アプリシエイティブインクワイアリーのやり方とは?原理とステップを理解する

自社の強みや可能性に対して組織力を強化する方法

日本企業の経営課題には多くの課題が挙げられます。労働力人口の減少による労働力の確保、女性や外国人などの多種多様な人材の活用やダイバーシティの推進、新規事業開発など、時代の移り変わりとともに課題の内容や深刻さは変化しています。

日本企業の経営課題2016によると、経営課題として収益性向上や人材の強化、売上・シェア拡大が課題の上位を占めています。しかし10年間の推移を見ると、大幅な差異はなくなってきており、課題が複雑化していることが考えられます。

当面する経営課題の推移
出典元『一般社団法人日本能率協会』日本企業の経営課題2016

経営課題を解決する従来のアプローチは、生まれた課題・直面しそうな課題に対して解決策を講じる弱みに注目したアプローチ方法が主流でした。自社の弱みや失敗した原因を分析し、それらを排除する方法です。

アプリシエイティブ・インクワイアリーとは人材開発や組織活性化のアプローチ方法であり、個人と組織に置ける強みや真価、成功要因を発見して、それらの価値を最大限に活かした有効な仕組みを生み出すためのプロセスです。自社の弱みなどに起因する問題を解決するのでなく、強みを活かすことで、組織の理想像やビジョンを実現するための改善プロセスが明らかになる方法であり、様々な企業で実証され、成果が出ている手法です。

今回はアプリシエイティブ・インクワイアリーのやり方・方法について説明します。

アプリシエイティブ・インクワイアリーのやり方とは

アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)とは、価値を見つける質問を投げかけることで、人材や組織の持っている強みや良いところを発見し、利用しながら目標を達成するアプローチのことです。Appreciativeは「真価がわかる」「価値を認める」、Inquiryは「探求」「質問」などの意味を表します。

アプリシエイティブ・インクワイアリーは、米国で開発された人材開発や組織活性化のアプローチの一つで、ポジティブな問いや探求によって、個人と組織における強みや真価、成功要因を発見し、認め、それらの価値の可能性を最大限に活かした最も成果が上がる有効なしくみを生み出すためのプロセスを指します。

プリシエイティブ・インクワイアリーの8つの原理とは

プリシエイティブ・インクワイアリーをやるためには、まずは8つの原理について理解することが大切です。

  1. 構成主義の原理
  2. 同時性の原理
  3. 詩的の原理
  4. 想定の原理
  5. ポジティブさの原理
  6. 全体性の原理
  7. 体現の原理
  8. 自由な選択の原理

1.構成主義の原理

  • 私たちが認知している「現実」とは、客観と主観が混在した状態である。
  • 言葉や会話を通して、意味・現実・知識が社会的に作りあげられる。

2.同時性の原理

  • インクワイアリーは、介入である。
  • 質問を発した瞬間に、変化が生まれはじめる。

3.詩的の原理

  • 組織とは、開かれた本のように、学習、インスピレーション、解釈の終わりなき源である。
  • 何を選び検討するかが、わたしたちの知る世界に違いをもたらす。またそれは、わたしたちの知る世界を表現し、時にはそれを創り上げることさえもできる。

4.想定の原理

  • ヒューマンシステムは、自らがイメージする未来へと進んでいく。
  • 未来のイメージがポジティブで希望に溢れていればいるほどに、現在のアクションもポジティブなものとなる。

5.ポジティブさの原理

  • 大規模な変化を起こすモーメンタム(推進力)は、多くのポジティブな感情と、社会的なつながりを必要とする。
  • このモーメンタム(推進力)は、ポジティブ・コアを拡大するポジティブな質問によって、最もよい形で生成される。

6.全体性の原理

  • 全体性は、人、また組織の最善を引き出す。
  • 大規模なフォーラムにて関係ある人々が一堂に会することで、創造性が刺激され、集合的な能力が発揮される。

7.体現の原理

  • 本当に変化を起こすためには、私たちが「望む変化そのもの」にならなければならない。
  • 変化を起こすプロセスそのものが、理想的な未来を体現するモデルである時にポジティブ・チェンジは実現される

8.自由な選択の原理

  • 人々は、どのように、また何に貢献するかを選択する自由があると、よりよい行動をし、よりコミットする。
  • 自由な選択は、組織の卓越性とポジティブ・チェンジを誘発する。

プリシエイティブ・インクワイアリーの4つのサイクルについて

AIのプロセスは、発見(Discover)、夢(Dream)、設計(Design)、実行(Destiny)の4つのフェーズに分かれます。それぞれの頭文字をとって、4-Dプロセスと呼ばれます。そして、最初にどんなトピックについて話し合うのかを定めます。これをアファーマティブ・トピックと言います。

発見(Discover)

Discoverプロセスでは、各々の過去、現在、未来について話し合いをします。例えば2人1組となり、お互いをインタビューするというやりかたが行われます。アファーマティブ・トピックに関することで、過去で最高だった体験、それがこの組織で実現した未来はどんなものか、どんな気分でいるかなどについてお互いインタビューします。

数名(5~10人くらい)でひとつのグループを創り、インタビューを行った者はそれを発表しグループで共有します。

夢(Dream)

Dreamプロセスでは、Discoverプロセスで共有した各々の未来の姿に基づいて、組織の「夢や目標が実現した姿」を創ります。その場合、具体的にストーリーを創ります。例えば「感動を与える顧客体験」がアファーマティブ・トピックであれば、実際に顧客(役)に登場してもらって、感動を与えているシーンを演じてもらいます。

最後にグループごとに発表をしますが、シナリオを創って「スキット(劇)」で演じたり、絵やコラージュで表したり、見る人が具体的で印象が残る方法でそれぞれ発表します。

設計(Design)

次にDreamに向かってどんなことをするか、デザインします。具体的にはデザイン思考の様々な手法がここで使われます。

最終的にどのようなデザインをするのかを文章でまとめますが、これをプロボカティブ・プロポジション(刺激的な声明文)と言います。

実行(Destiny)

デザインに基づいて実行するフェーズです。

誰が何をするのか、計画を立ててシステムエンジニアリングの手法で実行するか、自己組織化的に進めていくか、テーマや組織によってあった手法で進めていきます。

明確化した強みやビジョンを従業員と共有する

アプリシエイティブ・インクワイアリーとは自社の強みや真価に着目することで、有効活用する組織開発手法です。まずは自社の強みを明確にしながら、どんな組織を目指すのかの理想像・ビジョンを明確にすることが必要です。

全従業員で取り組むためにも、明確にした強みやビジョンについては従業員に共有し、一方的に伝えるだけではなく双方が理解することが大切であると説明します。

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