正常性バイアスとは?危機管理としてもバイアスを認知することが大切

日常の生活の中で頻繁に見られる「正常性バイアス」

地球温暖化の影響か、ここ数年、私たちの想像を超えた量の雨が、しかも長時間にわたって降り続くというケースが増えています。豪雨災害では、避難するタイミングの難しさが常に浮き彫りになっています。「まさか自分の家がこんなことになるとは思ってもいなかった」と考える方も多いと思いますが、本当は危険な条件がそろっているのに「自分は大丈夫だ」と思い込んでしまう心理を、専門用語で「正常性バイアス」といいます。正常ではないことを受け入れることができない脳が、勝手に「大丈夫」と決めつけてしまう心理的な現象です。実際に大変な事態になって初めて「こんなはずではなかった」と後悔するのです。

こういった「まさか自分に…」という思い込み、「正常性バイアス」は、日々の仕事の中でも頻繁にあるものです。正常性バイアスは誰もが陥りやすく、会社やチームといった組織では同調圧力もかかるため、自分の判断に正常性バイアスがかかっていないか、将来のトラブルに対する備えはできているかなどを常に意識することが大切です。

今回は、仕事における正常性バイアスが会社に与える影響についてご説明します。

正常性バイアスとは?まだ大丈夫だと思いこむ現象

正常性バイアスとは、災害心理学等において頻繁に用いられる用語で、人が危機や何かの異状に直面した際に現実を素直に受け止めることができず、物事を過小評価もしくは楽観視をして「まだ大丈夫」と思い込もうとする傾向を言います。本来は、人が物事に過剰に動じることなく日常を問題なく過ごすために必要なレベルの平静を保つための心の働きで、人間に必要な心の働きです。しかし非常時には正常性バイアスが災いし、自然災害などの非常事態に人が逃げ遅れる原因でもあり得るとされています。

企業における組織行動でも同じことが起こる可能性があります。目前の問題には難なく対応できますが、将来起こりうる可能性がある危機にはつい鈍感になってしまい、対応が後回しになってしまうことはよくあります。あったら安全性が高まるシステムや、多様な働き方をサポートするための仕組みづくりなどです。

正常性バイアス自体は日常生活では役に立ちますが、災害や会社の不祥事など、日常にはない非常事態になった時は「まだ大丈夫」という気持ちが、より物事を深刻にしてしまうものです。

正常性バイアスが会社や組織に与える問題点について

2013年、オックスフォード大学は人工知能やロボットに代替可能な仕事・職種の一覧を発表しました。米国の47%の職種はロボットへの代替が可能で、今後多くの人が無職になるとされています。この記事を読んで「まだ自分は大丈夫だ」と感じる人は、「正常性バイアス」が働いています。

危機感に対するフィルターは組織自体にも働くもので、さまざまな問題を引き起こします。事業の撤退や倒産など、いつ何時何があるかわかりません。リーマンショック時のように、一夜にして会社の業績が傾き、昨日まで絶対と思われていた企業が数日で破綻することは実際に起こりうることです。人も組織も常に最悪の状況を考えることで、健全な生活や組織運営を実現することができるのです。

正常性バイアスに無意識でも影響を受けることは、最悪の事態に備えることができず、組織が危機に陥った時に迅速かつ適当な対応をすることができません。常に危機感を持ち、最悪な状況になったとしても次の行動に移せる準備をすることが重要なのです。

正常性バイアスの具体例について

どの企業の経営陣やマネジャーは「とんでもない大事故が起こるかもしれない」ことを恐れ、未然に防ぐためにも危機管理について社員に事細かに指導します。一方で社員自身は、自分は大丈夫だろうと勝手に思い込み、対応を現実的に考えていないことが往々にしてあります。

あるメーカーの工場では、正しくヘルメットを着用することが義務づけられています。しかし実際には、決められた通りにヘルメットをかぶっていない従業員がいるとします。注意されても「そのうち締めるから」という返事だけをして、他にやるべき作業があれば忘れてしまいます。しかし実際には、きちんと装着されていないわずかな時間にも事故は起こる可能性があります。社員の「意識が低い」と一言で片づけるのではなく、誰もが正常性バイアスにかかるもの、という認識を持つことが重要なのです。

過重労働などの問題も、多くは「正常バイアス」が働いていると言われています。防止対策が国を挙げての喫緊の課題であることは誰もが知るところですが、まだ少なくない人は「リスクはリスクに過ぎない。まだ対応しなくても」という正常性バイアスが働いていると言われています。

身近に過労な人がいたとしても、社員自身はもちろん、家族や上司などの当事者たちが危険性を理解していなければ、「無理をして働き過ぎなのでは」と認識しても行為を止めることはなかなかできないのが現状です。最悪の場合、過労死して初めて「もっと早く止められたのでは」と誰もが後悔することになります。労使双方が自律的にリスクヘの対処を決めることも大切なのです。

正常性バイアスの対策方法について

正常性バイアスは誰もがかかりやすいものです。ルーティン業務だからと何となくで作業をしたり、今までの慣例通りだからと業務に不具合があった場合でも十分に対応しないなど、組織全体がそこにある危機を感じにくい状態にあっている場合は、社員の意識はすぐには変わりません。業務におけるリスク管理を徹底し、一人ひとりが常に意識を高く持って作業できるようになるまで継続し、習慣化することをオススメします。

習慣にするまでは上司がチェックしたり、本人にチェックリストに書き込んだりしてもらうという作業が必要です。習慣になってしまえば自主的にやるようになります。大事なのは誰でも陥る正常性バイアスに支配されているのだと理解することです。

スウェーデンのNGO団体The Natural Stepのカール=ヘンリック・ロベール博士によると、「正常性バイアス」への対策についての考え方を、以下のようにまとめています。

  1. 将来に起こるであろうことを科学的にキャッチし、あらかじめ、将来の制約条件を知っておく
  2. 将来の制約条件を織り込んで、どういった価値を提供するのかビジョンとして描く
  3. そのビジョンを実現させるための鍵となる領域を明確にし、今できることと将来のために投資することを明確にする

正常性バイアスに左右されず、将来にむけて必要な準備を組織として実施するためには、上記の3項目に取り組むことが有用だと言われています。

日々の些細なことにパニックに陥らず平常心を保てるのも「正常性バイアス」のおかげですが、デメリットもきちんと把握しておくことが将来的にも持続可能な組織を作る上での大前提となります。その上で「将来のために、今何ができるか」を考えていくことです。

危機管理として正常性バイアスの認識を深める

正常性バイアスは主に事件や災害などで使われることの多い言葉ですが、ビジネスシーンにも影響のある心理です。

正常性バイアスは誰もが陥りやすく、会社やチームといった組織では同調圧力もかかるため、自分の判断に正常性バイアスがかかっていないか、将来のトラブルに対する備えはできているかなどを常に意識することが大切なのです。

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