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セクハラとは|2つの類型と企業の法的義務・対策

「コミュニケーションのつもりだった」「相手も笑っていた」——加害者にそうした自覚があっても、受け手の意に反する性的な言動で就業環境が害されれば、セクハラ(セクシュアルハラスメント)に該当し得ます。セクハラの判断基準は行為者の意図ではなく、受け手が「意に反する」と感じたかどうかにあるためです。

セクハラの防止は、企業の努力目標ではなく男女雇用機会均等法に基づく法的義務です。対象範囲は対価型・環境型の2類型にとどまらず、同性間やSOGIハラ、オンライン上の言動、さらに2026年には求職活動中のセクハラへと広がっていきます。人事・経営担当者にとって、最新の動向を踏まえた正しい理解と体制整備は避けて通れません。

本記事では、セクハラの定義と判断基準、2つの類型と見落とされがちな範囲、データで見る実態、企業に課された法的義務と講ずべき措置、そして防止のための組織づくりまでを体系的に解説します。読み終えたときには、誰もが安心して働ける職場をつくるための具体的な道筋が見えるはずです。

  • セクハラの定義と「意に反する」かどうかの判断基準
  • 対価型・環境型の類型と、同性間・SOGIハラ・オンラインなど広がる範囲
  • 2020年改正・2026年改正を含む企業の法的義務
  • 方針の明確化・相談体制・研修など講ずべき具体的な措置
離職防止のための施策は整っていますか?

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは:定義と判断基準

職場におけるセクハラの定義

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることを指します。ここでいう「性的な言動」には、性的な内容の発言だけでなく、身体への接触、性的な情報の流布、性的関係の強要なども含まれます。

セクハラは、被害者の心身に深刻なダメージを与えるだけでなく、優秀な人材の離職、職場全体の士気低下、訴訟や企業名公表による信用失墜など、経営に直結するリスクをはらんでいます。「個人間のトラブル」ではなく、企業が組織として防止すべき経営課題として捉える必要があります。

「意に反する」かどうかの判断基準

セクハラの成立で重要なのは、行為者の意図ではなく、受け手の「意に反する」言動であったかどうかです。判断にあたっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準としつつ、被害を受けた本人が明確に拒否や抗議をしなかったからといって、同意があったとは限らない点に注意が必要です。加害者に悪意がなく「コミュニケーションのつもり」であっても、相手が不快に感じ就業環境が害されれば、セクハラに該当し得ます。

セクハラの2つの類型と具体例

対価型セクハラ

対価型セクハラとは、労働者の対応(性的な言動を受け入れるか拒否するか)によって、解雇・降格・減給などの労働条件に不利益を与えるタイプです。地位や人事権を背景にした、力関係を利用した悪質な類型です。

具体例としては、性的な要求に応じないことを理由に解雇する、上司からの身体接触を拒んだ従業員を降格させる、セクハラに抗議した従業員を不利益な部署へ異動させる、などが挙げられます。

環境型セクハラ

環境型セクハラとは、性的な言動により就業環境が害され、労働者が能力を発揮できなくなるタイプです。直接的な不利益がなくても、働きづらい環境をつくり出す点が特徴です。

具体例としては、日常的に性的な話題を持ち出す、必要がないのに身体に触れる、性的な画像を掲示・共有する、特定の従業員の容姿について繰り返し言及する、などがあります。

類型特徴具体例
対価型性的言動への対応で労働条件に不利益要求拒否を理由とした解雇・降格・異動
環境型性的言動で就業環境が悪化身体接触、性的発言、わいせつ画像の掲示

見落とされがちなセクハラの範囲

同性間・性的指向・性自認に関するもの

セクハラは異性間だけの問題ではありません。男女雇用機会均等法に基づく防止措置義務は、同性間のセクハラも対象としています。また、性的指向(好きになる性)や性自認(自認する性)に関する侮辱的な言動、いわゆる「SOGIハラ」も、就業環境を害する行為として問題になります。

「男のくせに」「女らしくない」といった性別役割を押し付ける発言も、セクハラにつながり得る点に注意が必要です。

リモートワーク・SNS時代の新たなリスク

近年は、オンライン会議やチャット、SNSを通じたセクハラも増えています。業務時間外のプライベートなメッセージ送信、オンライン会議での容姿への言及、SNSでの過度な干渉なども、職場に関連するものであればセクハラと判断され得ます。

「職場」の範囲は物理的なオフィスに限らず、業務に関連する場すべてを含むと理解しておくことが重要です。

データで見るセクハラの実態

相談件数と経験率

厚生労働省が令和6年5月に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」によると、過去3年間にセクハラの相談があった企業の割合は39.5%でした。これはパワハラ(64.2%)に次ぐ水準です。また、セクハラに該当すると企業が判断した事例があった企業は80.9%にのぼります。一方、労働者側の調査では、過去3年間に勤務先でセクハラを経験した労働者の割合は6.3%でした。

調査項目割合
過去3年でセクハラ相談があった企業39.5%
セクハラ該当事例があった企業80.9%
セクハラを経験した労働者6.3%
(参考)パワハラ相談があった企業64.2%

「減少傾向」が示すもの

同調査では、セクハラの相談件数は他のハラスメントと比べて「減少している」と回答する企業が最も多いという特徴があります。背景には、「セクハラ」という言葉と概念が社会に浸透し、企業・個人ともに意識が高まってきたことが挙げられます。

