成果最大化を科学する:人事・経営者が知るべき「誠実性(Conscientiousness)」の採用・育成・組織戦略
「真面目さ」という抽象的な美徳が、企業の業績を左右する最も強力な因子であることをご存知ですか?
近年、「データドリブンな人材戦略」が求められる中、性格心理学の権威ある理論「ビッグ・ファイブ」において、誠実性(Conscientiousness)が、職種・業種を問わず、仕事の成果と最も強く相関することが科学的に証明されています。
- 企業の生産性を最大化し、離職率を最小化したい。
- 曖昧な「根性論」ではなく、科学的根拠に基づいた採用・育成戦略を構築したい。
- 人的資本投資のROI(投資対効果)を確実に高めたい。
本稿は、貴社が競争優位性を確立するために、この「誠実性」を採用、育成、組織マネジメントにどう組み込むべきか、6つの下位因子(ファセット)レベルで具体的に解説します。
感情論を排し、データ主導型の人材戦略へと進化させるための、網羅的かつ実践的なロードマップを今すぐ手に入れてください。
目次
なぜ今「誠実性」が最も重要な人事戦略キーワードなのか
近年、人的資本経営が叫ばれ、データに基づいた科学的な人材戦略が求められる中、数あるパーソナリティ特性の中でも、「誠実性(Conscientiousness)」は、企業の生産性、離職率、そして業績全体に最も強く相関する特性として、人事担当者や経営者の間で注目を集めています。
この特性は、個人の真面目さや責任感といった抽象的な概念に留まりません。計画の立案と実行、困難な状況下での粘り強さ、自己管理能力の高さなど、企業が求める具体的な行動特性(コンピテンシー)の根幹を成すものです。
本稿は、貴社が競争優位性を確立するために、「誠実性」をいかに採用、育成、そして組織マネジメントに組み込むべきか、科学的根拠に基づき、網羅的かつ具体的な戦略を解説します。この解説を通じて、貴社の人材戦略をデータ主導型へと進化させ、ひいては成果の最大化を実現することを目指します。
誠実性(Conscientiousness)とは?心理学とビジネスにおける定義
「誠実な人」という表現は日常的に使われますが、人事戦略においてこの言葉を扱うためには、心理学的な定義を深く理解することが不可欠です。
性格の科学「ビッグ・ファイブ理論」における位置づけ
誠実性は、現代の心理学における性格特性の分類において、最も権威あるモデルである「ビッグ・ファイブ(Big Five)」または「特性5因子モデル」の一つです。
ビッグ・ファイブは、人間のパーソナリティを以下の5つの独立した因子で説明する理論であり、適性検査や人材アセスメントの基盤となっています。
- 外向性(Extraversion)
- 社交性、活動性の高さ。
- 調和性/協調性(Agreeableness)
- 他者への配慮、協力的な態度。
- 誠実性(Conscientiousness)
- 自己統制、責任感、達成意欲。
- 神経症的傾向(Neuroticism)
- 情緒の不安定さ、不安を感じやすい傾向。(安定性が低いことと同義)
- 経験への開放性(Openness to Experience)
- 知的好奇心、新しい経験への意欲。
このうち、誠実性は、仕事のパフォーマンスや学業成績など、達成度の指標と最も強く、一貫して正の相関を示すことが、数多くのメタ分析(研究結果の統合分析)によって証明されています。
誠実性を構成する6つの下位因子(ファセット)
誠実性は単一の特性ではなく、さらに具体的な行動レベルの傾向を示す6つの下位因子(ファセット)に分解されます。人事戦略を立案する際は、このファセットレベルでの理解が重要となります。
下位因子(ファセット) | 特徴的な行動傾向 | 採用でのチェックポイント |
達成意欲(Achievement Striving) | 高い目標設定と達成への粘り強い努力 | 難易度の高い目標にどう取り組んだか。 |
良心/道徳性(Dutifulness) | 規則や規範の遵守、義務感の強さ | 職場のルールや倫理観をどう捉えているか。 |
秩序性(Order) | 整理整頓、計画的な思考、準備の徹底 | 業務のプロセス管理、ドキュメントの整理能力。 |
自己規律(Self-Discipline) | 衝動の抑制、誘惑に負けず継続する力 | 長期的な計画に対する自己統制力。 |
熟慮/慎重性(Deliberation) | 意思決定前の徹底した情報収集と検討 | 判断を下す際のプロセスとリスク評価。 |
有能感(Competence) | 自分自身の能力に対する自信と認識 | 自分の強みと弱みを客観的に説明できるか。 |
企業や職種によって、必要とされる誠実性の「ファセット」は異なります。例えば、経理部門では「秩序性」や「熟慮/慎重性」が重要になりますが、R&D部門では「達成意欲」や「有能感」がより重視される、といった戦略的な分解が必要となります。
なぜ誠実性が「仕事の成果」と最も強く相関するのか?
