

人材採用の要件定義が重要な理由とは?自社独自のペルソナを明確にしよう
採用の目的を明確にする
求人を出す前に一度立ち止まって考えてもらいたいのが、採用の目的です。「欠員が出た」「新規事業を始めるから増員したい」……など、人材採用の理由は「欠員補充」か「増員」のどちらかに分類されます。しかし、これらは採用の「動機」であって「目的」ではなく、満たさなければならない人材の数だけに着目した場合の話です。
求人を出す際には、事業戦略と照らし合わせて必要な人材を考えることが大切です。正社員として長期的に活躍してくれる人が欲しい場合もあれば、繁忙期だけを短期的に手伝ってくれる人材が必要なときもあります。自社のニーズを客観的に把握した上で、どんな募集をどのように出すかの計画を立てることで、求める人物像を明確にすることができます。
人材採用を行う際には、どういう性格で、どういう価値観を持ち、どんな仕事をしてくれる人が欲しいのか、採用要件を具体的に定義していく必要があります。採用要件定義を丁寧に行うことで採用のミスマッチが減り、早期離職率も抑えることができ、より快適で生産性の高い職場をつくることができます。
採用とは、人材を獲得することが目的ではなく、事業課題を解決するための手段なのです。
自社独自の採用要件定義が必要な理由とは?
採用要件を定義する上で欠かせないのが、自社の事業戦略と人員の分析に加えて、人材市場の動向の分析です。リーマンショック以降、日本では求人倍率が増加の一途を辿っており、現在では求職者数よりも求人件数の方が多い売り手市場になっています。
帝国データバンクが行った調査によると、正社員不足に苦しむ企業は年々増え続けており、2019年1月の時点で過半数を超えています。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019年1月)
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019年1月)
正社員不足が増加を続ける一方で「不本意非正規」と言われる「正社員として働きたいが非正規で働いている人」の割合は減少傾向にあります。しかし、2018年時点で不本意非正規の数は250万人以上となっており、雇用のミスマッチが起きていることが推測できます。
出典元『厚生労働省』第1-(2)-16図 不本意非正規雇用労働者の割合・人数の推移
採用競争においては、どこの企業も「優秀な人材」が欲しいと考えているため、待遇が良く労働環境も整っている大企業が採用強者となり、中小企業が劣勢になりがちです。
採用競争でポイントになるのが「どんな人材をターゲットにするか」です。
人材の獲得競争で勝利するためには、一般的な意味での「優秀な人材」を狙うのではなく、自社の社風とマッチした人材を発掘する、独自の採用戦略を作ることが不可欠です。自社独自の採用戦略を作るために、資格や経歴だけでは分からない部分を採用要件定義の内容に盛り込むことが大切になるのです。
「コミュニケーション」や「熱意」が採用要件として求められる理由とは?
