母集団形成の方法とは?応募者の質を高める採用手法について

目次

求人募集における母集団形成の重要性とは?

「目的を達成するための手段に注力し過ぎて、いつの間にか手段の達成が目的になっていた」どんなプロジェクトにおいても起こり得る、誰もが陥りがちな問題です。

人材採用で考えると「どうすれば人が集まるか?」という問題にとらわれ過ぎている採用担当者が多くいます。母集団形成は求人活動において重要な課題ですが、あくまでも「企業に最適な人材を確保する」という「目的」のための手段です。

たくさんの応募が寄せられたとしても、応募者の中に求めていた人材がいなければ、採用目的は達成されません。人材採用においては「大きな母集団を形成する」こと以上に「採用候補に挙げられるような人材を含む母集団を形成する」ことが大切です。

「採用学(新潮選書)」の著者である神戸大学大学院経営学研究科准教授の服部泰宏氏は、母集団形成における上記のような問題について鋭く指摘しています。

服部氏は、多くの人が「応募者数が多くなるほど、優秀な人材が含まれる割合が多くなる」という大規模候補者群仮説に陥っていることを指摘し「とにかく人を集めれば良い」という採用計画に対しての抜本的な見直しを主張しています。

求人応募者の優秀さの分布は、統計的に見ればいわゆる「釣鐘型(正規分布)」の曲線になることが一般に知られています。しかし応募者を増やし山を高くすると採用対象外となる裾野も広がるため、採用活動の手間やコストが増加し、多忙な人事担当者が効率的に見極めて採用競争の現場で「勝つ」ことは難しいといえます。

優秀な人材の獲得を目指すためには、むやみに応募者を増やして採用活動の手間やコストを増やすのではなく、採用計画や採用要件を明確にして上図の山のピークを右側へ寄せることが大切です。

効果的な求人媒体の選び方とは?

母集団形成において、母集団の性質を決めるのは「求人の性質」と「求人媒体の性質」の2つの要素です。2つの要素はそれぞれ「ターゲット設定」と「マーケティング」に該当し、狙った層への適切な訴求が大切であるということにつながります。

ターゲット設定を疎かにしたマーケティングでは、あまり効果が期待できません。極端な例ですが、中途採用を目的としているのに新卒採用の合同会社説明会に出展しても、時間とお金を無駄にすることと同じです。中途採用と新卒採用は、まったく異なる人材市場であるといえます。求める人物像がいない市場にアプローチを掛けても、時間や費用などのコストが無駄になってしまいます。

中途採用市場ではスキルや経験を活かしたキャリアアップを想定している転職希望者が多いのに対して、新卒採用市場ではほぼ全員が業界・職種未経験者です。ターゲットとマーケティングにミスマッチがあると、求職者への訴求がまったく機能しないという問題が生じます。

ターゲットとマーケティングのミスマッチを起こさないためには、ターゲット像を明確にした上で、求人媒体や採用手法といったマーケティング方法の特徴をリストアップして検討することが大切です。

中長期的な育成を想定して若手人材を確保したい場合は新卒や第二新卒をターゲットとしたメディアを使う、スキルや経験が豊富な即戦力人材を求める場合は成果報酬制の人材紹介サービスを使うなど、採用目的に合ったマーケティング方法を選びましょう。求人市場は近年活発化しており、キャリアや職種などを限定してピンポイントでニーズを満たすサービスが増えています。

あまりコストをかけずに社風や価値観が一致した人材を探しているのであれば、社員の知人を紹介してもらう「リファラル採用」という採用手法もあります。既存のメディアやサービスを使うか、独自の採用手法を開発するか、採用の目的によって上手に使い分ける必要があります。

求職者が求めている情報とは?

求人広告の出稿媒体が決まったら、ターゲットに対して的確に訴求できる求人票を作成します。求人票は企業が最初に求職者に接する媒体になりますので、特に丁寧に作るようにしましょう。対人間のコミュニケーションと同様に、第一印象で応募に至るかが決まるといっても過言ではありません。

母集団形成を行うための軸となるのは「自社の魅力」です。

「どんな理念を持ってどんな事業を行なっているのか」「事業はどのくらい成功しているのか」「今後どのような展望を見据えて今回の募集に至ったのか」など、必要に応じて会社説明会の資料やプレゼンなどを使用し、求職者が知りたい情報を具体的に伝えることが大切です。

マイナビの調査によると、求職者が企業を選ぶポイントとして「自分が成長できる環境がある」「社内の人間関係が良い」などが上位に挙げられています。求人票を作成する際には、求職者が重視する「環境」や「人間関係」といった定性的な情報をどれだけ具体的に明文化できるかが重要になります。

企業を選ぶときに、あなたが特に注目するポイント
出典元『マイナビ』2020年卒 マイナビ学生就職モニター調査 4月の活動状況

環境や人間関係を明文化する上で効果的な方法としては「社員の生の声」を拾う方法が挙げられます。現在活躍している社員のインタビューを掲載するなどして「自社に入るとどのような生活を送ることになるのか」「数年後はどんなキャリアを歩んでいるのか」といったことがイメージできると、求職者に対して効果的な訴求が行えます。

ネガティブな情報は書くべきか?

求人票にはできるだけ「リアルな情報」を盛り込むことが大切だと述べましたが、「どのくらいリアルに?」ということも検討せねばならないことです。

「弊社は平均して月30時間くらい残業しています」「休日に顧客対応しなければならないケースもある」などの、入社後に知ることになるであろうネガティブな情報の扱いも求人票制作では重要です。

ネガティブな情報の取り扱いの問題については40年以上の歴史がある「RJP理論」というもので詳しく検証されています。RJPとは「Realistic Job Preview」の略称であり、翻訳すると「現実的な職務予告」という意味です。RJP理論の概要を説明すると、ポジティブな情報もネガティブな情報もあらかじめ開示することで、入社後に生じる「こんなはずじゃなかった!」というミスマッチを回避できるという理論です。

RJP理論にもとづく採用と伝統的な採用との比較
出典元『労働政策研究・研修機構』採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方

労働政策研究・研修機構の調査では、初職が正社員であった離職者の初職離職理由は「労働条件・休日・休暇の条件が良くなかった」が1位となっています。労働条件や休日の日数、休暇の条件などは定量的に説明できる情報であるため、RJP理論を活用すれば、母集団形成の段階で労働条件部分のミスマッチを防止できます。

初職離職理由
出典元『労働政策研究・研修機構』第6章 早期離職とその後の就業状況

目先の欠員補充を目的として、ネガティブなことを伝えたくないという想いは生まれます。しかし、数百万ものコストを支払ってでも目先の利益を取るのか、一度しっかりと考える必要があります。

初職離職理由の2位として挙げられている「人間関係が良くなかった」については「どのような理由で自社の人間関係が良いのか」「どのような点で求職者と自社の相性が良いのか」を根拠を持って伝えることで、母集団形成の段階で早期離職を防ぐことができるようになります。

中長期的な事業成長を行うためには、中長期的に活躍してくれる人材を定義し、自社の魅力を明文化してしっかりと伝えることが必要不可欠です。

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ミツカリ
会社や組織のミスマッチを予測し、早期離職を未然に防ぐ
4,400社が導入し、310,000人が受検した適性検査。応募者の人物像、社風との相性がひと目で分かり、多くの企業で離職率が改善されています。採用面接だけでなく、内定者フォローや採用要件定義など、様々な人事業務でミツカリが活用されています。

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