新たな人材育成への取り組みがアダプティブラーニング
子供の学習状況や理解力に応じて、学習方法やレベルを調整しながら個人に合わせた学習が行える方法として、アダプティブラーニングという考え方が教育現場においては広く浸透しています。この考え方が企業の人材育成の現場にも広く活用できるのでは無いかとして、注目を集めています。
企業が導入を検討するべきアダプティブラーニングはeラーニングの一択となりますが、多くの企業が導入を検討しています。企業がアダプティブラーニングを導入するメリットとしては、学習者側(従業員)から考えると、時間と場所を選ばずに学習できることや有用な知識の収集やスキルアップに活用ができるなどが挙げられます。
提供する企業側のメリットとしては、常に最新情報や知識や情報を提供できる事により生産性やモチベーションのアップが期待できることや、従業員一人ひとりの学ぶ姿勢に対して学習機会を均等に提供することで従業員の満足度アップに繋がるといったことが挙げられます。
今回はアダプティブラーニングを導入し、成功している企業事例について紹介します。
国内企業アダプティブラーニング導入事例について
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)における導入事例
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は、北陸や近畿地方、中国地方を中心に鉄道路線網を持つ言わずとも知れた鉄道事業を担う日本を代表する会社です。社員数は4万7千人を超える大企業となっています。
JR西日本では、以前より運転マニュアルなどのペーパーレス化を目的とした取り組みを行っており、全運輸関係司令職員にはタブレット端末を活用し業務を行うことをしていました。
マニュアルのアップデートや業務内容や知識が多岐に渡る全運輸関係司令職員に、情報の発信や知識の共有、学習をもっと効率よく行えないかと検討したのが、アダプティブラーニング導入のきっかけです。実際に導入したアダプティブラーニングの種類は、アメリカと日本で特許を取得している記憶定着型学習エンジンの「Cerego」です。
「Cerego」の特徴としては、適切なタイミングで、何度も繰り返し復習問題を提示することで、知識が記憶として定着するまでの学習をサポートしてくれることです。その性能は開発国のアメリカだけではなく、日本でも高く評価されています。
JR西日本が「Cerego」を導入して一番大きく変わったのは、実際に利用する職員の学習意識が高まった事と、繰り返し学習が的確に行える様になったことです。今までペーパーやテストデータなどにあった学習教材を「Cerego」へ落とし込む作業は時間がかかりますが、一度インプットしてしまえば、定期的に見直しアップデートしていくだけという情報更新の手軽さもメリットとしてあります。
多くの人数を抱える大企業だからこそ、情報の伝達やアップデートを手軽にいち早く正確に行うことができるようになったことで、職員同士の意識の高まり、話題の提供による知識の高め合いなどにつながったのは、アダプティブラーニング導入の成功事例と言えるのでは無いかと思います。
株式会社三菱UFJ銀行における導入事例
株式会社三菱UFJ銀行は、言わずとも知れた日本3大メガバンクで、三菱UFJファイナンシャルグループ傘下の都市銀行です。社員数は5万4千人を超える大規模な組織です。
銀行での仕事というのは、お金にまつわる様々な知識が必要となります。しかし、5000人規模で入社してくる新入社員ひとり一人に対して、しっかりと教えることができるほどの教え手も確保が難しく、個々人で理解度にばらつきが出てしまうというのが新人育成に関する課題としてありました。
より効率的に、各人の進捗状況や理解度に合わせて、学習する方法はないかと検討している中で2016年4月から新入行員の金融知識習得にデジタル教材を取り入れる様になりました。実際に導入したアダプティブラーニングの種類は、凸版印刷が開発した金融機関向けのeラーニング「CoreLearn(コアラーン)」です。
「CoreLearn(コアラーン)」には銀行で働く為に必要な「法務」「税務」「財務」「為替」の4つのコンテンツがあります。三菱UFJ銀行ではその中でも自社に特化した学習内容をオリジナル盛り込んだ「骨太ドリル」を作成し導入しています。
理解度をチェックするための社内テストに関しては、前年比より16%も全体の点数がアップし、個人での理解がしっかりと深まっていることが分かりました。研修生同士が分からないところの知識共有や教え合うといったチームワークや人との繋がりという効果も実感できているようです。
自社独自の学習教材を導入するというのは大掛かりなプロジェクトでありますが、その分フィットしたときの効果というのはとても大きなものだと言える成功事例です。
自社に合ったアダプティブラーニングツールの選定が成功の鍵
アダプティブラーニングの企業への活用というのは、近年始まったばかりです。今後ますます活用が期待できる人材教育ツールだからこそ、導入を検討する際には企業事例や自社内での課題などについて洗い出し、慎重に検討する必要があります。
アダプティブラーニングを実施するためのツールには色々な種類があります。まずは自社の課題を明確にし、効果的な運用方法などをシミュレーションする中で、自社にとって最善の方法やツールを見つけ導入を検討することが大切です。