多くの研究が示すように、誠実性の高さは、業種や職種を問わず、仕事の成果(Job Performance)を予測する上で最も強力な因子です。この相関関係は、単なる「真面目さ」で片付けられない、科学的なメカニズムに基づいています。
組織の生産性・勤怠への影響:離職率とパフォーマンスの相関
誠実性の高い人材は、以下の点で組織に直接的な利益をもたらします。
- 高い生産性(タスク遂行能力)
- 計画的に業務を進め、障害に直面しても感情的に投げ出すことなく、粘り強く遂行します。これは特に、複雑で長期にわたるプロジェクトや、細部にわたる注意が必要な業務で顕著な差を生みます。
- 低い逸脱行動と低い離職率
- 責任感が強いため、職務を放棄したり、遅刻・欠勤が少なくなります。また、組織のルールや規範を遵守する傾向が強く、ハラスメントや情報漏洩といった組織の逸脱行動(Counterproductive Work Behavior: CWB)のリスクが低いことも報告されています。結果として、定着率が高く、採用・教育にかかるコストの削減に直結します。
- スキル習得とキャリア開発意欲
- 自己規律があり、目標達成意欲が高いため、自発的にスキルアップや研修に取り組みます。これは、企業が人的資本投資を行う際のリターンを最大化する上で、非常に重要な要素となります。
誠実性が低い場合のメリットと適応職種(イノベーションと機動性)
一方で、誠実性が極端に高いことが常に最善とは限りません。誠実性が低い人は、計画性よりも機動性、熟慮よりも即時性を重視する傾向があります。誠実性が低い人の特性 | 適応職種とメリット |
柔軟性・アドリブ力 | 予測不能なスタートアップ環境、危機管理、交渉の最前線 |
ルールからの逸脱 | 既存の枠組みを破るイノベーション、クリエイティブな発想が求められる職種 |
フットワークの軽さ | 行動を伴う市場開拓、短期的なプロジェクトの立ち上げ |
経営層や上級管理職においては、誠実性が極端に高いと、細部にこだわりすぎて戦略的な大局観を見失ったり、迅速な意思決定が遅れるリスクがあります。
リスクを取って大胆な判断を下す必要があるポジションにおいては、誠実性が中程度の、経験への開放性や外向性が高い人材が適している場合があります。
採用選考における「誠実性」の科学的な見極め方
誠実性は、面接時の「やる気があります」という言葉や、学歴・職歴といった情報だけでは正確に測れません。採用のミスマッチを防ぐためには、体系化された手法が必要です。
質問で嘘を見抜く!行動面接(BEI)の具体的なアプローチ
誠実性を客観的に評価する最も効果的な手法の一つが、行動面接(Behavioral Event Interview: BEI)、またはSTAR(状況/Situation、課題/Task、行動/Action、結果/Result)面接法です。これは、「過去の行動は未来の行動を予測する」という原則に基づき、抽象的な意欲ではなく、具体的な行動実績を掘り下げるものです。
面接官は、求職者が持つ誠実性の各ファセット(達成意欲、秩序性、自己規律など)が発揮された具体的なエピソードを、STARフレームワークに沿って深掘りする必要があります。
質問例:計画性、責任感、達成意欲を測るキラークエスチョン
以下の質問例は、誠実性の下位因子をピンポイントで計測するために設計されています。
測りたい因子 | キラークエスチョン(質問例) | 深掘りポイント |
達成意欲 | 「これまでの業務で、目標達成が困難になった際、あなたはどのように目標を修正し、最終的にどのような結果を出しましたか?」 | 挫折感に対する自己統制力、目標へのこだわり度。 |
