従業員エンゲージメントを高める方法と戦略とは?取り組み事例も
近年、人材の流動性が高まっているため、従業員が会社に対してどれほど愛着や信頼を持ち、意欲的に働いているかを測る「従業員エンゲージメント」が注目されています。企業の成長にも直結する要素のため、重要視している人事担当者や経営者も増えています。
同時に、以下の悩みを抱える組織も少なくありません。
- 従業員エンゲージメントが向上しない…
- 自社のエンゲージメントが低いことは理解しているが対策が思い浮かばない
今回この記事では、従業員エンゲージメントの基礎知識をはじめ、実践で活用できるエンゲージメントを高める方法を5つと手順などを解説します。
この記事を読むことで、自社の従業員エンゲージメントを高めるイメージをもつことができます。また、従業員エンゲージメントを可視化して、改善行動をサポートするツールも紹介していますので、自社のエンゲージメントを高めたいと考えている方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
目次
人事領域におけるエンゲージメントとは?
ビジネスや人事領域でのエンゲージメントとは「従業員が会社に対して、強い愛着や信頼をおいていること」を指します。従業員エンゲージメントと呼ばれることもあります。
従業員エンゲージメントが高い企業の従業員は、仕事へのモチベーションや会社への帰属意識が高く、積極的に業務に取り組み貢献したいという意欲が強いため、高い生産性やチームワークが発揮されます。
近年、人材の流動性が高まっていることから、従業員エンゲージメントは人材の定着率を高める要素として重要視されています。
従業員エンゲージメントと似た言葉
従業員エンゲージメントと似た言葉に「従業員満足度」「ワークエンゲージメント」「eNPS」があり、よく間違えられる言葉でもあります。ここでは、それぞれの言葉の意味と従業員エンゲージメントの違いを解説します。
従業員満足度との違い
従業員エンゲージメントと似た言葉に「従業員満足度(ES=Employee Satisfaction)」があります。「従業員満足度」とは、従業員が福利厚生や評価制度、働く環境、人間関係などに対して、どれだけ満足しているかを示します。
従業員満足度は「企業に対する満足度」を示すのに対し、従業員エンゲージメントは「企業に対する貢献意欲と信頼関係」を示すという違いがあります。
従業員満足度は純粋に待遇や働く環境などの満足度なので、給与や待遇、働く環境を整備することで高まることがあります。しかし、従業員満足度を高めても従業員エンゲージメントの向上につながらないケースは多いです。
わかりやすく例にすると「会社の待遇面や環境は満足しているが、積極的に仕事に取り組みたいとは思わない」という状態です。従業員の反応を伺い待遇面や環境面を整備して従業員満足度を高めるのではなく、貢献につながる従業員エンゲージメントを向上させる施策にも注力する必要があります。
従業員満足度の構成要素や向上させるための取り組みなどについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>【関連記事】従業員満足度を向上させる5つの取り組みを解説!企業事例も
ワークエンゲージメントとの違い
従業員エンゲージメントとよく間違えられる言葉に「ワークエンゲージメント」があります。「ワークエンゲージメント」とは、従業員が自分の仕事に対してポジティブで充実感をもっている心理状態を指します。
一方で従業員エンゲージメントは、仕事に対してだけでなく「組織への愛着心」「企業理念への共感」「自発的に組織に貢献したい」などの様々な要素を含みます。
わかりやすくまとめると以下の通りです。
従業員エンゲージメント | ワークエンゲージメント | |
---|---|---|
焦点 | 「会社」への愛着・帰属意識など | 「仕事」への情熱やポジティブな気持ち |
影響の範囲 | 「組織全体」の文化や環境に影響 | 「個々の業務遂行や仕事の成果」に影響 |
どちらも組織の成功には欠かせない要素ですが、それぞれが異なる側面から従業員のモチベーションやパフォーマンスに関わっています。従業員が組織に対しても仕事に対しても高いエンゲージメントを持っていることが理想的といえるでしょう。
ワークエンゲージメントについては以下の記事で詳しく解説しています。
>>【関連記事】ワークエンゲージメントを高める3つの方法と基礎知識を解説!
