の業務内容に近い内容なので、短い時間で密度の濃いプログラム内容が組めたのが効率的だったという一例です。実践的なプログラムを経験できることは貴重なので、学生にとっても充実度の高いインターンシップになったと考えられます。
某ゲーム制作会社の事例
某ゲーム会社では、デザイナー職を対象にした『1日モバイルゲームデザイン』というインターンシップを実施しました。企画書作成から、ワイヤーフレームの設計、フレームパーツの作成をして最終的にデザインを発表するという内容です。
参加者でチームを作ってプロジェクトを動かしていくプロセスですが、それぞれのチームにデザイナーがメンターとしてサポートすることで、初心者でも最後までやり遂げることができるような仕組みになっています。メンター社員が、チームメンバーにアドバイスや実際に作ったデザインに対するフィードバックを行うことで、実践的な体験を得ることもでき好評でした。
発表後の懇親会では他のチームのデザイナーとも交流でき、自分が作ったデザインがどのような評価を得ていたのか、多角的に知ることもできるプログラムとなっています。
某飲食サービス企業の事例
レストラン事業を展開している某飲食系企業では、定期座的に開催している「チャイルドキッチン」という子供向けサービスの広報を体験するインターンシップがあります。
餃子やラーメン、パンなどを子供たちと作れるプログラムは、楽しみながら仕事を体験できるため学生に人気です。子供と一緒に作業しながら実務を覚えることができるので、仕事のやりがいや面白みを理解することができます。実際に自分たちで作ったものを食べることもできるので、子供や食べることが好きな学生には特に満足度が高くなっています。
自分の興味からインターンシップを探す傾向がある学生にとって入社意欲を高めることにもつながり、企業にとっても一石二鳥と考えられます。
1dayインターンシップを他社事例に学ぶ
1dayインターンシップとは1日で完結するインターンシップで、長期インターンシップと比べて、企業・求職者ともに準備や負担も少ないメリットもあります。しかし、求職者調査では「最も参加しなくて良いと思った」インターンシップとしても挙げられているのが現状で、1dayインターンシップの内容自体を限られた時間の中で魅力的な内容に作り上げることが重要です。
限られた時間の中で同業他社との差別化を行うことは難しい側面はありますが、参加して良いと思ったインターンシップ内容を作り上げることで、採用ブランディングや自社の知名度向上にも直結する重要な活動です。自社にとって意義のあるプログラムにしていくために他社の事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。