秩序性/計画性 | 「複数の締切が重なるタイトなスケジュールを任された際、あなたは最初に行ったことと、途中で計画をどのように調整したか教えてください。」 | 計画の立案プロセス、優先順位付けのロジック。 |
責任感/良心 | 「あなたのミスではないが、チーム全体に大きな損害が出た状況で、あなたはどのような責任を果たし、どのような行動を取りましたか?」 | 責任の所在に対する態度、組織規範への忠実さ。 |
自己規律 | 「誰も見ていない、やる必要もないが、あなたが個人的に決めて続けた仕事上のルーティンや学習習慣があれば教えてください。」 | 長期的な自己投資の有無、衝動抑制能力。 |
適性検査・性格診断による客観的評価と活用上の注意点
面接官の主観や、求職者の表面的な「面接力」に左右されない客観的なデータとして、ビッグ・ファイブ理論に基づいた適性検査の活用は不可欠です。
多くの検査では、誠実性スコアに加え、各ファセット(秩序性、達成意欲など)のスコアが提供されます。これにより、職種ごとの適性をより細かく判断できます。
検査の信頼性を確保するため、受検者の回答の信頼度(虚偽回答の傾向)をチェックする指標が含まれているツールを選ぶ必要があります。また、検査結果を「足切り」に使うのではなく、「面接で深掘りすべきポイント」を特定するためのインサイトとして活用することが、ミスマッチ防止の鍵となります。
組織全体の生産性を高める「誠実性」の育成・定着戦略
誠実性は、他の特性(経験への開放性など)と異なり、成人後も教育や環境によって比較的伸ばすことが可能な特性であるという点で、人事戦略における投資対効果が高い要素です。
目標設定とフィードバック:自己統制力を高めるマネジメント手法
誠実性は、個人の自己規律に依存するため、それを強化するマネジメントが求められます。
SMART原則に基づく目標設定: 目標を「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「達成可能(Achievable)」「関連性(Relevant)」「期限(Time-bound)」に基づいて設定することで、計画性を促進し、目標達成への自己統制力を養います。
誠実性の低い社員に対しては、成果だけでなく、プロセス(計画、タスク分割、進捗報告の頻度)を定期的に評価し、フィードバックを行うことが重要です。目標達成を細分化し、小さな成功体験を積み重ねることで、「秩序性」や「自己規律」の習慣化を促します。
タスク管理ツール、期限リマインダー、定型業務の自動化など、「努力しなくても、誠実な行動を取らざるを得ない」環境を設計することが、育成の第一歩となります。
評価制度への組み込み:プロセス評価と連動させる重要性
誠実な行動を組織全体で奨励するためには、人事評価制度に組み込む必要があります。
行動指標の定義: 「成果」だけでなく、「成果に至るまでのプロセス」(例:報連相の徹底度、計画と実績の差異、期限の遵守率)を評価項目に含めます。
誠実性の各ファセット(例:「計画を立て、期日通りに遂行する」「困難な状況でも粘り強く業務を継続する」)を具体的なコンピテンシーとして定義し、上司や同僚からの360度評価を通じて、行動の定着を測ります。
誠実性の低い社員を活かす「環境設計」の原則
すべての社員に高い誠実性を求めるのは非効率的です。誠実性の低い社員は、往々にして「経験への開放性」や「外向性」が高く、創造性や機動力という別の強みを持っています。
彼らを活かすには、「補完的なチーム編成」が鍵となります。
- 役割分担の明確化