eNPSとの違い
eNPSとは「Employee Net Promoter Score」の略称で、従業員がその会社を他の人にどれだけ勧めたいかを数値化したものです。簡単にいうと「職場の推奨度」を表します。
eNPSは、従業員エンゲージメントを測るために誕生したため、従業員の職場に対する満足度や忠誠心(ロイヤルティ)を測る点では同じですが、計測方法や目的、測定方法が異なります。
eNPS | 従業員エンゲージメント | |
---|---|---|
計測範囲 | 知人に職場をどれくらい勧めたいと思うか | 職場への愛着や仕事へのやりがいなどを総合的に測る |
目的 | 会社をどれだけ推奨するかを評価 | 従業員の働きがいや職場環境の改善 |
測定方法 | 「この会社を友人や家族に勧めるか」という質問で計測 | 複数の質問でエンゲージメントを評価する |
従業員エンゲージメントは、職場への愛着や仕事に対する熱意などを総合的に測り、職場環境や従業員の成長機会の改善を目指します。一方でeNPSは、「この会社を友人や家族に勧めたいと思うか」という1つの質問で従業員の満足度や忠誠心をシンプルに評価します。
eNPSが高いと待遇や職場環境、人間関係などに満足している状態にあるため、従業員エンゲージメントも高くなる傾向があります。従業員からも積極的に意見や新たなアイデアも出やすくなるため、業績や生産性の向上も期待できます。
従業員のエンゲージメントが注目される背景
なぜ従業員のエンゲージメントが注目されるようになったのか、その背景を3つ紹介します。
少子高齢化による人材不足
従業員エンゲージメントが注目される背景の1つ目は少子高齢化による人材不足です。
厚生労働省が調査した「日本の人口推移」によると、2020年以降は15歳~64歳の若年層・働き手世代が減少していく一方で、高齢化率は年々上昇していき、2030年頃には人口の約30%が高齢者になることが予想されています。
![日本の人口推移](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2024/02/14175141/japanese-population-trends.jpg)
人口が減少していくため、今後は人材の採用が難しくなりかねません。そのため、社内のエンゲージメントを高めて、人材を長期にわたって定着させることが重要視されています。人材不足の中で企業が競争力を維持し、成長を遂げるためには、エンゲージメントの向上が不可欠といえるでしょう。
働き方の多様化
近年、テレワークやフレックスタイム制度、時短勤務などの労働条件や、出世・昇給よりも自分のやりたい仕事を選ぶ、転職してキャリアアップするなど働き方が多様化しています。
会社や業務内容が合わないと、キャリアアップと称して転職する従業員も増えています。そのため、従業員と企業の信頼関係を高めることがより重要視されています。
従業員のエンゲージメントを高めることで従業員と会社の信頼関係が強くなり、さまざまな価値観をもつ従業員がいても一体感をもって業務に取り組むことができます。
従業員エンゲージメントと生産性には相関がある
経済産業省の報告書によると、従業員のエンゲージメントが高まると生産性の向上につながると結論づけられています。
※ES=エンゲージメントスコア
![従業員エンゲージメントと生産性の相関関係](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2024/02/14191242/engagement-score.png)
出典元『経済産業省』持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書
従業員のエンゲージメントが高い組織は、より高い生産性を発揮し、会社や事業の目標達成に貢献します。そのため、企業は生産性を向上させ、他社との競争力を維持するためにも従業員のエンゲージメント向上が注目されています。
従業員のエンゲージメントを高めるメリット
従業員のエンゲージメントを高めると得られるメリットを4つ紹介します。
定着率の向上
従業員のエンゲージメントを高めると、定着率が向上します。エンゲージメントが高いと、従業員が会社に対して強い愛着や高い信頼、仕事や事業に対する貢献意欲をもっている状態になります。その結果、従業員は会社に忠誠心を持ち、長期間にわたって働く意欲が高まります。
