応募者の志向性とは|見極めて採用ミスマッチを防ぐ方法
どれほどスキルが高くても、志向性が自社と合わなければ早期離職やパフォーマンスの停滞につながります。採用のゴールは人材を入社させることではなく、入社後に定着し活躍してもらう「戦力化」にあるからです。だからこそ、応募者が「何を大切にし、どこへ向かいたいか」という志向性を見極めることが、ミスマッチを防ぐ鍵になります。
とりわけ中途採用では、即戦力を求めるあまりスキルや経験ばかりを重視し、社風へのフィットやキャリア志向の確認を欠いたまま採用に至るケースが少なくありません。スキルの一致だけでは、定着と活躍は保証されないのです。志向性という「見えにくい相性」にこそ、丁寧に目を向ける必要があります。
本記事では、応募者の志向性の定義と2つの側面、キャリアアンカーによる8分類、見極めないと起きるミスマッチ、面接や適性検査による把握方法、そして採用後の活用までを体系的に解説します。読み終えたときには、長く活躍する人材と出会うための具体的な道筋が見えるはずです。
- 志向性の定義と、スキル・経験との違い
- パーソナル/キャリアという2つの志向性と、キャリアアンカー8分類
- 構造化面接・適性検査を組み合わせた見極めの方法
- 採用後の配属・育成・定着にも活かす人材マネジメント
目次
応募者の志向性とは:定義と基本理解
志向性の定義
志向性(しこうせい)とは、個人が持っている(向かっている)意識のことで、一人ひとりが大切にしているスタンスや考え方などの価値観を総称した概念です。「どんな働き方をしたいか」「仕事で何を重視するか」「どんなキャリアを歩みたいか」といった、その人の内面にある方向性を指します。
スキルや経験が「何ができるか」を表すのに対し、志向性は「何を大切にし、どこへ向かいたいか」を表します。応募者の志向性は、会社と個人をマッチングするうえで極めて重要なポイントであり、採用だけでなく、入社後の配属・評価・研修や育成にも活用できる、幅広く有効な概念です。
なぜ採用で志向性が重要なのか
採用活動のゴールは、人材を入社させることではなく、入社後に定着し活躍してもらうこと——つまり戦力化にあります。どれほどスキルが高くても、志向性が自社と合わなければ、早期離職やパフォーマンスの停滞につながります。
だからこそ、応募者の志向性を正しく見極め、自社との相性を判断することが、ミスマッチを防ぎ、長期的な活躍を実現する鍵となります。志向性の把握は、採用の質を根本から高める取り組みです。
志向性の2つの側面
採用選考で見るべき志向性には、大きく2つの種類があります。
| 志向性の種類 | 内容 | 判断できること |
| パーソナルの志向性 | 考え方・価値観・働き方 | 会社のカルチャーや社風に合うか |
| キャリアの志向性 | 何を目指してキャリアを築くか | 提供できる役割・環境と合うか |
パーソナルの志向性
パーソナルの志向性は、その人の考え方や価値観、働き方をあらわすものです。これを把握することで、自社のカルチャーや組織風土(社風)に合うかどうか、いわゆる「カルチャーフィット」を判断できます。たとえば「チームで協力して進めたい」のか「個人で裁量を持って進めたい」のかは、社風との相性を大きく左右します。
キャリアの志向性
キャリアの志向性は、その人がキャリアを通じて何を実現したいかを示すものです。経済的報酬の向上を主目的とする「報酬志向」、リーダーシップの発揮を目指す「マネジメント志向」など、異なるタイプがあります。自社が提供できる役割やキャリアパスと、応募者の志向が合致しているかを見極めることが重要です。
キャリアアンカー:8つの志向タイプ
キャリアの志向性を体系的に理解するうえで役立つのが、組織心理学者エドガー・H・シャインが提唱した「キャリアアンカー」の概念です。キャリアアンカーとは「自分が仕事を選ぶとき、何を大切にしているか」を表す軸で、「コンピタンス(能力)」「動機」「価値観」の3要素から成り、8つのタイプに分類されます。
| タイプ | 重視すること |
| 専門・職能別コンピタンス | 専門的なスキル・知識を活かす |
| 全般管理コンピタンス | 出世・経営やマネジメントを目指す |
| 自律・独立 | 自分のやり方・ペースを守る |
| 保障・安定 | 雇用や生活の安定を重視 |
| 起業家的創造性 | 新しいものを生み出す・起業する |
| 奉仕・社会貢献 | 社会や他者への貢献 |
| 純粋な挑戦 | 困難な課題への挑戦そのもの |
| 生活様式(ワークライフバランス) | 生活全体の調和を保つ |
キャリアアンカーは30歳前後までに形成され、一度形成されると大きく変化しないとされています。シャインの「キャリア指向質問票」(40問)などを用いれば、本人の志向を客観的に把握できます。応募者がどのアンカーを持つかを理解することで、自社で満たせる志向かどうかを判断しやすくなります。
志向性を見極めないと起きるミスマッチ
応募者の志向性を軽視すると、採用ミスマッチのリスクが高まります。特に中途採用では、即戦力を求めるあまり、スキルや経験ばかりを重視してしまう傾向があります。その結果、企業文化や社風へのフィット感、個人のキャリア志向を十分に確認しないまま採用に至り、ミスマッチを招くケースが少なくありません。
