海外で長時間労働が発生しにくい理由とは?日本の現状と取組を知ろう

長時間労働の弊害とは?

長時間労働は社会的問題となっており、多くの企業で是正に向けた取り組みが行われています。うつ病のような精神疾患や仕事に対するモチベーションの低下など、慢性的な長時間労働は社員の生活を破壊し、少しの休養では回復不可能なほど深刻な症状や過労死などの取り返しのつかない結果を招いてしまうこともあります。

時間外労働が一般化してしまった職場では、一般に社員の生産性が低いことに加えて、働き方が硬直化し、女性や外国人などの多様な人材を受け入れる幅が作れずに、時間外労働を慢性的に続けられる人材というように社員の層が画一化してしまいます。時間外労働が多い職場は求職者にも評判が悪くなり、入社希望者の減少にも繋がってしまいます。

現在政府が推進する働き方改革関連法案にも時間外労働の上限規制が盛り込まれているなど、政府も対応に乗り出しています。その背景には、女性の社会進出の促進など経済的な要因が大きいとされていますが、企業レベル、社会レベルでの再三の取り組みにも関わらず、日本の長時間労働者の割合は諸外国に比べても高いものであり続けています。

日本や日本の企業において長時間労働が中々改善されないのはなぜでしょうか。海外ではどのような取り組みがなされ、効果を上げているのでしょうか。

今回の記事では、海外における取り組みから、日本における問題を考えていきます。

海外の労働時間が短い理由とは?

先進国の多いヨーロッパでは、労働時間が低く抑えられています。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、日本の長時間労働者(週49時間以上働く労働者)の割合は、2016年時点で20.1%(男性では28.6%)となっています。ヨーロッパ諸国で最も割合の多いイギリスは12.2%、最も低いスウェーデンでは7.1%となっています。イギリスもスウェーデンの労働者一人あたりの生産性は、日本よりも高い国となっています。

日本よりも、労働者一人あたりの生産性が約1.5倍高いアメリカでも16.4%と、日本と4%近くの差があります。

長時間労働の割合(就業者)
出典元『独立行政法人 労働政策研究・研修機構』データブック 国際労働比較 2018

労働者あたりの労働生産性と国際比較
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

では、日本よりも長時間労働者の割合が低い理由はどこにあるのでしょうか。

労働時間の「上限」が明確に定められている

ヨーロッパでは、戦後の高度成長期に各国で労働時間の短縮化が進み、法律上の労働時間の基準が1日8時間、週35時間から40時間前後となりました。

フランスでは2000年代に制定されたオブリー法により、法定労働時間が40時間から35時間に引き下げられました。ドイツには、週6日最大48時間までという法規制があるものの、労働協約により、ほとんどの業種で週40時間以内に抑えられています。オランダでは法律上は週60時間を上限としていますが、現在の産業別労働協約では平均38時間となっています。デンマークも労使協約によって週37時間と定められ、シフト制で夜間勤務などに就いている場合はさらに短くなっています。スウェーデンやフィンランドなども、原則週40時間までしか働けません。

法律で労働時間の上限が明記されている、あるいは法律に加えて労働協約があり、それを厳格に守ることで定時退社を可能にことがわかります。これらの国において明示されているのは労働時間だけではなく、残業時間についても同様です。

「最長労働時間は1日10時間、週に48時間、ただし、週の平均労働時間が連続12週間にわたり44時間を超えてはならない」と細かく定められたフランスを始めとして「1日の労働時間は10時間以内、6カ月ないし24週平均して1日あたり8時間まで」とされているドイツなど、サブロク協定を結べば実質上限なく残業をさせることが可能な日本の法律に比べて、法律で労働者を守るという意識が強いことが伺えます。

成果主義、タスク管理が徹底されている

ワークシェアリングという考え方が誕生したオランダなどでは、個人の業務範囲が明確であり、自分の業務で成果を出していれば、どんな働き方をしてもよいと考えられています。

スウェーデンなど北欧の国では、毎週金曜日はフレキシブルデーとされており、基本的に働くのは月曜日から木曜日の4日間で、仕事が残ってしまった人のみ会社あるいは自宅で働くのが普通です。個人の週あたりの業務量が適切に管理されているためにこのような働き方が可能になっています。

ドイツなどでは、業務が少ない時期は早く帰宅し、繁忙期の残業時間を振替えるのが一般的です。このように、業務量やタスクに応じた柔軟な働き方が労働時間のバランスを保っています。

自社の価値観を変えていく努力を

日本では長時間労働が社会問題となっていますが、海外では長時間労働を是正するための取り組みが様々に行われています。

価値観や考え方の違いもあるため、日本企業全体として取り組むことが難しい施策もあるものの、一企業として価値観や考え方を変えていく努力や、自社で長時間労働が発生している原因を追求し、一つ一つ取り組んでいくことが求められています。

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