パフォーマンスが向上する
エンゲージメントの高い従業員は、自らの仕事に対する責任感や意欲が強く、積極的かつ前向きに業務に取り組むため、パフォーマンスや生産性が向上します。また、従業員のエンゲージメントが高いと、積極的にコミュニケーションを取る傾向にあるため、チーム内の連携を強めることにもつながるでしょう。
業績があがる
従業員エンゲージメントの向上は、組織の業績向上に直結します。経済産業省の報告書によると、従業員のエンゲージメントが高まると、それに比例して業績も高まると結論づけられています。
※ES=エンゲージメントスコア
![従業員エンゲージメントと営業利益の相関関係](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2024/02/14200210/engagement-score-operating-income.png)
出典元『経済産業省』持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書
従業員のエンゲージメントが高いと、一人ひとりが積極的に業務に取り組みかつ改善も行うため、顧客サービスの質や顧客満足度が向上する傾向があります。そのため、従業員のエンゲージメントを高めると、経営を安定させることにつながる点は大きなメリットとなるでしょう。
優秀な人材の確保
エンゲージメントの高い従業員は会社に強い愛着があるため、友人に会社のことを話す可能性が高まります。そのため、優秀な従業員が企業と親和性やスキルの高い人材に声をかけ、リファラル採用が活性化します。
リファラル採用による候補者は、事前に従業員から社内や労働環境、業務内容などを具体的に聞いている傾向にあるため、会社への理解が深く、入社後のイメージも明確にもてます。入社後のギャップが限りなく少ないため、長期に渡って活躍してくれるメリットもあります。
優秀な人材を確保する採用経路が新たに確立できることも、従業員のエンゲージメントを向上するメリットといえるでしょう。
従業員のエンゲージメントを高める5つの方法
従業員のエンゲージメントを高める代表的な方法を5つ紹介します。
企業の理念やビジョンを明確に共有する
会社の理念やビジョン、今後の展望などを明確に共有することで、従業員のエンゲージメントが高まります。
従業員が会社の理念や展望を理解・共感することで、同じ目標をもつ会社と一体感をもちながら、業務を進めることができます。また、従業員は自身の仕事が会社の目標達成にどのように貢献するのかも理解しやすくなるため、従業員のエンゲージメントが高まるでしょう。
とはいえ、企業の理念やビジョン、将来の展望をどのようにして共有すべきか悩む企業も多いと思います。
具体的には以下のような施策を行うと良いでしょう。
- 全社会などでビジョンや展望を共有する機会を設ける
- 役職問わず自社の理念やビジョンについて話す場を設ける
- 経営者やマネジメント層の考えを発信する など
ここで注意すべき点は、会社から従業員に一方的に理念やビジョンを押し付けないようにすることです。従業員ひとりひとりと向き合いながら不透明になっている部分を把握し、ビジョンや展望を共有して徐々に浸透させると良いでしょう。
福利厚生・働く環境を充実させる
福利厚生や働く環境を充実させることで従業員満足度が向上し、高いエンゲージメントが醸成されます。具体的には以下の福利厚生制度を設けると良いでしょう。
- 資格取得や書籍購入、有料セミナーなどの費用を負担する
- 他部署との親睦会やチームでのランチ費用を負担する
- 旅行やレジャーの優待
- 家賃補助、住宅手当
- リモートワーク、フレックスタイム制の導入 など
福利厚生や働く環境を充実させることで、従業員は仕事に対する意欲や会社への愛着がわき、エンゲージメントの向上につながるでしょう。新たな福利厚生や環境を整備する場合は、従業員の声を聞くとより効果的です。
基準が明確な評価制度を取り入れる
従業員のエンゲージメントを向上させるには、明確な基準がある評価制度が必要です。経営者や上司の感情や一方的な評価制度だと基準が曖昧なため、従業員は評価されていないと感じ、会社への信頼度や貢献意欲が薄れます。
