副業・兼業を禁止できる場合とできない場合とは?裁判例をご紹介!

副業・兼業を禁止している企業の割合とは?

副業・兼業とは、職務以外の他の業務に従事することを意味する言葉です。

副業・兼業については、厚生労働省が平成30年1月にモデル就業規則を改定し「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除して「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と記載したことによって、大きな注目を集めました。

副業・兼業を希望する労働者が増加しているのに対して、リクルートキャリアの調査によると、副業・兼業を推進・容認している企業は28.8%とあまり多くない状態です。

兼業・副業を容認・推進・禁止している割合
出典元『リクルートキャリア』兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)

副業・兼業を認めるかどうかについては、過去の裁判で「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、労務提供上の支障となる場合、企業秘密が漏洩する場合、企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合のみ」という判例が出ています。

判例を要約すると「本業務に著しく支障が出たり、会社の秩序を乱すようなことがなければ副業・兼業は認めるべき」ということになります。副業・兼業を禁止している企業が多いですが、法的には一部の例外を除いて禁止できないのです。

今回の記事では、副業・兼業を禁止できる場合と禁止できない場合の違いについて、実際の裁判を例に挙げてご紹介します。

副業・兼業を禁止できる場合と禁止できない場合の違いとは?

副業・兼業を禁止できる例外的なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 本業に明らかな支障がある場合
  2. 同業他社・競合会社で働く場合
  3. 副業が本業との競合関係になる場合
  4. 本業の信用を失墜させる可能性がある場合

1.本業に明らかな支障がある場合

副業・兼業を禁止できる例外的なケースの1つ目として、本業に明らかな支障がある場合が挙げられます。

企業と社員が結ぶ雇用契約では「決められた勤務時間内に確実に価値のある労務を提供すること」が求められます。勤務時間の間に長時間の副業を行ったり、企業への労働が誠実に提供できない場合、または支障をきたすことが明らかな場合には、副業・兼業を禁止できます。

2.同業他社・競合会社で働く場合

副業・兼業を禁止できる例外的なケースの2つ目として、同業他社・競合会社で働く場合が挙げられます。

同業他社・競合他社に勤務して本業の企業に損害を与えたり、同業他社・競合他社の利益への貢献によって本業の会社に間接的な損害を与えたりする場合、または与え得るとみなされる場合には、副業・兼業を禁止できます。

3.副業が本業との競合関係になる場合

副業・兼業を禁止できる例外的なケースの3つ目として、副業が本業との競合関係になる場合が挙げられます。

本業と同じ顧客に競合となる商品やサービスを提供したり、本業の取引先から仕入れを行うなどした場合、本業の会社への背信的行為とみなされる可能性が高いでしょう。前項の内容と近いですが、副業・兼業先が本業と同業種の場合は禁止できる可能性が高いです。

4.本業の信用を失墜させる可能性がある場合

副業・兼業を禁止できる例外的なケースの4つ目として、本業の信用を失墜させる可能性がある場合が挙げられます。

社員が副業・兼業先で犯罪行為を行ったり反社会的な勢力と関係を持ったりした場合、犯罪者や反社会的な人間が勤めている企業という認識が広まり、企業の信用を大きく失墜させる危険があります。副業・兼業先が犯罪や反社会的な行為に関わっている場合は、副業・兼業を禁止できます。

副業が禁止できなかった裁判例とは?

前項で挙げた例のような場合には、副業・兼業は認められないと裁判で判決が出ています。では反対に、副業・兼業が認められた裁判例にはどのようなものがあるでしょうか。

  1. 十和田運輸の事例
  2. 東京都私立大学教授の事例
  3. 国際タクシーの事例

1.十和田運輸の事例

運送会社の運転手(原告)は、運送会社で家電製品を小売店に配送する業務に従事していましたが、年に1~2回の頻度で運送先の小売店から家電製品を引き取ってリサイクルショップに持込んで代価を受けていたことが発覚し、懲戒解雇となりました。

十和田運輸の事例では裁判の結果、解雇は無効とされました。無効となった理由としては「職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできない」というものでした。

副業は年2回程度に過ぎず、原告の行為によって会社の業務に具体的な支障はありませんでした。また、原告は会社が許可あるいは黙認していると認識していたため、副業が禁止されているという認識がありませんでした。

会社側(被告)は「本業の信用を失墜させた」と主張しましたが、原告が職務専念義務に違反し、会社との間の信頼関係を破壊したとまではいえないと判断されました。

2.東京都私立大学教授の事例

大学に所属していた教授(原告)は、大学に無許可で語学学校講師などの業務に従事しており、懲戒解雇を宣告されました。

東京都私立大学教授の事例では裁判の結果、解雇は無効とされました。無効となった理由としては「副業は夜間や休日に行われていて、本業への支障は認められない」というものでした。

東京都私立大学教授の事例では「同業での勤務」や「本業に支障を与える可能性」が争点となっていましたが、語学学校での業務が大学の事業に悪影響を及ぼすとはいえず、また私生活における兼業が労務提供に支障しない程度であると判断されました。

3.国際タクシーの事例

タクシー会社に勤務していた原告は、父親が経営する新聞販売店で新聞配達や集金など業務の手伝いをしていたことから、就業規則違反として懲戒解雇を受けました。

国際タクシーの事例では裁判の結果、解雇は無効とされました。無効となった理由としては、タクシー会社の所定始業時刻より前の約2時間で手伝いをしていて、月収も6万円と低額だったことから「会社の企業秩序を乱し、会社に対する労務の提供に格別の支障を来たす程度のものとは言えない」というものでした。

しかし、原告はタクシー会社の勤務時間内に新聞販売店の業務を行い、約15万円の月収を得ていた時期がありました。これについては雇用契約違反であり「本業に明らかに支障をきたす」として、裁判所も「企業秩序に影響を及ぼし、労務の提供に支障を来たす程度に達している」と認めましたが、解雇するまでの理由には至らないとされ、解雇は無効となっています。

副業・兼業を禁止する際は専門家に相談しよう!

自社で副業・兼業を認める場合は、単純に副業・兼業を容認するだけではなく、法令に則った運用方法を事前に準備する必要があります。

現在の日本では副業・兼業を禁止している企業が多いですが、法的には一部の例外を除いて禁止できないことが定められています。しかし、禁止できそうな事例であっても禁止できないという判決が出ている裁判の例もあり、法律に詳しくない人間では判断が困難です。

自社で副業・兼業を禁止するのであれば、妥当な理由があるかどうかを判断する際には必要に応じて弁護士などに相談して、事前に確認しておくとよいでしょう。

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