労働生産性の向上を業務改革から考える
BPRとは、Business Process Re-engeneeringの略語で、日本語では「業務改革」を意味します。政府が押し進めている働き方改革への対応としてBPRが注目を集めています。
BPRは1990年代の長期不況にあえぐアメリカで生まれ、日本においてはバブル崩壊後の事業効率化のためのフレームワークや事業の立て直しのための取り組みとして注目されるようになりました。
最大の特徴は既存の業務内容や業務フローの改善にとどまらず、組織構造やルールを含めた企業のあらゆるプロセスを抜本的に見直すことにあります。この特徴ゆえに、長期的な不況や社会の変革期など、小さな業務改善や軌道修正では済まないような大きな改革が必要になった時期に重要性が高まり大きの企業に取り入れられる傾向があります。
BPRが再び注目されている
日本能率協会コンサルティングの調査によると、2014年においてBPRに取り組んでいる企業は全体の七割にもなります。市場のグローバル化やテクノロジーの発展により、市場の予測が不可能なVUCAワールドになっているだけでなく、労働力人口の減少や働き方改革関連法案の整備による長時間労働の是正、労働生産性の向上などによってBPRは再度注目され始めています。
参考URL『日本能率協会コンサルティング』「BPR(業務の抜本的改革)」に関する実態調査報告書
BPRの意味や目的とは
BPRとはBusiness Process Re-engeneeringの略で、日本語で「業務改革」を指します。
BPRは企業を立て直す際や大きな目標に向かって業務を再編成する際に用いられてきました。BPRの重要な特徴は4つあります。
「現在の事業を根本的な視点から問い直すこと」「表面的なものではなく既存のものをすっかり捨ててしまうような抜本的な改革であること」「漸進的な改善ではなく劇的な目標の達成を目的としていること」「ビジネス・プロセスを顧客に対して価値のある行動を生み出すアウトプットの集合と定義し直しそれに対する必要なものだけをプロセスに残すこと」です。わかりやすく言えば、業務のプロセスの根本的な見直しを含む抜本的な改革です。
BPRと業務改善との違いについて
多くの企業で行われる、BPRに似たようなものに業務改善が挙げられます。
業務改善では、品質管理、手順の再整備、承認プロセスの見直し、アウトソーシングなどの手法によってコスト削減や業務効率の向上、従業員の意識など部分的な効果を目的としています。BPRでは権限委譲の強化や企業再編など企業全体を巻き込むような大規模な取り組みの中で主力事業や企業の収益構造が変わるような大きな変化も想定されています。
言い換えれば、業務改善は各業務フローの改善にとどまっているのに対し、BPRは各業務フローのつながりを含めた広い業務の見直しを意味しています。
BPRを実施するメリットについて
BPRを実施する大きなメリットは、普段の各業務フローごとに分割された視点を超え業務フロー全体を見直すことで、縦割りの非効率性から脱却する契機になることです。
無駄な業務や収益性の低い部門からの撤退により労働時間の短縮や人的コストの削減が見込まれます。更に意思決定のボトルネックの把握にも繋がり、意思決定の迅速化を促します。
BPRを実施するデメリットや注意点について
デメリットとして挙げられるのは、すべてのプロセスを完遂するまでには膨大な労力とコストがかかる上、途中でやめてしまっては企業全体に大きな混乱を招いてしまうことです。成功すれば効果の大きい改革ですが、リスクも大きいことは忘れてはいけません。
全社員の理解が必要な取り組みなので、しっかりとした理解が得られなければ「ここまでやる必要があるのか」といった抵抗を招きやすいので、それらを防ぐためには目的とゴール、そして改革のスケジュールを明確にするなどの対策が重要です。
時代に適した業務改革を
BPR(業務改革)は女性の活躍推進などの、多様な人材の活用や労働生産性の向上を課題として挙げている働き方改革によって再度注目されている概念です。
テクノロジーの発達によりビジネスモデルやビジネスプロセスの改革が求められている中で、時代に適した形で改革を進めることが重要であると言えるでしょう。