従業員のエンゲージメントを向上させるには、成果や能力に基づいて公正に評価されることが重要です。職種や役職ごとに目標設定や評価項目を作成して、従業員を適切に評価できる制度を整備しましょう。さらに成果やスキルによって、適切な役割・役職、賞与などを設けると、従業員は自身の努力が正当に評価されたと感じ、モチベーションを高めることができます。
従業員同士の関係を深める
従業員同士の良好な関係を築くことも、エンゲージメントを高める重要な要素です。従業員同士の関係が深い状態だと、ハラスメントの防止やストレス軽減などにも貢献します。
逆に従業員同士の関係が浅くコミュニケーションが取れていないと、質問や相談がしにくさを感じるため、従業員同士で連携が取りづらくなり、最終的には会社への愛着も薄れます。
社内イベントやランチ会などを実施して、コミュニケーションを取りやすい環境や雰囲気をつくりましょう。コミュニケーションを取りやすい環境を整備することで、業務上の相談や質問がしやすくなり、従業員同士の結束が高まりエンゲージメントの向上につながるでしょう。
また、リモートワークが多い場合はバーチャルオフィスなど、気軽にコミュニケーションが取れるツールを導入することも効果的です。
エンゲージメントを可視化する
従業員のエンゲージメントを向上させるまたは高い状態を維持するためには、エンゲージメントサーベイを実施して現状や改善点を把握することが重要です。エンゲージメントサーベイは、簡単にいうと企業への信頼度や各項目のエンゲージメントを定量的に可視化するツールです。
導入するサーベイにもよりますが、具体的には以下の項目を定量的に可視化できます。
- 会社に対する信頼度
- 他従業員とのコミュニケーションや関係構築意欲
- 担当業務の貢献意欲 など
従業員のエンゲージメントを把握することで問題や改善点を特定し、適切な対策を講じることができます。
例えば、特定の部署のみ雰囲気が悪く成果も良くないため、エンゲージメントサーベイを実施した場合です。サーベイの結果を見ると、部署内の人間関係やコミュニケーションの数値が異常に低いことがわかったため、原因を特定するためにマネジメント層が1on1を実施するなどと具体的なアクションにつなげることができます。
弊社のミツカリでは、7問約1分で計測できるエンゲージメントサーベイを提供しています。従業員に負担をかけずに「報酬」「人間関係」「コミュニケーション」「職務適性」「エンゲージメント(会社への信頼度)」の5つの要素を計測できます。
14日間の無料トライアルも実施中ですので、この機会にぜひお試しください。
従業員のエンゲージメント向上戦略
ここでは、従業員のエンゲージメントを向上させるために、企業側と従業員側それぞれが取り組むべき具体的な戦略について詳しく紹介します。
企業が取るべきアクションと、従業員自身ができる対策を理解することで、組織全体のエンゲージメントを高めることができます。
企業ができるエンゲージメント向上の戦略
まずは企業が取り組むべきエンゲージメント向上の戦略を2つ紹介します。
信頼関係を築くマネジメントを意識する
企業ができるエンゲージメント向上戦略1つ目は、部下との接し方を工夫し、信頼関係を築くマネジメントを意識することです。従業員のエンゲージメントやモチベーションを向上させるうえで、最も大きな役割を果たすのが上司です。上司の何気ない一言が部下をやる気にさせたり、やる気を損なわせたり、場合によってメンタルヘルスにも影響を及ぼします。
さらに、部下にとって最も辛いことは「上司の無関心」 です。どんなに努力をしても認められず、行動と結果が伴わないために自発的な行動を取らなくなってしまいます。そのため、日頃から部下への接し方を意識して、エンゲージメント向上につなげましょう。
部下のエンゲージメントを高めるための具体的な接し方は、山本五十六の有名な言葉「やって見せて 行って聞かせて やらせてみて 褒めてやらねば ひとは動かず」をもとに以下のように工夫しましょう。
山本五十六のフレーズ | 具体的な接し方 |
---|---|
やってみせて | まずは上司自身がモデル(手本)となりましょう。モデル(手本)となることで、ある行動をうまく実行するための自信=自己効力感をもたらすことができます。 |
