生産性や定着率を上げる組織開発が求められている
ホーソン実験に代表される人間関係論では、人間関係が生産性向上に影響を与えていること、Googleでは心理的安全性(自分の考えや感情を安心して気兼ねなく発言できる環境)が最も重要であると結論づけています。
Googleは、生産性の高いチームが持つ共通点を探し出すために、2012年に調査を開始しました。「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられた調査において、何百万ドルもの資金と約4年の歳月を費やした結果、心理的安全性が労働生産性を高める需要な要素であると結論づけました。
離職率は長年改善されておらず、大卒人材で約3割の人材が3年以内に離職する状態が続き、企業は新規人材の獲得と既存人材の離職防止という2つの課題に取り組まなければなりません。
内閣府が大規模に行った仕事に対する若者の意識調査においても人間関係は初職の離職理由として実に約4人に1人の若者に挙げられており、重要性がわかります。
今回はチームリーダーとメンバーの信頼関係を築く組織開発手法であるアシミレーションについて説明します。
アシミレーションとは?信頼関係を如何に築くか
アシミレーションとは、直訳すると「融和」「同化」の意味で、チームのリーダーとメンバー間の相互理解を深め、関係構築を促進する仕組みのことです。組織開発の手法の一つとして、組織内コミュニケーションの活性化や信頼関係の構築に活用できます。
具体的には、ファシリテーターと呼ばれる第三者の人材が入り、リーダーを除くメンバー同士で「上司について知っていることや要望」を引き出します。その内容をリーダーにフィードバックすることで理解を促進する手法です。
人間関係論や心理的安全性に代表されるように、チームメンバー同士が相互理解を行うことで、労働生産性の向上、結果会社の業績向上につながります。相互理解を行うことで、人間関係を理由とした離職も減少します。
アシミレーションの目的について
アシミレーションの目的は、チームのリーダーとメンバー間の相互理解を深め、関係構築を促進することです。
既存事業のビジネスモデルや業務内容を変更できない場合でも、アシミレーションを行うことで生産性が向上する可能性があります。また新規事業開発を行う上でも、メンバー同士が相互理解し、お互いの得手不得手を把握して長所を伸ばす・短所を補うチーム作りができれば、成功確率も高まります。
アシミレーションのメリットについて
アシミレーションでは、上司に対して知りたいことや要望を「匿名」として聞くことができます。直接では質問できないことであっても、匿名であれば聞けることは多々あります。上司の考え方や価値観、スキルなどについて知ることで、メンバーが状況に応じた対応ができるようになります。
アシミレーションにより相互理解が促進されることで、人間関係も良好になります。「ある状況下において、なぜこのように判断したのか?」という行動意図や価値観について理解が深まることで、価値観のミスマッチを理解することができます。
相互理解が促進されれば、労働生産性が向上し、結果会社の業績向上にもつながります。人間関係もよく業績も上がっている会社であれば、多くの離職が防げるだけでなく、中長期的な人材育成の実現、新規事業開発の成功、モチベーションの向上など、多くのメリットが得られます。
アシミレーションによるデメリットや注意点について
ファシリテーターの選定として、中立な立場であることが前提です。リーダーやメンバーのどちらかに思い入れがあると、中立的な意見を引き出すことが難しくなります。ファシリテーターは人事部などが担当することが多くあります。
ファシリテーターには、メンバーから多くの意見を引き出すヒアリングスキルだけでなく、上司にうまく意見を伝える質問力が求められます。目的が「相互理解」であることを忘れず、メンバーの本音や引っ掛かりをうまく引き出すことや、リーダーから「メンバーが知りたい以上のこと」を引き出すことも求められます。
メンバーの本音を引き出す中で、愚痴を言い合うだけになってしまう可能性もあります。例えば「この行動は嫌い」と意見が出たとしても、なぜその行動をしたのかという意図を質問したり、なぜ嫌いだと感じたのか?と問いかけることで、建設的な議論が可能になることを忘れないことが大切です。
チームリーダーとメンバー間の相互理解を深める
アシミレーションとは「融和」や「同化」という意味であり、組織開発の手法として、チームリーダーとメンバー間の相互理解を深めて関係構築する方法です。
一般的な方法であれば1チームあたり、アシミレーションは数時間~半日程度で終わります。様々な実証などから効果が挙げられている手法であり、比較的実施が容易ですが、悪口などにならないように適切に管理することが求められます。
リーダーとメンバー間のミスマッチを減らし、何がミスマッチしているのかを可視化する点でも、アシミレーションは有効な手法です。