多くの業務や部下を抱える管理職の現状
「社会人の大学院ランキング2017」における課長職に対するアンケートによると、自分の業務のうちにプレーヤーとしての仕事の役割が1%~50%あると答えた課長は5割を超えており、2010年、2012年の調査とほぼ変わらずに過半数をキープしています。
出典元『日経キャリアNET』上司や部下のジレンマを大解剖!働く30~50代の悩みのタネはどこに?
多くの管理職がプレーヤーとしての役割も期待されている一方で、マネジメント業務を専門に行なっていると答えた課長は1%前後に留まっています。プレイヤーとしての活動が、マネジメント業務に何らかの支障をきたしていると回答している課長は約6割に上るなど、マネージャーとプレーヤーとしての業務の両立に対して多くの人材が課題感を持っていることがわかっています。
内閣官房内閣人事局の調査によると、部下の人数は6人~10人が最も多いものの、11人以上の部下を抱える管理職が過半数を占めており、多くの部下の管理や多様な業務に追われマネジメントに集中しづらい環境に置かれている管理職の現状がわかります。
出典元『内閣官房内閣人事局』管理職のマネジメント能力に関するアンケート調査 結果概要(最終報告)
今回は、マネジメントを健全化するために、一人の上司が管理できる人数を示すスパン・オブ・コントロールについて説明していきます。
スパン・オブ・コントロールの意味や定義とは
スパン・オブ・コントロールとは、直訳で「コントロール(できる)範囲」という意味であり、管理限界や統制範囲とも訳されます。一人の管理者が管理可能な部下の数には限界があるという経営学における概念で、元々は軍隊を編成する際の考え方であったとされています。
スパン・オブ・コントロールの限界を超えてしまった組織では、成果が創造できなくなってしまうどころか、組織全体に悪影響を及ぼしてしまうと言われています。企業を含め多くの一般的な組織では、この理論は前提として扱われており、比較的規模の小さい組織ではもちろん、大きな企業等においては、トップから直接多くの社員とつながるのではなく、社長や経営陣をトップに様々な部署や中間管理職を置いて階層的な組織構造を形成しています。
一般的に管理できるとされている人数とは
様々な研究から、一般に一人の管理職が管理する適正人数は、業務内容やタスクの量にも左右されるものの概ね5~8人、最大でも10人程度だと言われています。
当時世界最強の軍隊であったモンゴル帝国において部下管理の単位が10人であったと言われており、現代においてもAmazonのCEOのジェフ・ベゾス氏が「2枚のピザ理論(チームの最適な人数は2枚のピザを分け合える程度(5~8人)である)」を提唱するなど、様々な場面で同様の説が信じられてきました。
これらの人数は、一人の管理職が部下を適切にまとめ目標の達成に向けて組織として指揮していける、というだけでなく、部下の目標遂行状況の評価や育成や指導を行っていく上での適正人数でもあります。
スパン・オブ・コントロールの人数を決定づける要素と理由
一般的な適正人数は上記のとおり5~8人程度と言われているものの、その人数は具体的な状況によって異なります。
チーム内のメンバー間の連携が多い場合には互いにマネジメント補助し合うことができ管理職の負担は少なくなりますが、連携が少ない場合には、マネージャーはメンバーと個々に対応していかざるを得ないため、対応できる人数は少なくなります。
シングルタスクでメンバーの業務内容が同じ場合は、より多くの人数をマネジメントできますし、部下に多くの権限を与えればマネージャーの負担を減らすことができます。マネージャー自身のマネジメント以外の業務量の多さも人数に影響を与える指標の一つです。
スパン・オブ・コントロールを超えた人数を設定してしまった場合に及ぼされる悪影響
スパン・オブ・コントロールを超えた人数を設定してしまった場合には、メンバーが孤立してしまいチームがうまく機能しません。成果を出すことが難しいだけでなく、メンバーの教育や能力開発にも悪影響を及ぼします。
チームの統制が取れず混乱することで職場の風土が悪化し、人間関係も悪くなってしまいます。
適切な組織人数で運用し、健全な組織運営を
スパン・オブ・コントロールとは経営学用語で、1人の上司がどれだけの部下を直接管理できるかを意味する指標です。
組織が拡大し、人数が増えるにつれて直接管理できなくなるため、上司の数を増やして部下の人数を最適化する、権限を委譲してスパン・オブ・コントロールの人数を増やすなど、健全な組織運用を行うための工夫が求められます。