言って聞かせて | 次は仕事の重要性を伝えましょう。なぜその仕事が重要なのか、なぜやってもらいたいのか、どんな結果につながるのかなど、意義や重要性を伝えることで、部下はこの仕事を自分が進めているという実感と、主体性の向上につながります。 |
やらせてみて | 部下が成功体験を重ねられるようにサポートしましょう。重要なのは、難易度の低いものから高いものへとステップアップすることです。スモールステップで成功を積み重ねることで難易度の高い仕事の成功につながり、エンゲージメント向上にもつながります。 |
褒める | 部下にはポジティブにフィードバックをしましょう。叱ってばかりでは「叱られないように仕事をする」ことを考えてしまい、失敗をして叱られるリスクから新しいことへの挑戦をしなくなってしまいます。 |
褒めの4要素 | 内容 |
---|---|
誰が? | 本人にとって影響力の強い人から褒めることが効果的です。 例)上司、尊敬する人、好意的な人など |
なにを? | 相手に伝わるように具体的な内容や行動を褒める。 例)「今日のプレゼンの○○が良かったよ」「要点がまとめられたわかりやすい資料だね」など。 |
どのように? | 昇給・昇進は頻繁に行使できないため、心理的報酬も意識しましょう。 例)賞賛、承認、微笑みなど |
いつ? | 望ましい行動、部下の成長が感じられたらすぐに褒めましょう。 フィードバックまでの時間が長引くほど、効果は薄れます。 |
部下への接し方を工夫し、信頼関係を構築できれば、部下も上司がしっかり見てくれていると感じ、前向きに仕事に取り組むようにようになります。さらに、部下の頑張りに応じて昇進・昇給にも反映させることで、よりモチベーションが向上するでしょう。結果的に組織全体のエンゲージメントが向上することにもつながります。
活力のある職場づくり
企業ができるエンゲージメント向上戦略の2つ目は、活力ある職場づくりです。
一般的に、心身の不調者が少ない職場が健康的な職場と考えられがちですが、実際には心身の健康と活力が伴った職場こそが、エンゲージメントの高い「いきいき」とした職場と言えます。エンゲージメントを向上させるためには、活力ある職場を目指す取り組みが重要です。
具体的な方法は2つあります。
1つ目は「仕事の要求度」を低減することで、従業員のストレスを軽減することです。「仕事の要求度」とは、多すぎる仕事量や締め切りや納期に追われる業務、高度な集中力や注意力を必要とする仕事などが挙げられます。「仕事の要求度」は職場の弱みともいえるため、業務分担や納期などを改めて見直し、従業員のストレスを軽減しましょう。
2つ目は「仕事の資源」を向上させ、従業員のエンゲージメントを高めていくことです。「仕事の資源」とは、従業員(部下)が仕事をモチベーション高く行うためのポジティブな要素やサポート体制を指します。具体的には上司や同僚からのサポート、仕事に対する適切な評価、研修制度などがあります。
「仕事の資源」は職場の強みでもあり、従業員のエンゲージメントにも大きく貢献します。そのため、まずは強みである仕事の資源を伸ばすことに注力しましょう。
従業員ができるエンゲージメント向上の戦略
従業員が取り組むべきエンゲージメント向上の戦略を3つ紹介します。従業員に努力を押し付けるだけでなく、企業側も適切にサポートすることでエンゲージメント向上につながります。そのため、各戦略ごとに企業が行うべきサポート内容も解説します。
自己効力感を高める
仕事の自己効力感を高めるためには、ストレス対処のスキルに加え、仕事をうまく進めるためのスキルを向上させることが重要です。
ストレスに対処するスキルは、現在や将来に経験するストレスを軽減するためのものであり、仕事の効率や生産性に直接的に影響しません。しかし、知識やスキルを高めることで、スキル不足に起因する不安やストレスを低減し、自己効力感を向上させることができます。
【自己効力感を向上させる項目】
- タイムマネジメント:時間を有効的に使いかつコントロールすることで仕事の効率を上げる
- コミュニケーション:人間関係を円滑にし、チームワークを強化する
- 問題解決力:直面した問題を一人もしくはチームメンバーと協力して解決する力を養う
- 目標達成力:設定した目標を達成するためのスキルを身に着ける
これらを従業員の自主性に任せても難しいため、企業は従業員が自己効力感を高められるように、項目ごとの研修を実施することが重要です。例えば、タイムマネジメントであればマネジメント研修を実施する、コミュニケーションであれば会話タイプの理解などの座学に加え、実際に演習を行うなどの研修を実施すると良いでしょう。