たとえば、安定志向の強い人を変化の激しいベンチャー環境に迎えれば、本人も企業も苦しむことになります。逆に、挑戦志向の人を安定重視の環境に配属すれば、物足りなさから早期離職につながりかねません。スキルの一致だけでは、定着と活躍は保証されません。志向性という「見えにくい相性」にこそ、丁寧に目を向ける必要があります。
面接で志向性を見極める方法
構造化面接で「事実」を引き出す
志向性を正確に把握するには、構造化面接が有効です。「過去にどのように行動したか」を具体的に引き出す質問を設計し、行動の事実を確認することで、印象や自己申告に頼った表面的な評価を避けられます。すべての応募者に同じ質問を同じ手順で行うことで、比較可能で公平な判断ができます。
志向性を引き出す質問例
転職理由やキャリア観の本音を引き出すには、次のような質問が効果的です。
- 「どんな点で、前職では限界を感じたのですか?」
- 「理想のキャリアにおいて、どんな役割を果たしたいですか?」
- 「当社でそれを実現するために、どんなことを期待していますか?」
これらの質問によって、応募者の志向性・課題意識・期待値を具体的に把握できます。回答の内容が、自社で提供できる環境と一致しているかを見極めましょう。
配属先メンバーとの面談を設ける
面接官だけでなく、配属先のメンバーやキーパーソンとの面談機会を設けることも有効です。採用担当者とは異なる視点から評価でき、カルチャーフィットを多面的に判断できます。現場感覚での相性確認は、入社後のミスマッチ防止に直結します。
適性検査などツールの活用
面接での見極めは重要ですが、面接官の主観が入りやすいという課題もあります。そこで有効なのが、適性検査などの客観的なツールの併用です。適性検査を用いれば、応募者の価値観や志向性、性格特性をデータとして可視化でき、面接の印象と照らし合わせることで、より精度の高い判断が可能になります。
特に、自社の社風や活躍している社員の傾向と、応募者の志向性を照合することで、「自社に合うかどうか」を根拠を持って評価できます。面接という定性的な情報と、適性検査という定量的な情報を組み合わせることが、志向性マッチングの精度を高める最善のアプローチです。
志向性を採用後にも活かす
応募者の志向性の把握は、採用の合否判断だけで終わらせるにはもったいない情報です。入社後の配属・育成・定着のあらゆる場面で活用できます。たとえば、マネジメント志向の人には早期にリーダー経験の機会を、専門志向の人には専門性を深める役割を用意するなど、本人の志向に沿った配置が可能になります。
志向性に合った環境を提供することで、社員は納得感を持って働き、モチベーションと定着率が高まります。採用時に把握した志向性データを、配属や育成、キャリア面談に引き継いでいくことで、一貫した人材マネジメントが実現します。志向性の理解は、採用から活躍までを貫く、長期的な人材戦略の土台となるのです。
よくある質問(FAQ)
スキルと志向性、どちらを優先すべきですか?
どちらか一方ではなく、両方を見ることが重要です。スキルは「何ができるか」、志向性は「何を大切にし、どこへ向かいたいか」を示します。
スキルが高くても志向性が合わなければ、定着や活躍にはつながりません。採用のゴールは入社ではなく戦力化であるため、スキルの確認と並行して、志向性が自社の環境・文化と合致するかを見極める必要があります。
応募者の志向性はどうやって客観的に把握できますか?
構造化面接による質問と、適性検査などのツールを組み合わせるのが効果的です。面接では「過去の行動」や「理想のキャリア」を具体的に引き出し、適性検査では価値観や性格特性をデータで可視化します。
定性・定量の両面から確認することで、面接官の主観に偏らない精度の高い判断ができます。
キャリアアンカーは採用でどう役立ちますか?
キャリアアンカーは、応募者が仕事で何を大切にするかを8つのタイプで整理する枠組みです。応募者がどのアンカーを持つかを理解することで、自社が提供できる役割や環境がその志向を満たせるかを判断できます。
たとえば安定志向か挑戦志向かによって、適した配属や育成方針も変わります。採用時だけでなく、入社後の配置・育成にも活用できます。
まとめ
応募者の志向性とは、個人が大切にする価値観や仕事観の総称であり、採用のマッチング精度を左右する重要な要素です。志向性には、社風との相性を示す「パーソナルの志向性」と、キャリアの方向性を示す「キャリアの志向性」があり、キャリアアンカーの8分類などを用いて体系的に理解できます。
スキルや経験だけを重視した採用はミスマッチを招きます。採用のゴールが定着と活躍である以上、構造化面接や適性検査を組み合わせて志向性を丁寧に見極めることが欠かせません。そして、把握した志向性は採用時だけでなく、配属・育成・定着にも活用することで、一貫した人材マネジメントが実現します。応募者の志向性に正面から向き合うことが、長く活躍する人材との出会いを生み、組織の競争力を高める確かな一歩となるでしょう。
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