企業の教育研修における効果測定の重要性
会社の成長と人材育成に関しては、切っても切り離せない関係にあると考えられ、多くの企業が人材育成を目的とした、教育研修に力を入れています。
産労総合研究所が実施した「2018年度(第42回)教育研修費用の実態調査」によると、企業が社員への教育研修費用として準備している予算は8,017万円で1人あたりに換算すると47,138円です。この数値は3年連続で増加しており、企業が人材教育にかける熱意や優先度の高さが伺えます。
出典元『産労総合研究所』2018年度 教育研修費用の実態調査
リクルートが従業員500名以上の教育制度や教育プログラムに携わる管理職を対象に行った調査結果によると、教育研修を行った企業でその効果計測を実施している企業は半数以上に登ります。しかし、そのおよそ9割は効果測定内容に満足はしておらず「今後、もっと検証すべき」として回答しており、効果測定の方法や内容に関して、現実的には難しいということが分かります。
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』人材開発担当の声から知る研修効果検証の実態
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』人材開発担当の声から知る研修効果検証の実態
教育研修の効果測定に有効的な手段として、カークパトリックモデルの4段階評価方法について説明します。
カークパトリックモデルなら効率的かつ正確に教育研修実施の評価ができる!
カークパトリックモデルとは、1959年にアメリカの経営学者であるカークパトリック博士が、教育の評価方法のモデルとして開発した考え方です。カークパトリックモデルを用いることにより、教育研修を受講した結果、参加者がそれに満足しているか、実際に受講して知識やスキルが向上したか、また学習したことが実践に生かされているのかなど教育研修実施における結果の測定を明確にすることが期待できます。
カークパトリックモデルを用いて評価を行う際には、カークパトリックモデルで定められている評価基準に沿って、評価を行います。定められた評価の基準は4段階にレベル分けをされており、それぞれのレベルに教育研修にで得られた効果を当てはめながら、実際に評価していきます。その具体的な評価基準においては、以下の4段階に分けられており、その活用方法や注意点についても紹介します。
1.Reaction(満足)
受講者の反応をアンケート調査などで確認し、学習者の研修に対する満足度を評価します。
活用方法や注意点について
多くの企業では受講後にアンケートなどを実施することで、参加者の声を聞き取り満足度を評価しています。簡単に実施することができる反面、研修自体の本質的な評価に結びついているかの判断基準としては、これだけでは不十分だと言えます。
総合的な判断をするためには、ほかの評価と組み合わせて判断する必要があります。
2.Learning(理解)
ロールプレイ確認やテストなどを通じ、実際に学習者が受講した研修で知識やスキルが向上したのかを評価します。
活用方法や注意点について
研修実施前と終了後すぐにテストやロールプレイで、その研修で学んだ知識やスキルが理解されているかを判断します。
直後の評価であればあるほど、誰でも研修後すぐにはその知識やスキルを理解できていても、実際にそれがいつもの現場の中で活かされるかまでは保障することができません。あくまで、その研修での理解度評価だと言えます。
3.Behavior(実践)
学習者が研修で受講した内容を、実際に行動に移すことができたかを評価します。
具体的な方法としては、研修実施後3ヶ月~6ヶ月に上司や同僚、顧客にアンケート調査を実施し、その結果を持って評価につなげます。
活用方法や注意点について
他者が評価することに加え、自己評価をすることも可能です。単純に行動の変化が達成できたかどうかだけではなく、達成できなかった場合今後の改善の為にはその理由も分かることが理想です。
掘り下げた評価をするためには、評価項目の洗い出しや評価する人の教育など、事前の準備に時間や労力がかかるため、実施までのハードルが高いのが難点といえます。
4.Business Results(結果)
実際に学習した内容がビジネスの場面においてどのくらい生かされたを評価します。
評価項目は実施する企業(主に経営者)が求める期待値により異なりますが、売上や生産性の向上、顧客満足度などを指標として評価につなげます。
活用方法や注意点について
この評価で主に判断基準として活用されるのは、期間を決めて算出されてた業績に関わる数字や顧客アンケート結果になります。スポンサーに対しては非常に説得力のある評価と言えますが、この評価には直接研修で得られたことと関係がない結果もしばしば含まれている事があります。
世間のブーム等による一時的な売上アップなど、必ずしも研修により得られているであろう今後の継続的な結果として捉えられるものではないということは理解しておく必要があるでしょう。
カークパトリックモデル実施には事前準備が大切
カークパトリックモデルを導入することは、今まで曖昧だった教育研修に対する評価や効果をより明確に測定することができます。教育研修の効果測定は、今後の教育研修に対する内容の見直しや改善にも役立ちます。
カークパトリックモデルをより効果的に実行するためには、教育研修前の企画段階において、それぞれの研修内容に合わせた評価方法や計測方法について具体的に検討し明確化させるておくことが重要だと言えます。