ポジティブな感情を意識する
ポジティブな感情はストレスを打ち消す効果があり、従業員のエンゲージメント向上に寄与します。仕事では多くのストレスを溜めるため、近年慢性的なストレスに悩まされる人も増えています。このような状況に対処するためには、ストレス対処のスキル、プライベートでの息抜きなどが必要です。
【ポジティブ感情を生み出す方法例】
対処方法 | 内容 |
---|---|
問題焦点型のストレス対処 | 問題の根本解決に向けた行動や認知を行い、情動焦点型の対処法(感情に対処するだけ)ではなく、具体的な解決策を見つけましょう。 |
肯定的な出来事を作り出す | プロジェクトの区切りにチームでの飲み会などを開催し、仕事をやり遂げた達成感を味わいましょう。休暇を付与することも効果的です。 |
感謝をする | 職場で感謝の気持ちを表すことで、職場内の有効性を高め、相互にサポートできる関係性を築けるようにしましょう。 |
企業はポジティブな感情を促進するような「全社員会」「チームごとの親睦会」「表彰制度+プチボーナス」などのイベントを実施すると良いでしょう。飲み会は苦手な方もいるので、強制や押し付けにならないように注意が必要です。
ジョブクラフティングの実施
ジョブクラフティングとは、従業員一人ひとりが仕事に対する認知や行動を修正し、より充実感を得られるようにする手法です。仕事の見直し方を「作業の工夫」「人間関係の工夫」「仕事の捉え方の工夫」の3つに分類することで、自主的な意識改革が行えます。
3つの分類 | 内容 |
---|---|
作業の工夫 | 仕事のやり方を工夫して仕事の内容を充実させる。 例)Todoリストの作成、スキルなどの勉強時間の確保 など |
人間関係の工夫 | 仕事で関わる人への接し方、コミュニケーションを工夫して良好な人間関係を築く。 例)上司や同僚に相談する、相手のタイプにあったコミュニケーションを取る など |
仕事の捉え方の工夫 | 仕事の捉え方や考え方を工夫し、仕事にやりがいを持てるようにする。 例)各仕事の目的を明確にする、社会に与える貢献度を考える など |
【ジョブクラフティング実施の手順】
- どの部署・業務にジョブ・クラフティングを実施するか考える
- 業務に対してできる工夫をやり方・周りの人・考え方の観点から考える
- 計画カードを作り、実行する意識を高める
- 実行したことを振り返り、上記手順を繰り返す
ジョブクラフティングを実施することで、仕事の目的や自分が社会に与える影響などを再確認できるので、仕事へのモチベーションやエンゲージメントへの向上につながります。とはいえ、従業員に宿題として任せるのは難しいため、企業側が全体研修を実施してサポートすると良いでしょう。
従業員のエンゲージメントを高めるための手順
従業員のエンゲージメントを高める方法は紹介しましたが、実際にどのような手順で従業員のエンゲージメントを高めていったら良いか悩んでいる方は多いと思います。ここでは、従業員のエンゲージメントを高めるための手順を解説します。
STEP1:会社の理想的な姿を明確にする
従業員のエンゲージメントを高める活動に入る前に、まずは会社の理想像を設定しましょう。
会社の理念やミッションなどをベースに「どのような職場が理想か」「従業員にどのような行動・意識を期待するのか」などをまとめ、従業員が共感しやすい方向性を明確にします。人事担当者が従業員のエンゲージメントを高める場合は、経営者にヒアリングすると齟齬がおきにくいでしょう。
会社の理想像が明確でないと従業員に意図が伝わらず、不信感につながりエンゲージメントを下げる原因となります。
STEP2:エンゲージメントサーベイを実施・分析する
会社の理想的な姿を明確にしたら、次は自社の現状を把握するためにエンゲージメントサーベイを実施しましょう。
「従業員のことは把握している」と思っても、従業員が内に抱えている悩みを把握できているケースは少ないです。エンゲージメントサーベイを実施して、自社のどこに課題があるのかを可視化しましょう。
そしてエンゲージメントサーベイで得た結果を「うまくいっている項目」「改善すべき項目」を整理して分析しましょう。この時に改善すべき項目だけに注目してしまうと、今後うまくいっている項目のエンゲージメントを下げてしまうことになりかねません。