採用のターゲットとする人材を具体的に設定すると、おのずと採用要件が決まります。
採用において重視される要素は、新卒採用や中途採用などの採用ジャンルによって傾向が現れています。経団連の調査によると、新卒採用で重視される要素はかなりの長期に渡って「コミュニケーション能力」が1位となっています。
出典元『経団連』2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
新卒採用の特徴は「スキルや経験がほとんどない人材」というマーケットであることです。新卒には最初から経験豊富な人材は存在しないわけですから、長期的に自社で活躍してくれるていずれは幹部クラスの存在になってくれるような「伸びしろ」が選考時に見るべきポイントになります。
新卒採用で重視されているコミュニケーション能力は「入社後の教育研修などでも育成できるスキル」です。コミュニケーション能力の高い新卒を採用することで、教育研修費用や時間を削減できるというメリットがあります。しかし売り手市場で人材不足に悩む企業が多い現状で、採用要件を決める際には「入社後に伸ばせられる能力やスキル」よりも「入社後に伸ばしにくい要素」の優先順位を意識して、見極めることが求められています。
中途採用では、一般的に即戦力人材が求められ、スキルや経験が重視されると言われています。しかしマイナビによる調査を見てみると、意外にもスキルや経験よりも、熱意や意欲といった「入社後に伸ばしにくい要素」が上位にきています。
熱意や意欲は「どのようなことに価値を感じるか」価値観が強い影響を与えています。給与は低くても社会に貢献できる事業を展開している場合、「興味がなくとも高い給与がもらえる仕事が良い」価値観を持つ人材であれば、熱意や意欲は下がってしまいます。一方で「やりがいのある仕事であれば、給与は低くても良い」価値観を持つ人材であれば、自分の働きが社会貢献できていることが可視化されるで、熱意や意欲はより向上していきます。
スキルや経験が豊富な人材は、入社後に即戦力として活躍してくれることが期待できます。しかし、中長期的な活躍を期待するならば、自社の社風や組織風土とのマッチングの方が重要です。「熱意」や「ポテンシャル」とは、まさに社風や組織風土とのマッチングのことであり、会社と人材の相性によって相対的に評価が変わる不安定な要素です。
自社ならではの採用要件を作るためには「熱意」や「ポテンシャル」といった相対的な評価をいかに具体的に定義するかが重要になります。
採用要件の考え方とは?
採用要件を具体的に決めていく段階では、まず評価項目を「条件」「スキル」「人柄」の3つに分類することから始めるのが基本です。「条件」「スキル」「人柄」の順で具体性が高くなります。
「条件」とは、業務内容や勤務時間、勤務地や給与・待遇などを意味します。条件については「現在どんな仕事ができる人材が欲しいか」「欲しい人材の給与や待遇の相場はどのくらいか」を自社の状況と照らし合わせて考えれば、自然に決まります。
「スキル」とは、資格や免許などの証明が取れるものから、コミュニケーションスキルやマネジメントスキル、リーダーシップなどの抽象的な概念のスキルも含みます。スキルの多くは入社後の教育研修や業務経験などで習得する可能性もあるため「独り立ちまでの投資期間はどのくらいか?」という視点から、採用時点での優先順位を変動させることができます。
「人柄」とは、性格や価値観といった個人が持つ特徴のことであり、企業と人材との「採用マッチング」の鍵を握る要素になります。性格や価値観は先天性が強く、入社後の変化はあまり期待できないため、採用段階での見極めが非常に重要な項目になります。
以上をまとめると、短期的な人材不足を解消する目的であればスキルを重視する、中長期的な人材不足を解消する目的であれば人柄を重視するというのが、採用要件を定義する上での基本的な考え方です。
採用要件を明確にする方法とは?
前述の「条件」「スキル」「人柄」の分類とリストアップができたら、それぞれの項目に優先順位をつけて、どういう人材を求めているのかという採用要件をより明確化する必要があります。
採用要件を明確にするためには、各項目を「MUST」「WANT」「NEGATIVE」の3段階に分類します。それぞれ「必須項目」「希望項目」「不要項目」を意味します。
採用要件項目が抽象的であるほど「MUST」か「WANT」かの分類を慎重に行う必要があります。「条件」については基本的に「MUST」になることが多く、「スキル」は配属部署や育成計画次第で優先順位が変動し、「人柄」の分類はターゲットのペルソナ分析にもとづいて行うことになります。
人材の定着を目的にするのであれば、人柄のMUSTは「自社の社風や理念とミスマッチしないこと」が大切です。またWANTとして「活躍社員(ハイパフォーマー)と類似していること」を採用要件に設定すれば、性格や価値観だけでなく能力的な素質も自社にマッチした人材を獲得できる可能性が高まります。
採用要件でどんな人柄を重視するべきかは、企業によって大きく異なります。自社の社風や活躍社員を可視化・分析することで、採用要件をかなり明確化できますので、まずは自社の特徴を見つめ直すことが大切です。
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