継続して成長し続ける組織作りのために必要なこと
日本能率協会の調査によると、組織開発や事業拡大の重要性や課題に関して、現在の短期的な経営課題としては「収益性の向上」や「人材の強化」などが上位に挙げられています。ところが、5年後の経営課題となると、「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」など、根本の事業戦略や方針の見直しをあげている企業が多く存在します。
出典元『一般社団法人 日本能率協会』日本企業の経営課題2018
現在の課題の過去の10年間の推移を見ると「新製品・新サービス・新事業の開発」と「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」、「品質向上」が右肩上がりで上昇しています。
出典元『一般社団法人 日本能率協会』日本企業の経営課題2018
リクルートマネジメントソリューションズの調査では、新規事業創造の障害として「社員の関心・力量の不足」や「経営の力量不足」が課題として挙げられています。
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』新規事業創造に関する人事の実態調査
今回は成長し続ける組織において重要な「ラーニングオーガニゼーション」について説明します。
ラーニングオーガニゼーションを実施する方法とは?
ラーニングオーガニゼーションとは「人々が継続的に能力を広げ、望むものを創造したり、新しい考え方や普遍的な考え方を育てたり、人々が互いに学びあうような場」のことで、学習組織を意味しています。ラーニングオーガニゼーションは、マサチューセッツ工科大学のピータ・センゲ教授が提唱しました。
学習組織とは、全ての社員が継続的な学習によって組織の問題発見と解決に関わり、組織全体を継続的に向上させていることを指します。組織自体が学習し、組織メンバー一人ひとりが責任を持って業務を行う中で創造性を高め、組織として個々人の力を結集するスキルを養っていくことを目指しています。
ラーニングオーガニゼーションの目的について
ラーニングオーガニゼーションが生まれた背景には、時代の変化が挙げられます。技術、知識がどんどん進化し、時代が変化するスピードは年々早まっています。知識・ノウハウが陳腐化し、情報のアップデートを進めることが重要となってきました。自ら現場で新しい知識を学習し、情報・ノウハウを身につけ、主体的に行動していく必要が生じてきたのです。
今までのようなトップダウンでの教育や指導では追い付かず、統一性や均一性などを重視していた今までの組織では変化に対応できなくなってきました。現場の組織で自ら学び、アップデートしていくラーニングオーガニゼーションの必要性が求められるようになりました。
それぞれの組織で変化を先取りし、価値を創造することを目的として自ら学習する組織、ラーニングオーガニゼーションが生まれたのです。
ラーニングオーガニゼーションを実現する方法について
ラーニングオーガニゼーションを実現する手段として挙げているのは次の5つの構成要素です。
1.システム思考を持つ
システム思考とは、ひとつの概念の枠組を形成することです。全体のパターンを明らかにし、それを有効に変えていくことで、ビジネスにおける構造的相互作用を把握する力のことを指します。
システム思考を持つことで各メンバーが組織内でどのような役割を担っているかを相対的に把握・認識することができます。
2.自己実現の達成
メンバー一人ひとりが自己を高める意志を持つことです。個人の視野を常に明確化し、現実を客観的にとらえ、深めていくことを指します。
個々のメンバーが自己を高める意志を持つことで、メンバーそれぞれが自身の能力向上に積極的に取り組んでいき成長に繋がります。
3.メンタルモデルの克服
固定化されたイメージや、凝り固まった考え方を克服することをいいます。自分の中にあるイメージを見つけ出し、それを精査し改善していくことが必要になります。
固定観念から脱却することで、今までの古典的なやり方にとらわれずに、状況や環境に適応した柔軟な思考を持つことができます。
4.ビジョンを共有する
メンバーと組織が目指す共通のビジョンを設定することです。組織は目指す姿や目標を共有することで一体感が醸成できます。
組織メンバーを結束させ、個人と組織のビジョンに整合性を持たせることはラーニングオーガニゼーションには欠かせない要素となります。
5.チーム学習の実施
ラーニングオーガニゼーションでは組織全体の学習が必要と説いており、個人ではなくチーム全体が学べなければ、組織は学ぶことができないという考えを持っています。
組織全体で対話し、高いレベルで学び合うことで組織と個人の成長を促します。
ラーニングオーガニゼーション実践を検討してみよう
ラーニングオーガニゼーションとは、学習する組織のことであり、組織に属する全員が組織に対する課題発見と解決を行う組織のことです。
ラーニングオーガニゼーションを実現するためには、構成要素の実践が求められるため、各要素についてどのように進めていくべきか、自社で検討して最適な方法を見出す必要があるでしょう。