STEP3:取り組む施策を決定する
分析結果を基に、取り組む施策を考えていきましょう。
例えば「報酬」のエンゲージメントが低い場合は「評価制度を新たに作るもしくは改善する」などを決めていきます。人事や経営者で一方的に判断するのではなく、従業員に具体的にどこに不満があるのか、アンケートや面談を実施してリアルな声を聞くと取り組むべき施策がより明確になります。
STEP4:スケジュールを立てて実行する
取り組む施策が決定したら、スケジュールを立てて実行していきましょう。
- 各取り組みの実施予定(いつまでに何をするかなども)
- 体制メンバーや担当者
- 目標設定(どのような状態になっていることが理想か)
- フィードバックのタイミング など
目標設定が定量化できるものであれば、数値目標にした方がわかりやすいです。計画通りに進行しているかを確認し、必要に応じて調整を行うと良いでしょう。
STEP5:フィードバックと改善
最後に従業員からのフィードバックやエンゲージメントサーベイを再度実施して、実施した取り組みの効果を評価します。良くなった点や課題を改めて把握し次に活かします。短期間で従業員のエンゲージメントは向上しませんので、継続的な改善を行いながら従業員のエンゲージメント向上に努めましょう。
従業員エンゲージメントを可視化して改善行動につなげるHRTechツール
![ミツカリエンゲージメント](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2024/01/03174536/mitsucari-engagement.png)
弊社のミツカリでは、エンゲージメントサーベイと適性検査を用いたHRTechサービスを提供しています。従業員エンゲージメントの向上に活用できる機能をピックアップして紹介します。
約1分で従業員エンゲージメントを可視化
ミツカリエンゲージメントサーベイは7問約1分で測定が可能です。計測できる要素は「従業員エンゲージメント」「報酬」「人間関係」「職務適性(ワークエンゲージメント)」「コミュニケーション」の5つです。
![ミツカリエンゲージメント](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2023/12/22174653/function6.jpg)
定期的に実施することで前回との比較ができるため、従業員の感情の変化に早急に気づけます。
グルーピング機能で部署やチームごとの分析も可能
エンゲージメントサーベイにはグルーピング機能も搭載しています。そのため、個人の状態だけでなく、部署やチーム、新卒入社・中途入社、一般社員・リーダー職などでグループ分けして、サーベイを実施することも可能です。
また、サーベイ実施後は以下のように直感的に結果を分析できるので、工数をあまりかけずに課題を見つけることができます。
![エンゲージメントサーベイ実施日ごとの詳細結果](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2024/01/03180712/Investigation-result.jpg)
「特定の部署・チームの離職率が高いから調査したい」「新卒入社者のみ実施したい」など、課題に応じて多くの企業様にご利用いただいている機能です。
改善施策にも活用できる機能
ミツカリのエンゲージメントサーベイは、性格適性検査との併用も可能です。72問約10分の性格適性検査で、従業員ひとりひとりの性格・価値観・志向性などを可視化します。
性格・価値観をベースに、最適なコミュニケーションの取り方を記載した結果シートも確認できるので、従業員エンゲージメントが低下した従業員と1on1する際に本音を聞き出す会話を事前に組み立てることができます。
![ミツカリコミュニケーションシート](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2023/12/28180730/9d68ddbff8d7fa0865a47104a982445b.png)
また、サーベイを実施した結果、人間関係に課題があることがわかり、配置転換を行う際は相性を数値化する機能が高評です。従業員の性格・価値観などをベースに、相性の良い人材・部署を数値で可視化します。