- 誠実性の高い社員をプロジェクトマネージャーや進捗管理の役割に、誠実性の低い社員をブレインストーミングや新規事業開発といった「発散」の役割に配置する。
- 専任サポートの配置
- 誠実性の低いハイパフォーマー(例:天才肌のエンジニアやクリエイター)には、計画立案や事務作業を代行する秘書やアシスタントを意図的に配置し、彼らの「強み」に集中できる環境を提供します。
応用戦略:誠実性と他の特性を組み合わせた「理想の人材像」
経営戦略に基づき、特定の職種でハイパフォーマーとなる人材を定義するためには、誠実性を他のビッグ・ファイブ特性と組み合わせた分析(プロファイリング)が必要です。
誠実性 × 外向性:ハイパフォーマー営業職の特性
高い「外向性」は社交性や積極性を生み出し、顧客との関係構築に役立ちます。しかし、それだけでは「詰めが甘い」営業になりがちです。
ここに高い「誠実性」が加わることで、「計画的かつ粘り強く目標を追求する」営業職が生まれます。
- 特徴
- 訪問数のノルマ達成だけでなく、顧客との接触履歴の正確な記録、次のアクションプランの緻密な設計、受注に向けた長期的なネゴシエーションを粘り強く行える。
- プロファイル
- 積極性と実行力を兼ね備えた、最も安定して成果を出す営業ハイパフォーマー。
誠実性 × 経験への開放性:イノベーションリーダーの特性
「経験への開放性」は、既成概念にとらわれない新しいアイデアやイノベーションを生み出す源泉です。しかし、この特性が高いだけでは、「アイデアは多いが実行に移せない」に終わるリスクがあります。
ここに高い「誠実性」が加わることで、「斬新なアイデアを、緻密な計画と自己規律をもって実現に導く」リーダーが生まれます。
- 特徴
- 奇抜な発想を具体的な事業計画に落とし込み、計画通りにリソースを配分し、リスクを熟慮しながらも前進を止めない。
- プロファイル
- 新規事業部門、R&D部門、経営企画部門における真のイノベーション実現者。
誠実性 × 低い神経症的傾向:安定したマネージャーの特性
「低い神経症的傾向(情緒安定性が高い)」と「高い誠実性」の組み合わせは、ストレス耐性が高く、安定したパフォーマンスを維持できるマネージャー層に必須の特性です。
- 特徴
- 部下の失敗や予期せぬトラブルに直面しても、感情的に動揺することなく、冷静かつ計画的に問題解決にあたることができます。自己規律があるため、自身の感情マネジメントも得意です。
- プロファイル
- 人事異動や組織再編といった環境変化に強い、中間管理職、部門長。
データに基づく人材戦略が企業を成長させる
誠実性(Conscientiousness)は、単なる美徳ではなく、仕事のパフォーマンスを予測するための最も科学的な指標です。
人事担当者や経営者の方が、この特性を戦略的に活用するためには、以下の3つのステップを実行してください。
- 定義の明確化
- 貴社の求める誠実性を、各職種に必要な6つの下位因子(ファセット)レベルで具体的に定義する。
- 科学的な見極め
- 適性検査と行動面接(BEI/STAR)を組み合わせ、主観を排除したデータに基づく採用基準を構築する。
- 環境による育成
- 目標設定(SMART)、プロセス評価、そして補完的なチーム編成という「自己規律を促す環境」を設計し、組織全体の誠実性を底上げする。
人的資本の価値が企業の競争優位性を決定づける現代において、データドリブンな人材戦略こそが成長の鍵です。貴社がこの「誠実性」の戦略的な活用を通じて、持続的なハイパフォーマンス組織へと進化されることを心より願っております。
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