問題視される日本企業の長時間労働
日本は諸外国に比べ平均労働時間が長く、長時間働いている労働者の割合も高いことが分かっています。長時間労働の弊害は様々に指摘されており、日本政府も、4月1日に施行された働き方改革関連法案に労働時間規制を盛り込むなど対応を急いでいます。また、長時間労働はうつ病や過労死などの問題とも密接に関わっているため、個人の精神や生活を破壊してしまいかねない深刻な問題です。
長時間労働が引き起こす問題は企業にも及びます。長時間労働は社員の生産性を落とし、業績に深刻な影響を与えるだけでなく、働き方を画一化させ女性や外国人が働きにくくなってしまったり「ブラック企業である」という噂が流れて求職者が減ってしまったり商品やブランドのイメージが悪くなってしまうなど、その影響は多岐に及びます。
今回は長時間労働を抑制するための対策方法や施策例について説明していきます。
長時間労働抑制のための対策方法とは
労働時間の削減は、多くの日本企業がこれまで取り組んできたものの、限られた企業でしか効果を出せませんでした。
今回は、長時間労働の抑制に効果を上げた企業の実際の取り組みや効果を出す上で欠かせないポイントを見ていきましょう。
1.労働実態を正しく把握する
時間外労働を減らすためには、どのような部署でどのくらいの時間外労働が行われているのか、現状を把握する必要があります。
時間外労働を見える化して会社としてしっかり把握し、人員配置や仕事量などについて管理職や現場の意見を交えながら問題をあぶり出して、改善につなげていきましょう。
2.管理職研修の実施
長時間労働の原因として「管理職の意識・マネジメント不足」が挙げられたように、管理職の意識改革やメネジメント研修の実施は必要不可欠です。
一時的なものでは効果が薄れてしまうため、定期的に研修を行い、部下からのフィードバックも合わせて行うことで確実な運用につなげましょう。
3.人事評価制度・項目を見直す
残業の理由が「長時間労働を良しとする職場環境」や実際に長く会社に残る人が評価されているといった理由であれば、評価制度を見直す必要があります。
限られた時間の中で成果を出す社員が評価されるような生産性重視の評価制度に変えていく必要があるでしょう。
4.会社としての強い姿勢を打ち出す
経営トップから強いメッセージを打ち出すことは社員の意識を変える大きな原動力となります。明確な目的や目標、わかりやすいスローガンなどと組み合わせることで効果はより一層発揮されるでしょう。
経営陣と合わせて、人事部からの継続的な発信を続けることで、取り組みを一過性のものではなく長期的に続けていきやすくなります。
5.ノー残業デーなどの制度による抑制
表面的な取り組みに終わるリスクもありますが、従業員を半強制的に帰宅させたり、残業可能時間に制約を設ける、あるいは一定の時間になったらPCを強制的にシャットダウンすることで実効性のある残業抑制が可能です。
ただし業務実態の把握を適切に伴わなければ、持ち帰り残業が増える、あるいは申告せずにサービス残業を行うなど、帰って問題を悪化させることになるでしょう。
6.年次有給休暇の取得促進
残業抑制と合わせて、有給休暇の取得を促進することで、社員の労働時間を抑制することができます。
休暇取得計画を設定しその計画が実行されるようなフォローを行ったり、部下の有給取得状況を上司の評価項目に盛り込むなど、有給を取得しやすい雰囲気の情勢に努めましょう。
解決すべき問題に優先順位を付けて対応しよう
長時間労働への対策には様々な施策があるため、自社の抱える問題や自社で長時間労働が発生している原因にあわせてそれを解決するためにベストな施策を選択する必要があります。
今回触れなかった解決方法として、労働生産性の向上を行う方法も挙げられます。業務内容の見直しやRPAの導入だけでなく、社内コミュニケーションを活性化するなどの人間関係を改善する、離職率を改善するなどの方法も有効です。
まず自社で何故長時間労働が発生しているのかの原因を追求し、取り組むべき施策に優先順位をつけて改善していくことが重要になるでしょう。