ただし、これは問題が解消したことを意味しません。潜在化・表面化しにくくなっている可能性もあり、相談しやすい環境づくりと継続的な対策が引き続き求められます。

企業に課された法的義務

根拠となる法律と措置義務

セクハラ防止は、企業の努力目標ではなく法律上の義務です。男女雇用機会均等法第11条により、事業主は職場におけるセクハラを防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています。この義務は企業規模を問わず、すべての事業主に課されています。

2020年改正で強化されたポイント

2020年6月施行の改正により、セクハラ対策はさらに強化されました。主な追加点は次の通りです。

  • 国・事業主・労働者それぞれの責務の明確化
  • セクハラを相談した労働者への不利益取扱いの禁止
  • 自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合の、他事業主の調査等への協力対応

これにより、相談したこと自体を理由に不利益な扱いをすることが明確に禁じられ、被害者が声を上げやすい仕組みが法的に裏付けられました。

2026年に予定される改正

さらに、改正法の施行により、2026年10月には求職活動中(採用選考時など)のセクハラも事業主が雇用管理上講ずべき措置の対象に加わる予定です。対象範囲は今後も広がる方向にあり、企業は最新の法改正動向を継続的に確認する必要があります。

企業が講ずべき具体的な措置

事業主が雇用管理上講ずべき措置は、大きく次の柱で整理できます。

方針の明確化と周知・啓発

セクハラの内容と「セクハラを行ってはならない」という方針を就業規則等に明記し、その行為者は厳正に対処する旨とあわせて、全従業員に周知・啓発します。管理職への教育を含め、どのような言動が該当するかを具体的に示すことが重要です。

相談体制の整備

相談に応じ適切に対応するための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知します。窓口担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにし、実際に生じた場合だけでなく、その恐れがある段階や該当が微妙な段階でも広く相談に応じることが求められます。

迅速かつ適切な事後対応

相談があった場合は、速やかに事実関係を正確に確認し、被害者への配慮措置と行為者への措置を適正に行い、再発防止に向けた措置を講じます。

プライバシー保護と不利益取扱いの禁止

相談者・行為者等のプライバシーを保護し、その旨を周知します。あわせて、相談したこと・事実確認に協力したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定め、労働者に周知・啓発します。

措置の柱具体的な取り組み
方針の明確化就業規則への明記・厳正対処方針の周知
相談体制相談窓口の設置・担当者の指定・周知
事後対応事実確認・被害者配慮・行為者措置・再発防止
プライバシー保護相談者情報の管理・不利益取扱いの禁止
教育・研修管理職・全社員向けハラスメント研修

セクハラを防ぐ組織づくり

研修による「共通認識」の形成

セクハラ防止で最も効果的なのは、全従業員が「何がセクハラにあたるのか」という共通認識を持つことです。定期的な研修を通じて、望ましい言動と避けるべき言動を具体例で共有します。特に管理職は、自らの言動が影響力を持つことと、部下から相談を受けたときの初期対応を理解しておく必要があります。

グレーゾーンを放置しない

「これはセクハラになるのか」と迷うグレーゾーンの言動を放置すると、やがて深刻な問題に発展します。判断に迷う事例こそオープンに議論し、「相手が不快に感じたら見直す」という基本姿勢を組織文化として根づかせることが、根本的な予防につながります。心理的に相談しやすい風土は、セクハラの早期発見・早期対応の土台になります。

よくある質問(FAQ)

相手が笑って受け流していたらセクハラにはなりませんか?

なり得ます。セクハラの判断は行為者の意図ではなく、受け手の意に反する言動だったかどうかが基準です。被害者がその場で明確に拒否や抗議をしなかったとしても、立場の弱さや気まずさから言い出せなかっただけの場合が多く、同意があったとは限りません。「相手が嫌がっていないように見えた」という自己判断は危険です。

同性同士でもセクハラになりますか?

なります。男女雇用機会均等法に基づく防止措置義務は、異性間だけでなく同性間のセクハラも対象としています。また、性的指向や性自認に関する侮辱的な言動(SOGIハラ)も、就業環境を害する行為として問題になります。性別や関係性にかかわらず、性的な言動には配慮が必要です。

中小企業でもセクハラ対策は義務ですか?

義務です。セクハラの防止措置義務は企業規模にかかわらず、すべての事業主に課されています。相談窓口の設置や方針の周知、事後対応の体制整備などは、規模の大小を問わず求められます。専任部署を置けない場合でも、担当者を定めて周知するなど、実行可能な形で体制を整えることが重要です。

まとめ

セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、職場で意に反する性的な言動により就業環境を害する行為であり、その防止は男女雇用機会均等法に基づく企業の法的義務です。対価型・環境型という2つの類型に加え、同性間やSOGIハラ、オンライン上の言動まで、対象範囲は広がっています。

実態調査では相談件数が減少傾向にある一方で、依然として多くの企業で該当事例が発生しています。2020年の改正で相談者保護が強化され、2026年には求職活動中のセクハラも対象に加わる予定であり、企業に求められる水準は年々高まっています。方針の明確化、相談窓口の整備、迅速な事後対応、プライバシー保護、そして全社的な研修を通じて、誰もが安心して働ける職場をつくることが、人材定着と企業価値向上の両面で不可欠です。

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