![営業職マッチ度スコア](https://mitsucari-blog.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/2023/12/22175458/3a878d5cba5930e7a6205ac176137527.png)
より相性の良い組み合わせで配置転換をする際にはもちろん、メンター制度の組み合わせを考えるときにも活用されています。
他にも従業員エンゲージメントを可視化しつつ、離職防止やマネジメントなどの具体的なアクションにつなげる機能を多数用意しています。エンゲージメントサーベイを実施後「どんな施策を実行したら良いのかわからない…」という企業様にはサポートもさせていただきますので、ご検討いただけますと幸いです。
従業員エンゲージメントを向上させる取り組み事例
弊社のミツカリを活用して、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいる企業様の事例を2社紹介します。
AGC若狭化学株式会社
医薬品中間体等、ファインケミカル製品などの受託製造及び開発を行うAGC若狭化学株式会社様の成功事例です。「課題」「ミツカリ導入の理由」「活用結果」の3つにわけて紹介します。
課題
従業員を増員したことにより、新入社員の状態を把握するのに限界を感じており、定量的に従業員の状態が分かるものが欲しいと思っていました。
ミツカリ導入の理由
- エンゲージメントサーベイのリリース時期と重なった
- 性格やストレス耐性など従業員のタイプを可視化
- 計測結果がすぐに確認できて使いやすい
結果
過去には退職直前まで状態を把握できず十分にフォローできなかった社員もいましたが、定期的にエンゲージメントサーベイで現状を可視化することにより未然に対策できています。
また、従業員の性格データも確認できるため、どのようにフォローすれば良いのかも分かりやすく、エンゲージメントが下がった従業員に対するフォローを人事から促すことができています。
コタエル信託株式会社
新株予約権・株式を中心とした様々な信託ソリューションの開発・提供するコタエル信託株式会社様の成功事例です。「課題」「ミツカリ導入の理由」「活用結果」の3つにわけて紹介します。
課題
社員のほとんどが2〜3年で入社し、人材の入れ替わりが一定数発生し始めたこともきっかけでした。組織拡大に伴い業務量や上司との相性や関係性など、何かしらの課題を発見したい意図がありました。
ミツカリ導入の理由
- シンプルな分析結果画面
- 受検時間が短い
- エンゲージメントサーベイ機能がちょうどリリースされたため
結果
エンゲージメントサーベイを導入・実施したことにより、従業員の隠れた悩みを引き出し状況を改善するきっかけにすることができています。サーベイや性格適性検査の結果を引き続き使用しつつ、当初の活用予定であったメンター制度や1on1の部分にもうまく活用したいと考えています。
まとめ
今回は従業員エンゲージメントに焦点をあてて、従業員満足度との違い、エンゲージメントを向上させるメリットや施策などを紹介しました。
従業員エンゲージメントを高めることで、定着率やパフォーマンスの向上や業績アップにつながります。また、優秀な従業員が友人に会社のことを話すことにもつながるため、優秀な採用候補者を集められたりと、会社の成長や発展に寄与するでしょう。
「従業員満足度を高める」「エンゲージメントを向上させる」と口で言うのは簡単ですが、どこに問題が起きているのかがわからないまま、表層的な施策を打っても改善はされません。まずは現状を知るために、従業員のエンゲージメントを可視化しましょう。
弊社の「ミツカリ」では、エンゲージメントサーベイと性格適性検査を用いたHRTechサービスを提供しています。
エンゲージメントサーベイは7問約1分と、従業員に負担をかけずに受検できます。さらに性格適性検査と併用することで、1on1での接し方や離職防止につながるコミュニケーションを取ることも可能となります。
14日間の無料トライアルも実施中ですので、ぜひこの機会にご検討いただけますと幸いです。
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